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第43話-窮兎、鼠を噛む
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「カリス!」
ベッドの上に押し倒された私の方へ、リンがもぞもぞと這い寄ってくる。
「リン……ごめんね」
「カリス……」
「手を……」
私がリンの目をじっと見つめ続けると、リンが察してくれたのかゴロンと反対向いて手をこちらへ差し出してきた。
私もリンと背中合わせになり、リンの手をぎゅっと握る。
「ふふふ、いいじゃないか、この友情ごっこがズタボロになるというのも」
「エイブ、今日は楽しめそうだな」
「まったくです」
二人がズボンに手をかけ、二人揃って私たちの方へ近づいてくる。
リンの手がふるふると震え、尻尾もピクピク動いている。
「リン……ごめんね?」
「いいよ、カリスのこと信じてるから」
私は同じセリフを改めて言いながら、リンと私のロープを押し付け合う。
(……私もリンのこと信じてる)
縛られたままの足もリンの足に絡めて、ロープ同士をくっつける。
そして息を大きく吸い込んで、今までにないぐらい全力でリンの手首に向けて魔力を通した。
「くぅぅっ――ぐあぅぅぅぅぅっ――!!」
「あぁぁっっ!!」
魔力を込めた瞬間、リンが大きな声を上げて体をのけぞらせる。
なるべくリンの身体に流れないようにコントロールしたが、やはり相当な痛みがリンの身体を襲ってしまったようだった。
しかし私は身体中から魔力を絞り出すように放射し続けると、固定されていた両手がふっと自由になった感覚があった。
「なっ――っ!?」
ホド男爵とリック大臣が突然うめき声を上げた私達に驚きの声を上げた。
「【火球】!」
「ぐぐっっぅ!!」
私はそのまま間髪入れず、足に【火球】を出現させ、リンの足とまとめて炎に包み足を拘束しているロープを焼き切った。
「はぁはぁ――【治癒】!」
自分の足のことは気にせず、リンの足に回復魔法を使い回復させる。
「なぁっ!?」
ホド男爵がギリギリ驚愕の声を上げナイフを構えるが、隣りにいたリック大臣は既にドカッ!という音と共に壁に蹴り飛ばされていた。
「ふっ!!」
「ぐあぁぁっ!!」
私の目の前に居たホド男爵がリンの回し蹴りをくらい、扉の方へ吹き飛ばされていく。
「あぁぁっっ!」
だが吹き飛んでいくホド男爵と入れ替わるように飛来した黒塗りのナイフがリンの肩に突き刺さる。
「リン!」
「――っ!?」
「ぐぅっ」
私の叫び声でフレンダが目を覚まし、動けなくなっている自分の状態に気づく。
「フレンダ伏せてて――あうっ!」
私がフレンダに視線を向けて注意をそらした瞬間、ミルドの革靴が私の横腹にめり込んだ。
「カリス! ――ふっ!」
リンがミルド目掛けて飛びかかるが、ミルドは横に飛んでリンの蹴りをあっさりと躱す。
そしてお返しとばかりにリンの横腹に掌打を入れ、リンが床へと吹き飛ばされた。
「はぁ……はぁ……魔力が……」
リンに加勢しようにも手首の魔封を外すのに流した魔力でほとんど私の体内に魔力が残っていなかった。
「頭……痛い……うぇぇっっ」
急激な魔力減少によって頭痛と吐き気が襲ってくる。
虚ろな目でリンの方を見ると、部屋中を飛び回りながらミルドの攻撃をなんとか躱し続けていた。
「はぁ……はぁ……だめ、しっかり……」
「こっちに!」
「……フレンダ!?」
フレンダに突然声をかけられ、まだ縛られたままの彼女の方へ這っていく。
「私にキスしなさい!」
「え…? へ? 」
「いいから!はやく!」
「えっ、ちょっと」
フレンダが上半身を何とか起こし、私の方へ顔を近づけてくる。
「早く!」
流石にこんなときに冗談は言わないであろうフレンダの言うことに意味がわからないまま、私もフレンダに恐る恐る顔を近づける。
(えっなにこれ……恥ずか……)
はっきり言ってキスした経験は無い。
まさか初めてのキスが女の子だなんて思わなかった。
でも、あんな禿オヤジよりは天地の差だ。
うん、だいじょうぶ、フレンダは友達。かわいいし。
頭の中で意味のわからない自己肯定がぐるぐるとする。
「――っ、むぐっ」
ぎりぎりまで寄せていた唇に、フレンダが唇を押し当ててきた。
突然のことに反応できなくなっていると、フレンダの柔らかなプルッとした唇の間から私の口内へ大量の魔力が流れ込んできた。
「ぷはっ……いまの」
「【恩寵】っていう魔力譲渡の魔法よ」
「――!? あっ、ありがとうフレンダ!」
私はお礼を言って立ち上がろうとするが、今度は急激に回復した魔力のせいで魔力酔いのようになり足元がおぼつかなくなる。
(……でもダイジョブ)
「【拘束】!【拘束】!【治癒】!」
床に転がって気絶しているリック大臣とホド男爵を拘束魔法で縛り、リンに回復魔法を掛けた。
「ちっ」
その時グレイスが標的を私へと変えたのか、ナイフを片手に突っ込んでくるのが目に入る。
「――【氷壁】!【氷槍】!」
突如眼前に現れた氷壁で足を止めたミルドは、氷壁から突き出た【氷槍】で肩を貫かれる。
「魔法使いがー!【超加速】!」
ミルドの姿が掻き消えると、私の背中に衝撃がきてベッドの反対側のリンの近くまで吹き飛ばされた。
「カリス!」
リンが駆け寄って来ようとするのを片手を上げて静止する。
「大丈夫……【超加速】!」
私もミルドと同じように【超加速】を使う。
しかしその場からは動かない。
運動神経が微妙な私では【超加速】を使ってもまともに行動できない。そもそも補助魔法が得意ではない。
けれど、この魔法は視力も――目で見たモノに対する処理速度も劇的に向上するのだ。
「リン、フレンダのところへ!」
私は、床に転がされたままのフレンダと近くに移動したリンに目掛けて結界魔法を発動する。
「【魔盾】っ!!」
(これで二人は大丈夫――)
だが依然、部屋の中を縦横無尽に飛び回るミルド。
背後や側面からの攻撃に私はギリギリで反応して身体をそらすが、接近されるたびにナイフによる切り傷が増えてゆく。
「(はぁはぁ)――【雷槍】!」
私はミルドを【雷槍】で狙い続けるが一向に当たらない。
その度に部屋の至る所が焼け焦げ、破壊されていく。
「!? ――あぐっ!! ぐぅぅっ……【神雷嵐鎖】!」
リンとフレンダに私の意識が向いた隙を付き、地面を這うように接近してきたミルドの短剣が私の脇腹に突き刺さった。
私は歯を食いしばり脇腹に刺さった短剣を無視して、広範囲の雷魔法【神雷嵐鎖】を行使する。
「ぐあっ……っ」
部屋中に小さな落雷が連続して発生し、ミルドの【超加速】が効力を失った。
「ヒ……【治癒】……(だめだ、範囲を広げると大してダメージが……)」
貫通力の高い【雷槍】では当たらなくて、範囲を広げるとギリギリ当たるがダメージが通らない。
(なら――範囲攻撃でもっとダメージが出る魔法を……!)
無いなら作ればいい。
そう考えるが、ミルドはその時間を与えてくれそうになかった。
ベッドの上に押し倒された私の方へ、リンがもぞもぞと這い寄ってくる。
「リン……ごめんね」
「カリス……」
「手を……」
私がリンの目をじっと見つめ続けると、リンが察してくれたのかゴロンと反対向いて手をこちらへ差し出してきた。
私もリンと背中合わせになり、リンの手をぎゅっと握る。
「ふふふ、いいじゃないか、この友情ごっこがズタボロになるというのも」
「エイブ、今日は楽しめそうだな」
「まったくです」
二人がズボンに手をかけ、二人揃って私たちの方へ近づいてくる。
リンの手がふるふると震え、尻尾もピクピク動いている。
「リン……ごめんね?」
「いいよ、カリスのこと信じてるから」
私は同じセリフを改めて言いながら、リンと私のロープを押し付け合う。
(……私もリンのこと信じてる)
縛られたままの足もリンの足に絡めて、ロープ同士をくっつける。
そして息を大きく吸い込んで、今までにないぐらい全力でリンの手首に向けて魔力を通した。
「くぅぅっ――ぐあぅぅぅぅぅっ――!!」
「あぁぁっっ!!」
魔力を込めた瞬間、リンが大きな声を上げて体をのけぞらせる。
なるべくリンの身体に流れないようにコントロールしたが、やはり相当な痛みがリンの身体を襲ってしまったようだった。
しかし私は身体中から魔力を絞り出すように放射し続けると、固定されていた両手がふっと自由になった感覚があった。
「なっ――っ!?」
ホド男爵とリック大臣が突然うめき声を上げた私達に驚きの声を上げた。
「【火球】!」
「ぐぐっっぅ!!」
私はそのまま間髪入れず、足に【火球】を出現させ、リンの足とまとめて炎に包み足を拘束しているロープを焼き切った。
「はぁはぁ――【治癒】!」
自分の足のことは気にせず、リンの足に回復魔法を使い回復させる。
「なぁっ!?」
ホド男爵がギリギリ驚愕の声を上げナイフを構えるが、隣りにいたリック大臣は既にドカッ!という音と共に壁に蹴り飛ばされていた。
「ふっ!!」
「ぐあぁぁっ!!」
私の目の前に居たホド男爵がリンの回し蹴りをくらい、扉の方へ吹き飛ばされていく。
「あぁぁっっ!」
だが吹き飛んでいくホド男爵と入れ替わるように飛来した黒塗りのナイフがリンの肩に突き刺さる。
「リン!」
「――っ!?」
「ぐぅっ」
私の叫び声でフレンダが目を覚まし、動けなくなっている自分の状態に気づく。
「フレンダ伏せてて――あうっ!」
私がフレンダに視線を向けて注意をそらした瞬間、ミルドの革靴が私の横腹にめり込んだ。
「カリス! ――ふっ!」
リンがミルド目掛けて飛びかかるが、ミルドは横に飛んでリンの蹴りをあっさりと躱す。
そしてお返しとばかりにリンの横腹に掌打を入れ、リンが床へと吹き飛ばされた。
「はぁ……はぁ……魔力が……」
リンに加勢しようにも手首の魔封を外すのに流した魔力でほとんど私の体内に魔力が残っていなかった。
「頭……痛い……うぇぇっっ」
急激な魔力減少によって頭痛と吐き気が襲ってくる。
虚ろな目でリンの方を見ると、部屋中を飛び回りながらミルドの攻撃をなんとか躱し続けていた。
「はぁ……はぁ……だめ、しっかり……」
「こっちに!」
「……フレンダ!?」
フレンダに突然声をかけられ、まだ縛られたままの彼女の方へ這っていく。
「私にキスしなさい!」
「え…? へ? 」
「いいから!はやく!」
「えっ、ちょっと」
フレンダが上半身を何とか起こし、私の方へ顔を近づけてくる。
「早く!」
流石にこんなときに冗談は言わないであろうフレンダの言うことに意味がわからないまま、私もフレンダに恐る恐る顔を近づける。
(えっなにこれ……恥ずか……)
はっきり言ってキスした経験は無い。
まさか初めてのキスが女の子だなんて思わなかった。
でも、あんな禿オヤジよりは天地の差だ。
うん、だいじょうぶ、フレンダは友達。かわいいし。
頭の中で意味のわからない自己肯定がぐるぐるとする。
「――っ、むぐっ」
ぎりぎりまで寄せていた唇に、フレンダが唇を押し当ててきた。
突然のことに反応できなくなっていると、フレンダの柔らかなプルッとした唇の間から私の口内へ大量の魔力が流れ込んできた。
「ぷはっ……いまの」
「【恩寵】っていう魔力譲渡の魔法よ」
「――!? あっ、ありがとうフレンダ!」
私はお礼を言って立ち上がろうとするが、今度は急激に回復した魔力のせいで魔力酔いのようになり足元がおぼつかなくなる。
(……でもダイジョブ)
「【拘束】!【拘束】!【治癒】!」
床に転がって気絶しているリック大臣とホド男爵を拘束魔法で縛り、リンに回復魔法を掛けた。
「ちっ」
その時グレイスが標的を私へと変えたのか、ナイフを片手に突っ込んでくるのが目に入る。
「――【氷壁】!【氷槍】!」
突如眼前に現れた氷壁で足を止めたミルドは、氷壁から突き出た【氷槍】で肩を貫かれる。
「魔法使いがー!【超加速】!」
ミルドの姿が掻き消えると、私の背中に衝撃がきてベッドの反対側のリンの近くまで吹き飛ばされた。
「カリス!」
リンが駆け寄って来ようとするのを片手を上げて静止する。
「大丈夫……【超加速】!」
私もミルドと同じように【超加速】を使う。
しかしその場からは動かない。
運動神経が微妙な私では【超加速】を使ってもまともに行動できない。そもそも補助魔法が得意ではない。
けれど、この魔法は視力も――目で見たモノに対する処理速度も劇的に向上するのだ。
「リン、フレンダのところへ!」
私は、床に転がされたままのフレンダと近くに移動したリンに目掛けて結界魔法を発動する。
「【魔盾】っ!!」
(これで二人は大丈夫――)
だが依然、部屋の中を縦横無尽に飛び回るミルド。
背後や側面からの攻撃に私はギリギリで反応して身体をそらすが、接近されるたびにナイフによる切り傷が増えてゆく。
「(はぁはぁ)――【雷槍】!」
私はミルドを【雷槍】で狙い続けるが一向に当たらない。
その度に部屋の至る所が焼け焦げ、破壊されていく。
「!? ――あぐっ!! ぐぅぅっ……【神雷嵐鎖】!」
リンとフレンダに私の意識が向いた隙を付き、地面を這うように接近してきたミルドの短剣が私の脇腹に突き刺さった。
私は歯を食いしばり脇腹に刺さった短剣を無視して、広範囲の雷魔法【神雷嵐鎖】を行使する。
「ぐあっ……っ」
部屋中に小さな落雷が連続して発生し、ミルドの【超加速】が効力を失った。
「ヒ……【治癒】……(だめだ、範囲を広げると大してダメージが……)」
貫通力の高い【雷槍】では当たらなくて、範囲を広げるとギリギリ当たるがダメージが通らない。
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