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本編
幼馴染み
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水芭蕉揺れる畦道。僕の前を歩く君は、まるでスキップしているかのように軽やかに歩いていく。
「ねぇ、待ってよリオ!早いよ!」
僕がそう言うと、君はくるりと振り返り、にっこりと笑ってこう言ったんだ。
「早く来ないと置いてっちゃうよ?」
その言葉を聞いた僕は君の元へ駆け寄っていく。
僕より背の高い彼女を見上げるようにして、「もう」と口を尖らせると、君はまた楽しそうに笑う。学校の庭に咲いているひまわりのように明るい笑顔だ。そんな彼女の笑顔を見る度に胸の奥がくすぐられるような感覚に襲われる。
「じゃあ、早く帰ろ!」
君のその声を聞くだけで、僕の心は弾んでしまう。この気持ちが何なのか、この時の僕はまだ気づいていなかったんだ。
だけどね、リオ……リオデレラ。今ならわかる、あれはきっと―――。
「コウ、どうしたの?」
呼びかけられて、意識が現実へと引き戻される。目の前には不思議そうな表情を浮かべている幼馴染みの顔があった。
「え……?あっ、ごめん……」
「具合悪いの?」
心配そうに見つめてくる瞳。
「違うんだ……。昔のこと思い出してただけだよ」
リオは「昔?」と言って首を傾げたあと、「ああ、あの時のことかぁ」と言って微笑んだ。
幼馴染みである彼女は、昔からずっと一緒にいる大切な存在だ。
彼女にとっては、違うかもしれないけれど。
「そっか。でも、良かった……。体調が悪いのかと思ってびっくりしちゃったじゃん」
彼女は安心したようにほっと息をつくと、アイスコーヒーを一口飲んだ。そして、窓の外を見て少し寂しげな笑みを浮かべる。
彼女の視線の先には、青い髪の少年の姿があった。彼は仲の良い友人達と一緒に談笑しながら歩いている。
その姿を見た瞬間、胸に小さな痛みを感じた気がした。僕が大好きなリオは、彼のことばかり見ているのだ。
彼女が僕に向けるのは友達としての信頼だけだということはわかっている。それでも、時々こうして胸が痛くなる時がある。
「リオってさ、やっぱりあいつのこと好きだったりするの?」
ふと思ったことをそのまま口にすると、彼女は飲んでいたアイスコーヒーを吹き出しそうになった。
「ちょっ!?いきなり何言い出すの!?」
わかりやすい幼馴染みの反応に思わず苦笑いしてしまう。
「だってさー、リオっていつもあいつの話ばっかりするからさー。もしかして好きになったのかなって思って」
そう言って意地悪く笑うと、彼女は顔を真っ赤にして小さな声で「内緒だよ」と言った。
わかりきっていたことなのに、傷つくなんて馬鹿みたいだ。自分で聞いておきながら、答えを聞きたくなくて話題を変えようとする。だけど、それよりも早く彼女が話し始めた。
「最初は本当にただの憧れみたいな感じで……。でも、いつの間にか本気で好きになってたっていうか……。あいつは全然私のことなんか眼中にないけどね」
その言葉を聞いて、胸の中に黒い感情が生まれるのを感じる。
窓から差し込む夏の日射しを浴びてキラキラと輝く彼女は、確かに恋する乙女といった様子だが、僕にはそれがとても眩しく見えた。それと同時に、自分の中にある醜い嫉妬心にも気づく。
(嫌だ……。こんなこと考える自分がすごく嫌いになる)
僕は自分の中の汚い部分を隠すために、無理矢理笑顔を作った。
「そっか。それならさ、いつかちゃんと告白しないとね」
その言葉を聞いた彼女は、一瞬きょとんとした表情を浮かべたが、すぐに嬉しそうに笑って言った。
「うん!そうだね!」
彼女の無邪気な返事を聞く度に心が締めつけられるような感覚に襲われる。
きっとこれから先もずっと、この気持ちを打ち明けることは無いだろう。
それでもいいんだ。
僕はいつまでも君の隣にいたい。そのために、僕は君の幼馴染みで、理解者で、親友で在り続ける。
「ねぇ、待ってよリオ!早いよ!」
僕がそう言うと、君はくるりと振り返り、にっこりと笑ってこう言ったんだ。
「早く来ないと置いてっちゃうよ?」
その言葉を聞いた僕は君の元へ駆け寄っていく。
僕より背の高い彼女を見上げるようにして、「もう」と口を尖らせると、君はまた楽しそうに笑う。学校の庭に咲いているひまわりのように明るい笑顔だ。そんな彼女の笑顔を見る度に胸の奥がくすぐられるような感覚に襲われる。
「じゃあ、早く帰ろ!」
君のその声を聞くだけで、僕の心は弾んでしまう。この気持ちが何なのか、この時の僕はまだ気づいていなかったんだ。
だけどね、リオ……リオデレラ。今ならわかる、あれはきっと―――。
「コウ、どうしたの?」
呼びかけられて、意識が現実へと引き戻される。目の前には不思議そうな表情を浮かべている幼馴染みの顔があった。
「え……?あっ、ごめん……」
「具合悪いの?」
心配そうに見つめてくる瞳。
「違うんだ……。昔のこと思い出してただけだよ」
リオは「昔?」と言って首を傾げたあと、「ああ、あの時のことかぁ」と言って微笑んだ。
幼馴染みである彼女は、昔からずっと一緒にいる大切な存在だ。
彼女にとっては、違うかもしれないけれど。
「そっか。でも、良かった……。体調が悪いのかと思ってびっくりしちゃったじゃん」
彼女は安心したようにほっと息をつくと、アイスコーヒーを一口飲んだ。そして、窓の外を見て少し寂しげな笑みを浮かべる。
彼女の視線の先には、青い髪の少年の姿があった。彼は仲の良い友人達と一緒に談笑しながら歩いている。
その姿を見た瞬間、胸に小さな痛みを感じた気がした。僕が大好きなリオは、彼のことばかり見ているのだ。
彼女が僕に向けるのは友達としての信頼だけだということはわかっている。それでも、時々こうして胸が痛くなる時がある。
「リオってさ、やっぱりあいつのこと好きだったりするの?」
ふと思ったことをそのまま口にすると、彼女は飲んでいたアイスコーヒーを吹き出しそうになった。
「ちょっ!?いきなり何言い出すの!?」
わかりやすい幼馴染みの反応に思わず苦笑いしてしまう。
「だってさー、リオっていつもあいつの話ばっかりするからさー。もしかして好きになったのかなって思って」
そう言って意地悪く笑うと、彼女は顔を真っ赤にして小さな声で「内緒だよ」と言った。
わかりきっていたことなのに、傷つくなんて馬鹿みたいだ。自分で聞いておきながら、答えを聞きたくなくて話題を変えようとする。だけど、それよりも早く彼女が話し始めた。
「最初は本当にただの憧れみたいな感じで……。でも、いつの間にか本気で好きになってたっていうか……。あいつは全然私のことなんか眼中にないけどね」
その言葉を聞いて、胸の中に黒い感情が生まれるのを感じる。
窓から差し込む夏の日射しを浴びてキラキラと輝く彼女は、確かに恋する乙女といった様子だが、僕にはそれがとても眩しく見えた。それと同時に、自分の中にある醜い嫉妬心にも気づく。
(嫌だ……。こんなこと考える自分がすごく嫌いになる)
僕は自分の中の汚い部分を隠すために、無理矢理笑顔を作った。
「そっか。それならさ、いつかちゃんと告白しないとね」
その言葉を聞いた彼女は、一瞬きょとんとした表情を浮かべたが、すぐに嬉しそうに笑って言った。
「うん!そうだね!」
彼女の無邪気な返事を聞く度に心が締めつけられるような感覚に襲われる。
きっとこれから先もずっと、この気持ちを打ち明けることは無いだろう。
それでもいいんだ。
僕はいつまでも君の隣にいたい。そのために、僕は君の幼馴染みで、理解者で、親友で在り続ける。
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