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第二章 怪しく暗躍する影と二人の絆
17.いきなりのピンチ!?
部屋からコソコソ出てきた私を、使用人さん達は温かい眼差しで迎えてくれた。
全員私の身体を気遣ってくれて、完全に昨晩のことが皆に知れ渡っていると悟った私は、感謝をしつつも居た堪れない気持ちになりながら、食堂で遅い朝食に舌鼓を打つ。
食べ終わり、わざわざ料理を温め直してくれた心優しい料理長にお礼を言うと、自分の部屋へと向かった。
そして普段着に着替え、自分の机の上に置いてあった書類の山を手に取る。
これは、私にも出来る旦那様の仕事を処理したものだ。昨日終わった分を渡しそびれていたので、彼に持って行かなくては。
今までは全てヴォルターさんに渡していたんだけど、旦那様に「今度からは、俺が家にいる時は直接渡して欲しい」と言われたのだ。
「とっても気まずいけど、公私はちゃんと分けなきゃね。仕事をする上で大事なことよ」
私はふぅと息をつき両手で頬を軽く叩くと、書類を持って執務室へと足を進める。
使用人さんから、旦那様は今日は一日中屋敷にいる予定だと聞いたのだ。
昨日の今日で恥ずかしくて彼の顔が見れないし、書類を渡して早々に退散しようと決めた私は、執務室の扉をノックする。
「入っていいぞ」
旦那様の声が聞こえ、「失礼します……」と小声で言いながら扉を開ける。
彼は執務机に向かってペンを走らせていた。
手を止めずこちらも見ない。真剣な表情だし、邪魔しちゃ悪いな。机の上に置かせて貰って早くここから出よう。
内心ホッとしたことは内緒だ。
「おはようございます、伯――旦那様。処理が終わった書類を持って来たので、机の上に置かせて頂きますね」
気を散らせないように小さな声でそう言うと、私は執務机に近付き、空いている所に書類をそっと置いた。
「ありがとう」
と、旦那様が顔を上げずに言ったので、私は彼の頭上に微笑みを向ける。
「お仕事頑張って下さいね、旦那様」
そして踵を返して歩き出そうとすると、私の手首がパシッと掴まれ、そのまま後ろにグイッと引っ張られた。
「えっ?」
そして気付けば、椅子に座る旦那様の膝の上に、向かい合わせで乗っていた。
「えっ、えっ??」
何が起こったのか分からず困惑している私を見て、旦那様は美形な顔にクスリと笑みを浮かばせると、更に私の身体を引き寄せギュッと抱きしめる。
そして顎に指を添え持ち上げられると同時に、問答無用で唇を重ねてきた。
「っ!?」
それはすぐに深い口付けへと変わり、息が大きく乱れる。
首を振って逃げようとしても、後頭部をガッシリと抑えられ、腰にも腕が回され身動きが取れない。
口内のあらゆる箇所を堪能され、その口付けが終わる頃には、私は頭がグラグラと沸騰し酸素不足になっていた。
旦那様の肩に頭を預け、何度も息を吸って酸素を取り入れている私の顔のあちこちに、彼が上機嫌でキスを降らせる。
そして首筋にも何度か唇を当てると、そのまま私の髪の毛に顔を埋めてきた。
「昨晩は無理させてしまったな。悪かった」
…………。
いやいやっ、こんな呼吸困難になるキスをした後に言う台詞ですかーーっ!?
順番間違ってますよ旦那様っ!?
「君は初めてだし、終始優しくするつもりだったんだ。けれど君の余りの可愛さに自我を失ってしまった……。可愛過ぎる君も悪い」
ちょっ? 責任を強制的にこっちにも押し付けないで!? 責任転嫁ダメ絶対!
それに目に分厚ーいフィルター掛けられてません!? 可愛いのカの字もありませんよ私っ!?
「だ、旦那様……」
「ふふ、君に『旦那』と言われるのは嬉しいが、昨夜みたいに『ジーク』と呼んでくれないのか?」
「えっ!?」
私は瞳を大きく見開き、至近距離で口の端を上げながらこちらを見る旦那様を思わず凝視してしまった。
……ば、バッチリ聞かれてたぁ!!
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