最愛の番に殺された獣王妃

望月 或

文字の大きさ
19 / 42

18.一件落着……?

しおりを挟む



 その後、衛兵達がやってきて、メイド長と料理長を連行して行った。
 “毒”の存在をウラン様から伝えられた衛兵が、料理長の部屋をくまなく探すと、鍵が掛かった机の引き出しの中から発見された。
 それはユーディアさん殺害の動かぬ証拠となったのだった。


 二人が連行された後、私は事の顛末をウラン様に聞いたメイド達から一斉に謝られた。


「本当にごめんなさい、リシィ! ずっと無視していて……」
「皆、メイド長――いえ、ノーラから脅されていたの。言う事を聞かないとお給金を下げるって……」
「わたし……ノーラに弱みを握られていたの。皆にバラしてもいいのかって。だから従うしかなくて……」


 ……聞けば聞くほど、ノーラがとんでもない陰険で醜悪女である事が分かった。


「皆、事情があったのだし赦すわ。改めてだけど、これからは私と仲良くしてくれるかしら?」


 私の言葉に皆はホッとしたように笑顔になり、一様に大きく頷いたのだった。



*・。*・。*・。*・。*・。*・。*・。



「はぁ、これで一件落着ね」


 急遽、以前この屋敷で働いていた料理長を呼び戻し、夜は今までよりも遥かに美味しい晩ご飯を戴いた。
 彼はノーラにあらぬ濡れ衣を着させられ、あの女に騙されたウラン様によって解雇させられていたのだ。
 ウラン様は、この屋敷に長く務め自分に懸命に仕えるあの女の事を信頼していたから……。

 そして彼の代わりに、ノーラの強い推薦で元料理長の男を雇った。あの女の腰巾着だったその男を。


 ウラン様は彼に会いに行った時、ノーラを信じ解雇してしまった事を深く詫び、謝罪金を渡すと共に再雇用の話をした。
 彼は謝罪を受け入れ、再雇用に快く承諾してくれたのだった。


 料理長に「お腹が空いているから沢山食べたい」と伝えて、晩ご飯を多めに作ってもらい、ユークにお裾分けする。


「んー……。まぁまぁだな」
「美味しいって事かしら? 本当格別よね。無我夢中であっという間に平らげちゃったわ」
「けど、アンタの飯をずっと食べてた所為か、舌がアンタの料理を欲しがってるわ。だから今まで通り、夜はアンタが作ってくれ」
「えっ、何よそれ!? 私の所為なの!? ワガママねぇ、全く……」


 私の文句を右から左へと受け流すユークをジト目で見ると、シャワーを浴びる為に部屋を出た。
 いつも通り頭と身体を丹念に洗い、ついでに歯磨きをする。
 後は寝るだけになった私は、部屋に戻るとベッドの上にゴロリと寝転んだ。


「ユーク、あの時守ってくれてありがとう」
「勘違いすんな。アンタの為じゃねぇよ。あのクサレ女がオレに刃を向けたからだ」
「分かってるわ。お礼が言いたかっただけよ」


 案の定なユークの返しに、私はクスリと笑う。
 そして、気になった事を訊いてみた。


「ねぇユーク。これでリシィの環境は改善したでしょう? 元凶のノーラもいなくなったし、ウラン様とも更に親しくなったし、皆と仲良く暮らせるはずだわ。そうするとリシィの死にたい欲求も消えると思うの。そういう場合って、私はこの身体から出ていかなきゃならないの?」
「さぁな、それは元の【魂】次第だ。まだ身体の隅に留まっていたいと思えば何もしないだろうし、元に戻りたいと願えば、夢の中とかで訴えてくるだろ。残るか出るかを決めるのはアンタだ。一度身体を譲り渡したなら、優先権はアンタにあるからな」
「そうなのね……。もしこの身体を出たら、『憑依の術』でまた別の身体に入れるの?」
「それは多分無理だ。いい加減ここで決着をつけてぇし。アンタは天国に逝く事になるな」
「? 何の決着?」


 ユークはハッと丸い瞳を見開くと、顔をふいっと背けた。


「いや、何でもねぇ。気にすんな」
「全く……秘密主義ねぇ、もう……。夢にリシィが出てきたら、何とかこの身体に残れないか交渉してみようかしら」
「そうしてみな。半々で身体を使うのもいいんじゃねーか。嫌いな食いモンが出たら代わりに食べてもらうとかさ」
「え、何その便利な方法――ってしないわよっ! 子供じゃないんだから、もうっ」
「ガッツリ揺らいでたじゃねぇか。まぁ好きにしな。オレは寝る。久し振りに結構魔力使って疲れた」


 ユークは小さな口で欠伸をすると、寝そべる私のお腹の傍まで来て、モフンと丸くなった。
 そして、目を瞑ると私のお腹に頭をすり寄せる。
 『抱きしめて』の合図だ。


(くうぅっ、可愛過ぎる……っ! モフモフしまくりたい……っ)


 でもそれを実行するとユークに嫌な顔をされて離れていく事確実なので、唇をギュッと引き結びながら、彼の体をそっと抱きしめる。

 初めて一緒に眠った日の翌日の夜、ユークが自ら私の傍に来てモフリと横になったのだ。
 自分から来てくれた事が嬉しくて、(触ったらきっと離れてくわよね……)と、その夜は手を出さず添い寝のように眠ったのだけど。


 次の日の夜、再び私の傍にやって来たユークは、モフッと寝そべると、私の腰に頭を押し付けてきた。

「…………?」

 最初はその仕草の意味が分からなかったけれど、


(あっ。もしかして抱きしめて欲しいの……?)


 と気付き、優しく腕の中に包み込むと、ユークは静かに目を閉じ眠り始めた。
 まるで、野生のウサギが最初は懐かず威嚇して逃げていたけれど、徐々に心を許して近付いてくれているようで、私は内心ニヤニヤが止まらなかった。


 今も、ユークは安心したように体の力を抜いている。
 そして、程なくしてプゥプゥと寝息が聞こえてきた。


「もう寝ちゃったの? 本当に疲れていたのね。おやすみなさい、ユーク。良い夢を――」


 ユークの体を優しく撫でながら、私も重たくなった瞼を閉じ、眠りの世界へと誘われていったのだった。



 ――その数週間後に衝撃的な出来事が待ち受けているなんて、この時の私には見当もつかなかった――



しおりを挟む
感想 38

あなたにおすすめの小説

【完結】番(つがい)でした ~美しき竜人の王様の元を去った番の私が、再び彼に囚われるまでのお話~

tea
恋愛
かつて私を妻として番として乞い願ってくれたのは、宝石の様に美しい青い目をし冒険者に扮した、美しき竜人の王様でした。 番に選ばれたものの、一度は辛くて彼の元を去ったレーアが、番であるエーヴェルトラーシュと再び結ばれるまでのお話です。 ヒーローは普段穏やかですが、スイッチ入るとややドS。 そして安定のヤンデレさん☆ ちょっぴり切ない、でもちょっとした剣と魔法の冒険ありの(私とヒロイン的には)ハッピーエンド(執着心むき出しのヒーローに囚われてしまったので、見ようによってはメリバ?)のお話です。 別サイトに公開済の小説を編集し直して掲載しています。

【完結】2番目の番とどうぞお幸せに〜聖女は竜人に溺愛される〜

雨香
恋愛
美しく優しい狼獣人の彼に自分とは違うもう一人の番が現れる。 彼と同じ獣人である彼女は、自ら身を引くと言う。 自ら身を引くと言ってくれた2番目の番に心を砕く狼の彼。 「辛い選択をさせてしまった彼女の最後の願いを叶えてやりたい。彼女は、私との思い出が欲しいそうだ」 異世界に召喚されて狼獣人の番になった主人公の溺愛逆ハーレム風話です。 異世界激甘溺愛ばなしをお楽しみいただければ。

間違えられた番様は、消えました。

夕立悠理
恋愛
※小説家になろう様でも投稿を始めました!お好きなサイトでお読みください※ 竜王の治める国ソフームには、運命の番という存在がある。 運命の番――前世で深く愛しあい、来世も恋人になろうと誓い合った相手のことをさす。特に竜王にとっての「運命の番」は特別で、国に繁栄を与える存在でもある。 「ロイゼ、君は私の運命の番じゃない。だから、選べない」 ずっと慕っていた竜王にそう告げられた、ロイゼ・イーデン。しかし、ロイゼは、知っていた。 ロイゼこそが、竜王の『運命の番』だと。 「エルマ、私の愛しい番」 けれどそれを知らない竜王は、今日もロイゼの親友に愛を囁く。 いつの間にか、ロイゼの呼び名は、ロイゼから番の親友、そして最後は嘘つきに変わっていた。 名前を失くしたロイゼは、消えることにした。

番から逃げる事にしました

みん
恋愛
リュシエンヌには前世の記憶がある。 前世で人間だった彼女は、結婚を目前に控えたある日、熊族の獣人の番だと判明し、そのまま熊族の領地へ連れ去られてしまった。それからの彼女の人生は大変なもので、最期は番だった自分を恨むように生涯を閉じた。 彼女は200年後、今度は自分が豹の獣人として生まれ変わっていた。そして、そんな記憶を持ったリュシエンヌが番と出会ってしまい、そこから、色んな事に巻き込まれる事になる─と、言うお話です。 ❋相変わらずのゆるふわ設定で、メンタルも豆腐並なので、軽い気持ちで読んで下さい。 ❋独自設定有りです。 ❋他視点の話もあります。 ❋誤字脱字は気を付けていますが、あると思います。すみません。

幸せな番が微笑みながら願うこと

矢野りと
恋愛
偉大な竜王に待望の番が見つかったのは10年前のこと。 まだ幼かった番は王宮で真綿に包まれるように大切にされ、成人になる16歳の時に竜王と婚姻を結ぶことが決まっていた。幸せな未来は確定されていたはずだった…。 だが獣人の要素が薄い番の扱いを周りは間違えてしまう。…それは大切に想うがあまりのすれ違いだった。 竜王の番の心は少しづつ追いつめられ蝕まれていく。 ※設定はゆるいです。

忌むべき番

藍田ひびき
恋愛
「メルヴィ・ハハリ。お前との婚姻は無効とし、国外追放に処す。その忌まわしい姿を、二度と俺に見せるな」 メルヴィはザブァヒワ皇国の皇太子ヴァルラムの番だと告げられ、強引に彼の後宮へ入れられた。しかしヴァルラムは他の妃のもとへ通うばかり。さらに、真の番が見つかったからとメルヴィへ追放を言い渡す。 彼は知らなかった。それこそがメルヴィの望みだということを――。 ※ 8/4 誤字修正しました。 ※ なろうにも投稿しています。

運命の番?棄てたのは貴方です

ひよこ1号
恋愛
竜人族の侯爵令嬢エデュラには愛する番が居た。二人は幼い頃に出会い、婚約していたが、番である第一王子エリンギルは、新たに番と名乗り出たリリアーデと婚約する。邪魔になったエデュラとの婚約を解消し、番を引き裂いた大罪人として追放するが……。一方で幼い頃に出会った侯爵令嬢を忘れられない帝国の皇子は、男爵令息と身分を偽り竜人国へと留学していた。 番との運命の出会いと別離の物語。番でない人々の貫く愛。 ※自己設定満載ですので気を付けてください。 ※性描写はないですが、一線を越える個所もあります ※多少の残酷表現あります。 以上2点からセルフレイティング

君は僕の番じゃないから

椎名さえら
恋愛
男女に番がいる、番同士は否応なしに惹かれ合う世界。 「君は僕の番じゃないから」 エリーゼは隣人のアーヴィンが子供の頃から好きだったが エリーゼは彼の番ではなかったため、フラれてしまった。 すると 「君こそ俺の番だ!」と突然接近してくる イケメンが登場してーーー!? ___________________________ 動機。 暗い話を書くと反動で明るい話が書きたくなります なので明るい話になります← 深く考えて読む話ではありません ※マーク編:3話+エピローグ ※超絶短編です ※さくっと読めるはず ※番の設定はゆるゆるです ※世界観としては割と近代チック ※ルーカス編思ったより明るくなかったごめんなさい ※マーク編は明るいです

処理中です...