人形となった王妃に、王の後悔と懺悔は届かない

望月 或

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14.『決行』の夜 * ◇

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 ソレは本当に決行される事になり、とうとうその『今夜』になってしまった。
 本体の私は丁寧に湯浴みされて綺麗に整えられ、ランプ一つの薄暗い灯りの中、薄いネグリジェ一枚でベッドの上に寝かされている。
 それをベッドの上に乗り、ジッと見つめているのはリオーシュだ。既に上半身裸で、細身ながら引き締まった身体を曝け出している彼は、切なそうな眼差しで本体の私を見下ろしている。

 今の本体の私の位置だと、こちらから全身が見える。
 動けない私は、リーエちゃんの中でただ見ている事しか出来なかった。

 リオーシュが震える手で、私のネグリジェをゆっくりと脱がせる。
 全裸になった私を見て、リオーシュからゴクリと生唾を飲み込んだ音が聞こえた。


「……ロア……本当に済まない。君の許可無しにこんな事を……」


(済まないと思ってるなら今すぐに中止して頂戴っ!)


 そんな私の突っ込みは、勿論聞こえる筈も無く。


「だが、君が元に戻る可能性があるんだ……。君が治るのなら、私はどんな藁にでも縋りたい。避妊薬はちゃんと飲んだから、子供は出来る事は無いから安心してくれ……。それに……私は、『初夜』の日以降、君を抱きたくて堪らなかった――」


(えっ?)


 リオーシュは切ない表情のまま私に覆い被さり頭を下げると、「済まない……」と掠れた声で呟き、私の唇に自分の唇を重ねてきた。
 程なくして、舌が絡み合う湿った音が聞こえてくる。何度も角度を変えて、リオーシュは私の唇と咥内を堪能している。

 まるで、今まで出来なかった分まで取り戻すかのように。


 リオーシュの荒い息遣いだけが、静かな部屋に響いている。
 ……私はそれを、とても居た堪れない気持ちで見ていた。
 性欲は無いので変な気持ちは起きないけど、何とも言えない雰囲気を醸し出すここから逃げ出したい気持ちで一杯だ。

 私とリオーシュのソレを、第三者視点で見る事になるなんて……。


(こんな貴重な経験……無くていいわっ!!)


 心の中で絶叫している間に、リオーシュの唇が首筋に降りてきて、彼の大きな手が私の胸を弄んでいた。小さな胸が、彼の指が動く度形を変える。


「……気持ちいい……」


 ボソリと呟いたリオーシュは、口元を緩ませその感触を楽しんでいるようで、結構長い間胸を揉んでいた。


(小さい分、張りがあるから弾力が良いのかしら――って、自分の胸に対して何見解してるの私っ)


 一人突っ込みをしている間にリオーシュは胸の先端を口に含み、赤ん坊のように音を出しながら強く吸う。私の心は羞恥で一杯だ。


(もうっ! そんなに吸われても母乳は出ないわよっ!)


 当たり前だが本体の私は何の反応もしないし、声も出さない。けれど彼は愛撫を止めなかった。


(何をしても反応が無くてつまらない筈なのに……どうして――)


 ふと彼の顔を見て、私は絶句した。
 その黄金色の瞳は獣のようにギラギラ光っていて……息も荒く、興奮しているのが丸分かりだったのだ。
 『初夜』の時は、私は一杯一杯で彼の顔を見る余裕はあまり無かったけれど、その時の彼もこんな風に獲物を狙う野獣みたいだったのだろうか……。


「ロア……、ロア……ッ」


 私の名を呟きながら、私の身体中に唇をつけ、紅い痕を刻んでいく。
 そして、彼の片手が私の下半身に伸び、秘所に指が触れた。


(本体は触感が無いから、きっと濡れていないわ――)


 クチュ、という水音が響き、私は思わず「えっ!?」と叫んでいた。勿論声は出せないけれど。


(――あっ、もしかして、本体には『本能』である性欲があるから、自然と濡れてきちゃったとか!?)


 ……その時のリオーシュの顔に、私は背筋が凍るような感覚が走った。
 両目を見開き、嬉しそうに口の端を大きく持ち上げたのだ。

 まるで至高の喜びを感じたかのように――


「ははっ、濡れてる……。気持ち良かったんだな? ロア。良かった、君を気持ち良くさせてあげられた……。今からもっと気持ち良くしてあげるから――」


 リオーシュは笑みのままそう言うと、私の両脚を開き、その間に顔を埋めた。
 そこにある秘所をウットリとした表情で見つめると、リオーシュは躊躇無く舌と唇で愛撫を開始した。
 舌で舐める音と、何かを吸う音、時々聞こえる液体を啜る音に、私は羞恥で走り去りたい衝動に駆られる。


「ふふ、溢れてくる……。感じてくれているのか? 嬉しいよ、ロア……」


(きゃあーっ! 違うわっ! 生理的現象よっ!! その『私』に気持ちいいとか感じるとか無いからっ! 恥ずかし過ぎる発言をするのは止めてぇーーっ!!)


 もう、穴があったら今すぐにでも飛び込みたい思いで一杯だ。


「あぁ……そろそろ限界だ……。ロア……挿入いれるよ」


 リオーシュは苦しそうに大きく息を吐くと上半身を起こし、スラックスと下着を脱いだ。
 大きく硬く張り詰めて天を向くリオーシュのソレが姿を現す。


(……っ!!)


 それを見た瞬間、私はカトレーダの事を思い出していた。


(……そうよ。何で忘れていたのよ、私――)


 この人とあの子は、もう身体を重ねているのに。
 この人はあの子の裸を見て、あの子の身体を触っているのに。

 あの子の中に、既にソレが挿入はいって――


(……嫌だ……)


 その事を考えた瞬間、リオーシュのソレが“穢らわしい肉の棒”のように思えてきて。



(嫌だ嫌だ嫌だっ!! 私の中にそんな穢れたモノを挿入いれないでっ!!)



 私は何とか阻止しようと、心の底から叫声し、リーエちゃんの中でこれでもかという程懸命に暴れ回る。
 するとその願いが通じたのか、グラリとリーエちゃんが傾き、そのまま床の上にポトリと落ちた。


(痛っ! ――くはない……? 身体が柔らかくて命拾いしたわ……)


 リオーシュはリーエちゃんが落ちたのに気が付き、首を傾げながらゆっくりとベッドから降り、律儀にリーエちゃんを拾い上げた。


「風も何も無かったのに、どうしていきなり落ち――」


 リオーシュはそこで大きく目を瞠り、言葉を途切れさせた。


「え……。な……何で……。どうして硝子玉の目から雫が出ているんだ……!?」


(えっ、雫……? リーエちゃん泣いてるのっ? もしかして……私の強い感情がリーエちゃんの顔に出ちゃった!?)


「泣いて……いるのか……? ――嫌、なのか? 私がロアの中に挿入いれるのが、泣く程に……」


(……っ! 気付いてくれたっ!? 仕事では察しが良くてよく先読みをしていたけれど、ここでもその察しの良さを発揮してくれたわ……!)


「……ロア? ロアなのか……? いるのか? そこに――」



(それは気付かなくて察しなくていいのよーーっ!!)




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