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7.王弟殿下の覚悟と決意
しおりを挟む「フレデリック様」
フレデリックが玉座の間に戻る途中、宰相であるムートンに呼び止められた。
「ムートン。離縁証明書は無事に受理されたか?」
「はい。先程、確かに」
「ありがとう、ムートン」
「……フレデリック様。イシェリア様は――」
「あぁ……。ついさっき別れたよ。挨拶も済ませた。『洗脳』が解けてたよ、彼女」
「……! そうですか……。それは本当に良かった……。これでやっとイシェリア様は“自由”になれるのですな……」
ムートンは齢五十を超えているがキビキビとした動作で若々しく、フレデリックが幼い頃からこの国の王に仕えており、常に国と国民のことを一番に考えていた。
フレデリックはムートンが信頼に値する人物だと信じ、彼にイシェリアの『洗脳』について話していたのだ。
「“あの薬”のことも、ちゃんと引き継ぎしてくれた。流石だよ、彼女」
「ふふ、そうですか。“あの薬”には随分と助けられていますものね。フレデリック様が服用されている“魔法無効化の薬”は、副作用として頭痛を伴うのですが、“あの薬”が頭痛を随分と和らげてくれました。身体への負担が無い薬ですから、安心して飲めますし。探して見つけ出してくれたイシェリア様には感謝しかありません」
フレデリックが『洗脳魔法』のことを知った時、その下位である『魅了魔法』があることも知り、すぐに“魔法無効化の薬”を取り寄せ飲み始めた。
案の定、メローニャは彼に何回か『魅了魔法』をし掛けてきた。
フレデリックも、コザックに負けず劣らず美形の部類に入るのだ。
薬を飲む前に『魅了魔法』を使ってこなかったのは本当に運が良かった。
イシェリアに使った『洗脳魔法』は下準備として、掛ける相手の“自尊心”を下げる必要があるので、それを優先してフレデリックに『魅了魔法』を掛ける余裕がなかったのかもしれない。
薬のお蔭で無効化され、メローニャは『魅了魔法』に掛からないフレデリックに怪訝な表情を浮かべたが、それ以降は何もしてこなくなった。
(けれど、油断は禁物だ。……きっと兄上は、もう既に“あの女”の『魅了魔法』に掛かってしまっているのだろう――)
フレデリックが副作用の頭痛に苦しんでいた時、その様子を心配したイシェリアに声を掛けられた。
隠す必要が無いので、「慢性的な頭痛だ」と言うと、彼女はすぐに動き、自分の予算で頭痛を和らげる薬を購入し、フレデリックに渡してくれたのだ。
(『洗脳』されても、彼女の“真に優しい心”まで失くさないでいてくれて、本当に良かった――)
「ムートン、これからが大変になるぞ。まずは、イシェリアがこなしていた国務を全て兄上にやって貰う。そして、王妃の責務は全て“あの女”にやらせてくれ。王后になったんだからな、そんなの当たり前のことだろう?」
「畏まりました。まぁ、素直にされるとは思いませんがね」
「あぁ、私もそう思うよ。でもやって貰わなきゃ困るよな? イシェリアのしていた国務を私も手伝っていたから、王の仕事に関しては一通り出来るが、それは最終手段だ。彼女の有り難みを少しは思い知るといいんだ」
「えぇ、えぇ。本当に仰る通りですな」
「ムートン、これかも世話を掛けるがよろしく頼む。まだまだ引退は出来ないぞ?」
「ほっほっほ。フレデリック様の為に、老骨に鞭打って頑張りましょうかの」
(……イシェリア……。今まで苦労してきた分、幸せになれることを祈ってるよ……。君のことを、本当の“妹”のように愛していたよ――)
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