カダ子

クロム

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和解

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 何者かが教室の中に入ってくる気配がする。
「だ、誰?誰なの?」
「カダ子?」

 ライトにボサボサ髪の少女の顔が映し出される。
「いやあああああああああああ。」
「ウマ子、レオ、逃げるぞ!おっおい、どうしたレオ?」
「さ、沢子。沢子か?」

 少女が教卓の上に登る。
「そうだよ。私がカダ子。カダ子は私。はははははははははははははははははは。」
「たっタケに何をしたのよ!!」
「何にも。」
「じゃあ、どうしてタケは!?」
「別になんともありませんよ。」
「ひぃ。」
「ははは。こんばんは。いじめっ子達。」
「てめえ、ふざけんじゃねえぞ!説明しろ!」
「私が説明します。沢子は、ただ機会が欲しかっただけなんです。そう、真剣に話を聞いてくれる機会。私と沢子はそのために色々準備しました。オルゴールにでっち上げの怪談話、迫真の演技。あなた達を怖がらすには十分効果がありましたね。」
「で、何の機会なの?こんなことわざわざする必要あったの?」
「ああ、あるに決まってるわよ。だいたい、あんた達学校じゃ聞く耳持たないじゃない。」
「私たちはもともと5人だったじゃないですか?どうして、こうなったか。もう一度考えてみませんか?」
「やめろ。帰る。」
「比良君、待って。どうしたのよ?」
「ウマ子、このイカれた女は俺の金を盗んだ最低な人間だ、それでいいだろ?」
「最低な人間?はははは。どっちがかしら?」
「うるさい。もう、よしてくれよ。」
「比良?何があったんだよ?なあ。」
「ははははは。言わないなら私が言うわ。」
「う、告られた。沢子に。」
「そうよね、私あなたに告白したの。そしたら何て言われたと思う?」
「ウマ子が好き。」
「え?比良男。嘘でしょ。」
「それで、俺は恐くなった。沢子のことが恐くて嫌でいつの間にか憎悪に変わってた。何もかも忘れたくなった。だから、沢子を追放した。お金を盗まれたというのも嘘だ。事実のかけらもない。すまなかった。」
「あら、謝ったら済むと思ってるの。はははは。」
「それ、本当なの?比良?」
「比良男。お前!」
「すべて真実だ。今更、許してくれるとは思わない。ごめんな、沢子。」
「いいわよ。許すわ。でも、私も今更あんた達と仲良くなれるなんて思わない。誤解が解けただけ満足するわ。」
「なあ、俺全然気づかなくて、その、沢子のこと泥棒扱いしてごめん。」
「わ、私も。取り返しのつかないことしちゃって。ね、できたら、また遊ぼうよ。」
「え・」
「そうですよ。もう全部水に流しましょうよ。賛成の人は挙手。」

 タケ、レオ、ウマ子、比良男、沢子の順で手を挙げる。
「決まりだな!やっぱ沢子いないと寂しかったよな!」
「そうですね、やっぱり5人がいいですね。」
「沢子、ごめんね。」
「何言ったらいいのかな、とにかく、俺が悪かった。」
「何のこと?私頭悪いからすぐ忘れちゃうの。」
「おかえり。」
「おかえり。」
「おかえり。」
「おかえり。」
「・・ただいま。」

 扉が開く音がする。
「な、何?沢子?」
「違うわ、知らない。」
「もしかして本物のカダ子?」
「ザンネーン。警察でしたー。」
「あっおっちゃーん!ついてきてたのね。」
「な、そんなことするかいな。教室に光がついてるって通報があったんだよ。」
「脅かしやがって。」
「大人にそんな口きかないほうがいいぞ。さ、帰った、帰った。特別に黙っといてやるから。」
「ありがと、おっさん。」
「おっさん言うな。」

 5人は家に帰る。
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