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第3章「ジョニー、お見舞いに行く」
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俺とクラウは警察署に連行され、それぞれ別室で取り調べを受けていた。
クラウの部屋を襲ったフィフス・ストリートのギャング達は、何故か突然仲間割れを起こして互いに殺しあったと俺は説明した。
何しろギャングの死体から取り出した銃弾は、すべてギャング自身が持っていた銃から発砲されたものだったし、俺とクラウには硝煙反応がなかった。
生き残ったギャング達は完全黙秘を続け、すぐに弁護士が引き取りに来て、俺たちよりも先に解放されていた。
警察もフィフス・ストリートを恐れていて、事件があっても決して深入りはしない。
それどころか警察内部にもフィフス・ストリートのメンバーが大勢いることは、この町の住人なら誰でも知っている。
俺の取り調べをしているこの若い刑事、アルバレスも明らかに怪しかった。
とても刑事の安月給では買えない高級なスーツを着こなし、これまた高級な腕時計が左腕に光っている。
「ジョニー。君はあくまでもギャングが仲間割れをしたと主張するんだな?」
「そうさ。でなきゃ、俺みたいなか弱い一般市民に何ができる?」
「か弱い一般市民ねぇ…………」
アルバレスは意地悪く光っている目で俺を見た。
「――お前の父親は、汚職刑事だったそうだな」
「違う!!」
「お前の父親は刑事のくせに、フィフス・ストリートから押収したヤクを着服した。それがフィフス・ストリートにバレて、殺されたんだろ」
「違う!!オヤジはフィフス・ストリートにハメられたんだ!」
「署内のみんなが言ってるぜ。お前のオヤジは警察官の面汚しだとな!」
アルバレスはわざと俺を怒らせ、暴れさせようとしていた。
そして、俺がちょっとでも不審な挙動をしたら、スーツの下に吊り下げているグロック19で俺を撃ち殺し、正当防衛でしたと報告書にサインをするつもりだ。
その手には乗るか!俺は深呼吸をして、懸命に怒りを鎮めた。
「お前の母親は………」
俺の動悸が速まり、呼吸が微かに乱れていた。
「父親が死んだら、すぐに別の男を作って、お前を捨てて雲隠れしたんだってな!大したビッチだな!」
俺はパイプチェアーを後ろに倒し、立ち上がった。
アルバレスがしめたとばかりに、右手をスーツの下に差し入れた。
その時、俺の頭の中にサッと稲妻が走った。
「アルバレス………」
「なんだ!?」
「――あんたの右隣に立っている女の子は誰だい?」
「はあ………?」
すっかり気勢をそがれ、アルバレスが首を右に曲げた。
「いるわけないだろう!」
「やっぱり、あんたには見えないのか。俺には天使のコスプレをした金髪の美少女が見えているんだ。その美少女は、あんたの左胸を指差している。俺に大人しくしていろと警告しているみたいだ」
「ジョニー!俺をからかってるのか!?」
俺は倒れたパイプチャアーを元に戻し、静かに座った。
「さあ、アルバレス刑事!他にご質問はあるかな?」
「ウヌヌヌヌ………」
と、ドアを開け、色黒で髭を生やした初老の刑事が取調室に入ってきた。
その赤い帽子を被らせたらスーパーマリオそっくりの刑事は、アルバレスの肩を叩いて言った。
「どけ!俺が代わる」
「し、しかし………」
その初老の刑事は鋭い眼光でアルバレス刑事を睨みつけた。
「聞こえなかったのか!」
チッと舌打ちをして、アルバレス刑事は取調室を出ていった。
初老の刑事は俺の真正面に座り、ニコリと笑った。
「大きくなったな、ジョニー」
「あんたは老けたな。ペドロさん」
ペドロ刑事は、死んだオヤジの同僚だった。
オヤジが生きてた頃は、よく家に来て、幼かった俺と遊んでくれていた。
「ジョニー、悪いことは言わない。一刻も早く、この町を出るんだ。フィフス・ストリートに逆らったら、例え大統領でも無事には済まない」
ペドロは伏し目がちに遠慮しながら、ポツポツと独り言のように呟いた。
「俺は何も悪いことはしていない」
「それはわかっている。お前のオヤジさんも清廉潔白な刑事だったが、それが災いした。この町では善人は早死にする………」
「ペドロさん、あんたも悪人なのかい?」
「ああ、そうさ!年金がもらえるまで見て見ぬふりをして、好き勝手に悪党をのさばらしている悪人の一人さ」
ペドロは唇がプルプルと震えさせ、憤然として席を立った。
「ペドロさん!」
ペドロは足を止め、振り返った。
「俺の隣にいる、翼の生えた美少女の姿が見えるかい?」
ペドロは悲し気な表情で首を横に振った。
「ジョニー、女を連れて早く町を出るんだ………」
クラウの部屋を襲ったフィフス・ストリートのギャング達は、何故か突然仲間割れを起こして互いに殺しあったと俺は説明した。
何しろギャングの死体から取り出した銃弾は、すべてギャング自身が持っていた銃から発砲されたものだったし、俺とクラウには硝煙反応がなかった。
生き残ったギャング達は完全黙秘を続け、すぐに弁護士が引き取りに来て、俺たちよりも先に解放されていた。
警察もフィフス・ストリートを恐れていて、事件があっても決して深入りはしない。
それどころか警察内部にもフィフス・ストリートのメンバーが大勢いることは、この町の住人なら誰でも知っている。
俺の取り調べをしているこの若い刑事、アルバレスも明らかに怪しかった。
とても刑事の安月給では買えない高級なスーツを着こなし、これまた高級な腕時計が左腕に光っている。
「ジョニー。君はあくまでもギャングが仲間割れをしたと主張するんだな?」
「そうさ。でなきゃ、俺みたいなか弱い一般市民に何ができる?」
「か弱い一般市民ねぇ…………」
アルバレスは意地悪く光っている目で俺を見た。
「――お前の父親は、汚職刑事だったそうだな」
「違う!!」
「お前の父親は刑事のくせに、フィフス・ストリートから押収したヤクを着服した。それがフィフス・ストリートにバレて、殺されたんだろ」
「違う!!オヤジはフィフス・ストリートにハメられたんだ!」
「署内のみんなが言ってるぜ。お前のオヤジは警察官の面汚しだとな!」
アルバレスはわざと俺を怒らせ、暴れさせようとしていた。
そして、俺がちょっとでも不審な挙動をしたら、スーツの下に吊り下げているグロック19で俺を撃ち殺し、正当防衛でしたと報告書にサインをするつもりだ。
その手には乗るか!俺は深呼吸をして、懸命に怒りを鎮めた。
「お前の母親は………」
俺の動悸が速まり、呼吸が微かに乱れていた。
「父親が死んだら、すぐに別の男を作って、お前を捨てて雲隠れしたんだってな!大したビッチだな!」
俺はパイプチェアーを後ろに倒し、立ち上がった。
アルバレスがしめたとばかりに、右手をスーツの下に差し入れた。
その時、俺の頭の中にサッと稲妻が走った。
「アルバレス………」
「なんだ!?」
「――あんたの右隣に立っている女の子は誰だい?」
「はあ………?」
すっかり気勢をそがれ、アルバレスが首を右に曲げた。
「いるわけないだろう!」
「やっぱり、あんたには見えないのか。俺には天使のコスプレをした金髪の美少女が見えているんだ。その美少女は、あんたの左胸を指差している。俺に大人しくしていろと警告しているみたいだ」
「ジョニー!俺をからかってるのか!?」
俺は倒れたパイプチャアーを元に戻し、静かに座った。
「さあ、アルバレス刑事!他にご質問はあるかな?」
「ウヌヌヌヌ………」
と、ドアを開け、色黒で髭を生やした初老の刑事が取調室に入ってきた。
その赤い帽子を被らせたらスーパーマリオそっくりの刑事は、アルバレスの肩を叩いて言った。
「どけ!俺が代わる」
「し、しかし………」
その初老の刑事は鋭い眼光でアルバレス刑事を睨みつけた。
「聞こえなかったのか!」
チッと舌打ちをして、アルバレス刑事は取調室を出ていった。
初老の刑事は俺の真正面に座り、ニコリと笑った。
「大きくなったな、ジョニー」
「あんたは老けたな。ペドロさん」
ペドロ刑事は、死んだオヤジの同僚だった。
オヤジが生きてた頃は、よく家に来て、幼かった俺と遊んでくれていた。
「ジョニー、悪いことは言わない。一刻も早く、この町を出るんだ。フィフス・ストリートに逆らったら、例え大統領でも無事には済まない」
ペドロは伏し目がちに遠慮しながら、ポツポツと独り言のように呟いた。
「俺は何も悪いことはしていない」
「それはわかっている。お前のオヤジさんも清廉潔白な刑事だったが、それが災いした。この町では善人は早死にする………」
「ペドロさん、あんたも悪人なのかい?」
「ああ、そうさ!年金がもらえるまで見て見ぬふりをして、好き勝手に悪党をのさばらしている悪人の一人さ」
ペドロは唇がプルプルと震えさせ、憤然として席を立った。
「ペドロさん!」
ペドロは足を止め、振り返った。
「俺の隣にいる、翼の生えた美少女の姿が見えるかい?」
ペドロは悲し気な表情で首を横に振った。
「ジョニー、女を連れて早く町を出るんだ………」
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