イージスの盾

櫃間 武士

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第4章「ジョニー、娘と添い寝する」

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「ドローンを捕まえたが、どうするんだ?」

「少々、お待ちください」

 俺が捕まえたドローンをセラベラムに手渡すと、彼女は中心部に取り付けられたボックスに人差し指を差し込んだ。

「中身を調べてるのか……?」

「はい………」

「器用なもんだな。だが、もうすぐ、俺ン家だ。それまでにカタつけようぜ」

 と、セラベラムが夜空を見上げて叫んだ。

「来ました!」

 俺も頭上を見上げた。

 漆黒の夜空に、かすかに赤い光点が5つ、点滅するのが見えた。

「あれがプラスチック爆弾を積んだドローンなのか?」

「はい。もうすぐ、パパ目がけて突進してきます」

「おいおい!爆弾ぐらい俺は平気だが、夜中に騒音立てたらご近所さんに迷惑だぜ」

「――もう大丈夫です」

 セラベラムがそう言うと、頭上を飛行していた五機のドローンが次第に高度を下げて、近づいてきた。

「本当に爆発しないんだろうな」

「高出力のジャマーを射出して、GPSを狂わせました。制御不能状態に陥ったドローンは、緊急着陸するようにプログラムされています」

 セラベラムの言葉通り、五機の自爆用ドローンは行儀良く、俺の前に整然と着陸した。

「さて、これ、どうしますか?」

「そうだな。このまま置いていても危ないし……。元の場所に送り返してやれ」

「承知しました」

 セラベラムが五機の自爆用ドローンに触ると、順番にプロベラを回転させて飛び立っていった。

 それから、俺は再び自分のアパート目指して夜道を歩いて行った。

 20分ほどして、東の空が白みかけてきた。

 と、激しい地響きがして、俺のアパートのある方向で黒煙の柱が立ちのぼった。

「何だ、あの爆発は?」

 セレベラムは翼を広げて、頭上高く飛び上がって前方を見た。

「先ほど、送り返した自爆用ドローンです。送り主の元に戻って爆発したようですね」

「ふーん。ま、自業自得だな」

 そんなことより、俺は一刻も早く自分の部屋のベッドに潜り込んで眠りたかった。

 途中の道端に停めてあった大型のトレーラーバスが爆発し、炎上していた。

 トレーラーバスの屋根がアルミ箔のように破れて炎を噴き、空に向かって猛々しく咆えていた。

 その横を通り過ぎた時に、頭上高く空に浮かんでいたセラベラムが地上に降りてきた。

「本当にアパートに戻るのですか、パパ?このまま、部屋に戻っても、きっと攻撃されますよ」

「今日はもう疲れたから部屋で眠らせてくれよ」

 長いハードな一日だった。

 強烈なだるい眠気がまぶたにのしかかる。

 俺の脳みそは睡魔に圧し掛かられ、潰れる寸前だった。

「わかりました。でも、その前に、アパートの前に七名、パパを待っているギャングがいますから、彼らを倒してくださいね」

「やれやれ…。貧乏暇なしってね………」


 セラベラムの言う通り、アパートの入り口では七名のチンピラがたむろしていた。

 俺が近づくのに気付いたチンピラの一人が行く手を遮った。

「待ってたぜ!ジョニー!覚悟しやがれ!」

「チンピラに用はねぇよ。悪いことは言わねぇ。お家に帰ってネンネしな」

「なんだと!?この野郎!」

 チンピラは俺の頬を殴りつけた。

 だが、拳が俺の頬に触れようとした瞬間、チンピラは弾き飛ばされ、地面に尻餅をついた。

「気をつけろ!こいつ、変な武術を使いやがる!」

 別のチンピラが拳銃を取り出して、俺の胸に狙いを定めた。

「それ以上一歩でも動くと撃つぜ」

「撃たない方がいいと思うぞ」

 俺はそのまま安アパートに向かってズカズカと進んで行った。

「死ねっ!」

 チンピラが拳銃の引き金を引いた。
 
 次の瞬間、地面にうずくまっていたのはチンピラの方であった。

 銃弾は俺の胸に当たると跳ね返り、撃ったチンピラ自身の腹に当たったのだ。

 銃声を聞いて、周囲のチンピラ達も興奮して、一斉に俺に向かって銃弾を放った。

 だが、銃弾はすべて跳ね返り、チンピラ達は次々とうめき声をあげて路面に横たわった。

「バ、バケモノめ!!」

 生き残ったチンピラ達は震える手で拳銃を構えながら叫んだ。

 チンピラ達が遠巻きに取り囲む中、俺は路面に転がった拳銃を拾い上げた。

「あわてるな。これを見ろ」

 そう言うと、俺は拳銃を口にくわえて引き金を引いた。

 銃声が数発、通りに響き渡った。

 その場にいた全員が身体をこわばらせた。

 俺は何事もなかったように微笑みながら佇んでいた。

「俺は不死身の化け物だ!仲間達に伝えろ!生命が惜しかったらフィフス・ストリートから抜けろ!俺は必ずフィフス・ストリートをぶっ潰してやる!!」

 チンピラ達は怯えて、後ずさりをした。

「そんじゃ、おやすみ……」

 俺はポイッと拳銃を投げ捨て、眠そうに眼をこすりながらアパートに入って行った。
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