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第5章「ジョニー、ブログを立ち上げる」
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武器庫が大爆発を起こし、堅牢な鋼鉄製の非常扉がガタガタと爆風で振動した。
ビル全体が激動に見舞われ、今にも倒壊しそうな程に揺れ動いた。
非常扉の向こう側には、生きている者は一人としていないだろう。
階下の火災も広がっているようで、俺が今いる吹き抜けにまで白煙が充満している。
俺はもうもうと立ち込める白煙の中、再び階段を上っていった。
だが、イージスの盾が煙の微粒子を弾いてくれるおかげで、息苦しさはまったく感じなかった。
それどころが、さっきは息せき切って階段を上がったが、今は少しも呼吸が乱れていない。
セラベラムが俺の呼吸器や循環器の機能を適切に調節してくれているのだろう。
「急がないとこのビル全体が倒壊しそうだぜ。監視用ドローンの方は無事か?」
「最上階の様子をちゃんとモニターしています。ちょうど、ミゲル・トレビノが部下に脱出の準備をするように命令しているところです」
「どうやって脱出するつもりだ?」
「ちょっとお持ちください…………」
セラベラムが視線を宙に這わせて考えをめぐらすポーズをした。
「わかりました!屋上のヘリポートにヘリコプターが着陸しています」
「ヘリで逃げるつもりか!そうはさせるか!」
俺は煙で足元も見えなくなった階段を、一歩一歩足を運んで上がっていった。
最上階の十六階にまで上り、非常扉を押し開いて通路に出ると、間髪入れずに黒服のボディガード達が掴みかかってきた。
無論、誰も俺の身体に触れることはできない。
俺は少し頭を低くして、ボディガード達の間を巧みにすり抜け、通路を走って行った。
易々と、俺は精巧な彫刻がほどこされた巨大な両開きのドアの前にたどり着いた。
この扉の向こうに、フィフス・ストリートのボス、ミゲル・トレビノがいるのだ。
俺はザックから手榴弾を1個取り出すとピンを引き抜き、ドアノブに押し当てた。
俺の手の中で手榴弾が爆発し、ドアノブが吹き飛んだ。
背後でこの様子を見ていたボディガード達は、すっかり怖気づいてしまった。
手の中で手榴弾を爆発させて涼しい顔をしている化け物なんかに、誰も近づきたくはない。
俺は両手でドアを強く押し開いた。
足が沈みそうな真っ赤な絨毯が敷き詰められた部屋には、大理石でできたエグゼクティブデスクが一つ置いてあるだけだった。
壁一面に広がる防弾ガラスの向こう側には、俺が飛ばした監視用ドローンが飛行し、忠実にこの部屋の様子を撮影している。
そして、エグゼクティブデスクには、フィフス・ストリートのボス、ミゲル・トレビノがいた。
この町で一番金を持っていて、一番他人を不幸にしている男だ。
トレビノは自分の右隣に立っているボディガードの男に命令した。
「撃て!」
「し、しかし……」
「いいから、撃て!」
ボディガードは震えながら両手で拳銃を構えると、俺目掛けて引き金を引いた。
銃弾は俺の額に見事に命中したが、反射し、逆にボディガードの額を貫通した。
ボディガードの身体が糸の切れた操り人形のように崩れ落ちた。
「――やはり、拳銃を撃っても無駄か。一体、どういう仕組みなんだ?」
トレビノは理解しがたい物の正体を突き止めようとでもするような、好奇の眼差しで俺を見た。
「それを確認するために、部下に撃たせたのか。ひでぇヤツだな!」
俺は絨毯の上にザックを置くと、スーッと金属バットを取り出し、トレビノの正面に直立不動の姿勢で立った。
「覚悟しろ!」
「お前の力は分かった。わしの負けだ。認めよう」
トレビノは落ち着きはらい、悠然と構えている。
トレビノは机の上に置いてあるセンサーに手のひらをかざした。
すると、ピッという機械音がし、壁に一メートル四方の大きさの隠し扉が自動的に開いた。
扉の奥には山吹色に輝く金の延べ棒が山積みになっていた。
「その金塊を好きなだけやる。その代わり、わしの部下になれ!」
俺の唇から知らず知らずにヒューッと軽い口笛が漏れた。
俺はすっかり興奮して、隠し扉の前に飛んで行った。
隠し扉の奥はかなりの広さの部屋になったおり、金塊だけではなく、紙幣の束や宝石類が無造作に並べられていた。
壁一面に貸金庫のように小型のセーフティーボックスがずらりと並んでいる。
そして、部屋の奥には階上に続くらせん階段があり、どうやらここから屋上に避難出来るようになっているようだ。
「セラベラム?見つかったか?」
セラベラムは隠し部屋の中を縦横無尽に飛び回り、事前に俺が頼んでいた品物を探していた。
「まだです。時間を稼いでください」
トレビノはニヤニヤと下卑た笑いを浮かべ、隠し部屋の中をキョロキョロと見まわしている俺を見ている。
俺はトレビノの方を振り返って尋ねた。
「本当に、これを貰っていいのか?」
「いいとも!全部、お前のものだ!それぐらい、また、すぐに稼げるさ」
「その代わり、あんたの部下になるのか?」
「ただの部下ではない。わしの大切な右腕だ。お前の不思議な超能力を使えば、世界だって支配できるぞ!わしと一緒に、世界の王にならないか!」
「世界の半分を俺にくれるってか?さすがラスボスは言うことが違うぜ!」
「仲間になるんだな」
「ここで”YES”を選択したら、”GAME OVER”になっちまうぜ!」
「断るつもりか!?」
「見つけました、パパ!94番のセーフティーボックスです!」
「よし!偉いぞ!」
ビル全体が激動に見舞われ、今にも倒壊しそうな程に揺れ動いた。
非常扉の向こう側には、生きている者は一人としていないだろう。
階下の火災も広がっているようで、俺が今いる吹き抜けにまで白煙が充満している。
俺はもうもうと立ち込める白煙の中、再び階段を上っていった。
だが、イージスの盾が煙の微粒子を弾いてくれるおかげで、息苦しさはまったく感じなかった。
それどころが、さっきは息せき切って階段を上がったが、今は少しも呼吸が乱れていない。
セラベラムが俺の呼吸器や循環器の機能を適切に調節してくれているのだろう。
「急がないとこのビル全体が倒壊しそうだぜ。監視用ドローンの方は無事か?」
「最上階の様子をちゃんとモニターしています。ちょうど、ミゲル・トレビノが部下に脱出の準備をするように命令しているところです」
「どうやって脱出するつもりだ?」
「ちょっとお持ちください…………」
セラベラムが視線を宙に這わせて考えをめぐらすポーズをした。
「わかりました!屋上のヘリポートにヘリコプターが着陸しています」
「ヘリで逃げるつもりか!そうはさせるか!」
俺は煙で足元も見えなくなった階段を、一歩一歩足を運んで上がっていった。
最上階の十六階にまで上り、非常扉を押し開いて通路に出ると、間髪入れずに黒服のボディガード達が掴みかかってきた。
無論、誰も俺の身体に触れることはできない。
俺は少し頭を低くして、ボディガード達の間を巧みにすり抜け、通路を走って行った。
易々と、俺は精巧な彫刻がほどこされた巨大な両開きのドアの前にたどり着いた。
この扉の向こうに、フィフス・ストリートのボス、ミゲル・トレビノがいるのだ。
俺はザックから手榴弾を1個取り出すとピンを引き抜き、ドアノブに押し当てた。
俺の手の中で手榴弾が爆発し、ドアノブが吹き飛んだ。
背後でこの様子を見ていたボディガード達は、すっかり怖気づいてしまった。
手の中で手榴弾を爆発させて涼しい顔をしている化け物なんかに、誰も近づきたくはない。
俺は両手でドアを強く押し開いた。
足が沈みそうな真っ赤な絨毯が敷き詰められた部屋には、大理石でできたエグゼクティブデスクが一つ置いてあるだけだった。
壁一面に広がる防弾ガラスの向こう側には、俺が飛ばした監視用ドローンが飛行し、忠実にこの部屋の様子を撮影している。
そして、エグゼクティブデスクには、フィフス・ストリートのボス、ミゲル・トレビノがいた。
この町で一番金を持っていて、一番他人を不幸にしている男だ。
トレビノは自分の右隣に立っているボディガードの男に命令した。
「撃て!」
「し、しかし……」
「いいから、撃て!」
ボディガードは震えながら両手で拳銃を構えると、俺目掛けて引き金を引いた。
銃弾は俺の額に見事に命中したが、反射し、逆にボディガードの額を貫通した。
ボディガードの身体が糸の切れた操り人形のように崩れ落ちた。
「――やはり、拳銃を撃っても無駄か。一体、どういう仕組みなんだ?」
トレビノは理解しがたい物の正体を突き止めようとでもするような、好奇の眼差しで俺を見た。
「それを確認するために、部下に撃たせたのか。ひでぇヤツだな!」
俺は絨毯の上にザックを置くと、スーッと金属バットを取り出し、トレビノの正面に直立不動の姿勢で立った。
「覚悟しろ!」
「お前の力は分かった。わしの負けだ。認めよう」
トレビノは落ち着きはらい、悠然と構えている。
トレビノは机の上に置いてあるセンサーに手のひらをかざした。
すると、ピッという機械音がし、壁に一メートル四方の大きさの隠し扉が自動的に開いた。
扉の奥には山吹色に輝く金の延べ棒が山積みになっていた。
「その金塊を好きなだけやる。その代わり、わしの部下になれ!」
俺の唇から知らず知らずにヒューッと軽い口笛が漏れた。
俺はすっかり興奮して、隠し扉の前に飛んで行った。
隠し扉の奥はかなりの広さの部屋になったおり、金塊だけではなく、紙幣の束や宝石類が無造作に並べられていた。
壁一面に貸金庫のように小型のセーフティーボックスがずらりと並んでいる。
そして、部屋の奥には階上に続くらせん階段があり、どうやらここから屋上に避難出来るようになっているようだ。
「セラベラム?見つかったか?」
セラベラムは隠し部屋の中を縦横無尽に飛び回り、事前に俺が頼んでいた品物を探していた。
「まだです。時間を稼いでください」
トレビノはニヤニヤと下卑た笑いを浮かべ、隠し部屋の中をキョロキョロと見まわしている俺を見ている。
俺はトレビノの方を振り返って尋ねた。
「本当に、これを貰っていいのか?」
「いいとも!全部、お前のものだ!それぐらい、また、すぐに稼げるさ」
「その代わり、あんたの部下になるのか?」
「ただの部下ではない。わしの大切な右腕だ。お前の不思議な超能力を使えば、世界だって支配できるぞ!わしと一緒に、世界の王にならないか!」
「世界の半分を俺にくれるってか?さすがラスボスは言うことが違うぜ!」
「仲間になるんだな」
「ここで”YES”を選択したら、”GAME OVER”になっちまうぜ!」
「断るつもりか!?」
「見つけました、パパ!94番のセーフティーボックスです!」
「よし!偉いぞ!」
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