33 / 35
第5章「ジョニー、ブログを立ち上げる」
33
しおりを挟む
その時だった。
「パパをイジメるなあ!!」
純白の天使の翼を広げたセラベラムが、マンテル大尉の後方から弾丸のような勢いで突っ込んで来た。
「セラベラム!?」
セラベラムがマンテル大尉の後頭部に衝突した。
いや、違う!
セラベラムに見えた飛行物体は、俺が飛ばした監視用ドローンだった。
セラベラムがドローンを操縦し、マンテル大尉にぶつけてくれたのだ。
「なにいッ!?」
ガツンと後頭部に加わった衝撃で、マンテル大尉は思わず振り向いた。
今だ!
俺は両手でマンテル大尉の履くコンバットブーツに向かって飛びかかった。
「うわああッ!!」
マンテル大尉はバランスを狂わせ、足を滑らせた。
俺も真っ逆さまになって、今にも落ちそうになったが、間一髪、両足をスキッドに絡ませた。
マンテル大尉は叫び声を上げながら、破損したドローンと一緒になって背中から地表に向かって落下していった。
俺はスキッドに逆さにぶら下がったまま、マンテル大尉の姿が小さくなり、消えてゆくのを見入っていた。
やがて、俺は手を伸ばすと、ゼーゼー息を切らしながら、再びスキッドをしっかりと握りしめた。
「大丈夫ですか、パパ?」
「ああ………。ありがとう。セラベラム」
俺は詫びるように小さく頭を下げた。
セラベラムは少しはにかみながら、片えくぼを寄せて優しい笑顔を作り、俺に微笑みかけた。
「あわわわわわわッ!!」
トレビノが怯えた犬のような素っ頓狂な悲鳴を上げ、慌ててヘリのドアを閉じた。
俺はヘリコプターの胴体に取り付けられている金具を掴み、ふらつきながらスキッドの上に立った。
「ドアを開けやがれ!くそったれ!」
ヘリコプターのドアを俺は叩いたが、当然ドアは岩のように硬く閉っている。
「パパ。これからどうするのですか?もう、私達には何の武器もありません」
「武器ならちゃんとここにあるじゃねぇか!」
俺は自分の右の拳を握りしめ、見得を切った。
「力こぶもできない、その細く貧弱な腕が武器なのですか?」
「悪かったな!」
俺は機体尾部にある小さな回転翼、テールローターを指差した。
「こういったシングルローター式ヘリコプターの事故の大半が、あのテールローターの故障によるものなんだ」
「そうなんですか」
「ヘリコプターってのは、メインローターが回転して揚力を得ているが、同時に逆回転方向の反作用を受けるんだ。それをテールローターが反対方向の回転力を与えることで、機体が安定しているんだぜ」
「なるほど。テールローターが止まると、ヘリコプターは墜落するのですね」
「ああ。昔見た、日本のアニメでそう言ってたから確かだぞ」
「でも、どうやってテールローターを止めるのですか?」
「………………」
俺は視線を宙に這わせ、口を真一文字にして考え込んだ。
「――――また、ろくでもないことを考えていますね?」
セラベラムは探りを入れるような目つきで、無遠慮に俺の顔つきを物色した。
「考えてもしゃーない!行くぞ、セラベラム!」
「えっ!?まさかのノープラン!?」
俺は手を離し、後方に大きくジャンプをして、突風に身を任せた。
俺の身体はヘリコプターの尾部に横向きに取付けられたテールローターに向かって飛来した。
俺はアストロボーイのように拳を握りしめて右手を突出し、高速回転しているテールローターに全身で突っ込んで行った。
轟音をあげていたテールローターは破損し、プロペラがひしゃげた。
機体上部にあるメインローターの回転力が、ヘリコプターをクルクルと回転させ、到底操縦できる状態ではなくなった。
「あわわわわわわわわわわ!!」
俺は振り回されながらも、ヘリコプターの尾翼に必死に捕まった。
ヘリコプターは失速し、派手に機体を旋回しながら、見る見るうちに高度を下げていった。
革張りの座席に金塊と共に座っていたトレビノは、上下左右に転がりまわった。
金の延べ棒がトレビノの額を割り、噴き出した血が窓を染めた。
ヘリコプターは安定を失い、まるで木の葉が舞うように落下していく。
そして、フィフス・ストリートのボス、ミゲル・トレビノを乗せたヘリコプターは、くすんだ色のビルがゴチャゴチャと建ち並ぶ五番街に墜落したのだった。
「パパをイジメるなあ!!」
純白の天使の翼を広げたセラベラムが、マンテル大尉の後方から弾丸のような勢いで突っ込んで来た。
「セラベラム!?」
セラベラムがマンテル大尉の後頭部に衝突した。
いや、違う!
セラベラムに見えた飛行物体は、俺が飛ばした監視用ドローンだった。
セラベラムがドローンを操縦し、マンテル大尉にぶつけてくれたのだ。
「なにいッ!?」
ガツンと後頭部に加わった衝撃で、マンテル大尉は思わず振り向いた。
今だ!
俺は両手でマンテル大尉の履くコンバットブーツに向かって飛びかかった。
「うわああッ!!」
マンテル大尉はバランスを狂わせ、足を滑らせた。
俺も真っ逆さまになって、今にも落ちそうになったが、間一髪、両足をスキッドに絡ませた。
マンテル大尉は叫び声を上げながら、破損したドローンと一緒になって背中から地表に向かって落下していった。
俺はスキッドに逆さにぶら下がったまま、マンテル大尉の姿が小さくなり、消えてゆくのを見入っていた。
やがて、俺は手を伸ばすと、ゼーゼー息を切らしながら、再びスキッドをしっかりと握りしめた。
「大丈夫ですか、パパ?」
「ああ………。ありがとう。セラベラム」
俺は詫びるように小さく頭を下げた。
セラベラムは少しはにかみながら、片えくぼを寄せて優しい笑顔を作り、俺に微笑みかけた。
「あわわわわわわッ!!」
トレビノが怯えた犬のような素っ頓狂な悲鳴を上げ、慌ててヘリのドアを閉じた。
俺はヘリコプターの胴体に取り付けられている金具を掴み、ふらつきながらスキッドの上に立った。
「ドアを開けやがれ!くそったれ!」
ヘリコプターのドアを俺は叩いたが、当然ドアは岩のように硬く閉っている。
「パパ。これからどうするのですか?もう、私達には何の武器もありません」
「武器ならちゃんとここにあるじゃねぇか!」
俺は自分の右の拳を握りしめ、見得を切った。
「力こぶもできない、その細く貧弱な腕が武器なのですか?」
「悪かったな!」
俺は機体尾部にある小さな回転翼、テールローターを指差した。
「こういったシングルローター式ヘリコプターの事故の大半が、あのテールローターの故障によるものなんだ」
「そうなんですか」
「ヘリコプターってのは、メインローターが回転して揚力を得ているが、同時に逆回転方向の反作用を受けるんだ。それをテールローターが反対方向の回転力を与えることで、機体が安定しているんだぜ」
「なるほど。テールローターが止まると、ヘリコプターは墜落するのですね」
「ああ。昔見た、日本のアニメでそう言ってたから確かだぞ」
「でも、どうやってテールローターを止めるのですか?」
「………………」
俺は視線を宙に這わせ、口を真一文字にして考え込んだ。
「――――また、ろくでもないことを考えていますね?」
セラベラムは探りを入れるような目つきで、無遠慮に俺の顔つきを物色した。
「考えてもしゃーない!行くぞ、セラベラム!」
「えっ!?まさかのノープラン!?」
俺は手を離し、後方に大きくジャンプをして、突風に身を任せた。
俺の身体はヘリコプターの尾部に横向きに取付けられたテールローターに向かって飛来した。
俺はアストロボーイのように拳を握りしめて右手を突出し、高速回転しているテールローターに全身で突っ込んで行った。
轟音をあげていたテールローターは破損し、プロペラがひしゃげた。
機体上部にあるメインローターの回転力が、ヘリコプターをクルクルと回転させ、到底操縦できる状態ではなくなった。
「あわわわわわわわわわわ!!」
俺は振り回されながらも、ヘリコプターの尾翼に必死に捕まった。
ヘリコプターは失速し、派手に機体を旋回しながら、見る見るうちに高度を下げていった。
革張りの座席に金塊と共に座っていたトレビノは、上下左右に転がりまわった。
金の延べ棒がトレビノの額を割り、噴き出した血が窓を染めた。
ヘリコプターは安定を失い、まるで木の葉が舞うように落下していく。
そして、フィフス・ストリートのボス、ミゲル・トレビノを乗せたヘリコプターは、くすんだ色のビルがゴチャゴチャと建ち並ぶ五番街に墜落したのだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜
のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、
偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。
水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは――
古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。
村を立て直し、仲間と絆を築きながら、
やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。
辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、
静かに進む策略と復讐の物語。
日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-
ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。
1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。
わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。
だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。
これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。
希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。
※アルファポリス限定投稿
裏切りの代償
中岡 始
キャラ文芸
かつて夫と共に立ち上げたベンチャー企業「ネクサスラボ」。奏は結婚を機に経営の第一線を退き、専業主婦として家庭を支えてきた。しかし、平穏だった生活は夫・尚紀の裏切りによって一変する。彼の部下であり不倫相手の優美が、会社を混乱に陥れつつあったのだ。
尚紀の冷たい態度と優美の挑発に苦しむ中、奏は再び経営者としての力を取り戻す決意をする。裏切りの証拠を集め、かつての仲間や信頼できる協力者たちと連携しながら、会社を立て直すための計画を進める奏。だが、それは尚紀と優美の野望を徹底的に打ち砕く覚悟でもあった。
取締役会での対決、揺れる社内外の信頼、そして壊れた夫婦の絆の果てに待つのは――。
自分の誇りと未来を取り戻すため、すべてを賭けて挑む奏の闘い。復讐の果てに見える新たな希望と、繊細な人間ドラマが交錯する物語がここに。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる