婚約者を借りパクされました

朝山みどり

文字の大きさ
1 / 23

01 なんだかねぇ・・・もやっとする

しおりを挟む
「今晩の夜会はマイケルにクリスティーンのエスコートを頼んだから、レイは一人で行ってね」とお母様がわたしに言った。

「どうしてですか?マイケルはわたしの婚約者ですよ。当然わたしをエスコートします」とわたしは答えた。

「なに言ってるの?クリスティーンをエスコートなしで夜会に行かせるわけには行かないでしょ」

「エスコートならお父様もお兄様も出来ますよ」とわたしが言うと

「クリスティーンは身内のエスコートはいやだと言うの。他の令息に頼んであらぬ疑いをかけられるのも拙いでしょ。その点マイケルなら安心よ。妹の婚約者ですもの」とお母様が言った。

お母様の後ろでクリスティーンがまつげをパチパチさせている。

お母様はそれを見て

「クリスティーン。心配することないわ。あなたに恥をかかせたりしないわ。エスコートなしの、みじめな思いもさせないわ。レイもわかっているから」と言った。

わたしは諦めた。

姉のクリスティーンの婚約者。アレクサンダー・アミスト侯爵令息は先週帝国へ出発した。将来の国王を中心となって補佐する人材として勉強に行ったのだ。

別れに際してアレクサンダー様はうちの両親に婚約者のクリスティーンのことを頼んでいった。

「寂しい思いをさせますが、必ず成果をあげて参ります。よろしくお願いします」と頭を下げた。

それがどうしてマイケルがクリスティーンの面倒を見ることになるのか、理解できない。

でもマイケルもマイケルの両親のダグラス侯爵夫妻も、マイケルが婚約者のわたしではなく、クリスティーンのエスコートをすると決めたのだ。

お母様は今晩と言ったけど、今晩だけで終わらない。そんな予感がしていた。

わたしは、レイチャル・ブラウン。ブラウン伯爵の次女。わたしの家族は父のウィリアム。母のマーガレット。
兄、ギルバード。姉、クリスティーン。弟、バージルの六人家族。

わたしは家族のなかで一番影が薄い。我慢するのはわたし。わたしが我慢すればうまくいく。だけど家族はわたしが我慢していることも気付かない。そんな存在だ。

マイケルと言うのはわたしの婚約者。ダグラス侯爵の嫡男。わたしは学院を卒業して彼に嫁ぐのを心待ちにしている。

家族が大事にするのはクリスティーン。わたしの一つ上の姉だ。

わたしたちは十歳頃から体型も背の高さも同じになった。
そしてそれはわたしにとって不幸で、不運だった。

わたしたちがドレスを作る時、姉が気を使ってわたしの分も決めてくれる。一応、姉とわたしのドレスが届く。すると姉がこう言う。
「やっぱりこのドレスは素敵だわ。レイ。わたしがこっちを貰っていい?」
疑問形だが、命令形だ。拒否は出来ない。

姉がそれを来て出かけて戻ったら
「やっぱりレイの方が似合いそう。返すわね。そっち返してね」
だからわたしは新品を着たことがない。
「一度しか着てないのよ。どこが不満なの?」こう言われて諦めた。

学院の制服もわたしが入学するときに仕立てたものを二年生になる姉が着て、わたしは姉が一年着た制服を貰った。

婚約も似たような経過だった。

しおりを挟む
感想 34

あなたにおすすめの小説

【コミカライズ・取り下げ予定】契約通りに脇役を演じていましたが

曽根原ツタ
恋愛
公爵令嬢ロゼは、優秀な妹の引き立て役だった。周囲は妹ばかりを優先し、ロゼは妹の命令に従わされて辛い日々を過ごしていた。 そんなとき、大公から縁談を持ちかけられる。妹の引き立て役から解放されたロゼは、幸せになっていく。一方の妹は、破滅の道をたどっていき……? 脇役だと思っていたら妹と立場が逆転する話。

これでもう、『恥ずかしくない』だろう?

月白ヤトヒコ
恋愛
俺には、婚約者がいた。 俺の家は傍系ではあるが、王族の流れを汲むもの。相手は、現王室の決めた家の娘だそうだ。一人娘だというのに、俺の家に嫁入りするという。 婚約者は一人娘なのに後継に選ばれない不出来な娘なのだと解釈した。そして、そんな不出来な娘を俺の婚約者にした王室に腹が立った。 顔を見る度に、なぜこんな女が俺の婚約者なんだ……と思いつつ、一応婚約者なのだからとそれなりの対応をしてやっていた。 学園に入学して、俺はそこで彼女と出逢った。つい最近、貴族に引き取られたばかりの元平民の令嬢。 婚約者とは全然違う無邪気な笑顔。気安い態度、優しい言葉。そんな彼女に好意を抱いたのは、俺だけではなかったようで……今は友人だが、いずれ俺の側近になる予定の二人も彼女に好意を抱いているらしい。そして、婚約者の義弟も。 ある日、婚約者が彼女に絡んで来たので少し言い合いになった。 「こんな女が、義理とは言え姉だなんて僕は恥ずかしいですよっ! いい加減にしてくださいっ!!」 婚約者の義弟の言葉に同意した。 「全くだ。こんな女が婚約者だなんて、わたしも恥ずかしい。できるものなら、今すぐに婚約破棄してやりたい程に忌々しい」 それが、こんなことになるとは思わなかったんだ。俺達が、周囲からどう思われていたか…… それを思い知らされたとき、絶望した。 【だって、『恥ずかしい』のでしょう?】と、 【なにを言う。『恥ずかしい』のだろう?】の続編。元婚約者視点の話。 一応前の話を読んでなくても大丈夫……に、したつもりです。 設定はふわっと。

愛されヒロインの姉と、眼中外の妹のわたし

香月文香
恋愛
わが国の騎士団の精鋭二人が、治癒士の少女マリアンテを中心とする三角関係を作っているというのは、王宮では当然の常識だった。  治癒士、マリアンテ・リリベルは十八歳。容貌可憐な心優しい少女で、いつもにこやかな笑顔で周囲を癒す人気者。  そんな彼女を巡る男はヨシュア・カレンデュラとハル・シオニア。  二人とも騎士団の「双璧」と呼ばれる優秀な騎士で、ヨシュアは堅物、ハルは軽薄と気質は真逆だったが、女の好みは同じだった。  これは見目麗しい男女の三角関係の物語――ではなく。  そのかたわらで、誰の眼中にも入らない妹のわたしの物語だ。 ※他サイトにも投稿しています

妹が私の婚約者と結婚しちゃったもんだから、懲らしめたいの。いいでしょ?

百谷シカ
恋愛
「すまない、シビル。お前が目覚めるとは思わなかったんだ」 あのあと私は、一命を取り留めてから3週間寝ていたらしいのよ。 で、起きたらびっくり。妹のマーシアが私の婚約者と結婚してたの。 そんな話ある? 「我がフォレット家はもう結婚しかないんだ。わかってくれ、シビル」 たしかにうちは没落間近の田舎貴族よ。 あなたもウェイン伯爵令嬢だって打ち明けたら微妙な顔したわよね? でも、だからって、国のために頑張った私を死んだ事にして結婚する? 「君の妹と、君の婚約者がね」 「そう。薄情でしょう?」 「ああ、由々しき事態だ。私になにをしてほしい?」 「ソーンダイク伯領を落として欲しいの」 イヴォン伯爵令息モーリス・ヨーク。 あのとき私が助けてあげたその命、ぜひ私のために燃やしてちょうだい。 ==================== (他「エブリスタ」様に投稿)

【完結】失いかけた君にもう一度

暮田呉子
恋愛
偶然、振り払った手が婚約者の頬に当たってしまった。 叩くつもりはなかった。 しかし、謝ろうとした矢先、彼女は全てを捨てていなくなってしまった──。

【完結】わたしの欲しい言葉

彩華(あやはな)
恋愛
わたしはいらない子。 双子の妹は聖女。生まれた時から、両親は妹を可愛がった。 はじめての旅行でわたしは置いて行かれた。 わたしは・・・。 数年後、王太子と結婚した聖女たちの前に現れた帝国の使者。彼女は一足の靴を彼らの前にさしだしたー。 *ドロッとしています。 念のためティッシュをご用意ください。

妹に傷物と言いふらされ、父に勘当された伯爵令嬢は男子寮の寮母となる~そしたら上位貴族のイケメンに囲まれた!?~

サイコちゃん
恋愛
伯爵令嬢ヴィオレットは魔女の剣によって下腹部に傷を受けた。すると妹ルージュが“姉は子供を産めない体になった”と嘘を言いふらす。その所為でヴィオレットは婚約者から婚約破棄され、父からは娼館行きを言い渡される。あまりの仕打ちに父と妹の秘密を暴露すると、彼女は勘当されてしまう。そしてヴィオレットは母から託された古い屋敷へ行くのだが、そこで出会った美貌の双子からここを男子寮とするように頼まれる。寮母となったヴィオレットが上位貴族の令息達と暮らしていると、ルージュが現れてこう言った。「私のために家柄の良い美青年を集めて下さいましたのね、お姉様?」しかし令息達が性悪妹を歓迎するはずがなかった――

婚約破棄をしてきた婚約者と私を嵌めた妹、そして助けてくれなかった人達に断罪を。

しげむろ ゆうき
恋愛
卒業パーティーで私は婚約者の第一王太子殿下に婚約破棄を言い渡される。 全て妹と、私を追い落としたい貴族に嵌められた所為である。 しかも、王妃も父親も助けてはくれない。 だから、私は……。

処理中です...