一人暮らしのおばさん薬師を黒髪の青年は崇めたてる

朝山みどり

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13 王都のギルド長の語り

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その連絡が来たとき、ついに来たなと思った。

初心者の多いギルドを預かっているギルド長からの連絡だ。

ポーション屋が王宮に呼ばれて、付き添うことになった。万が一のときは逃げ込むからよろしくと言ったものだ。

おれは密かに王宮のまわりに見張りを置き、ギルド長が逃げてくれば保護するように手配した。

二人が王宮に入ってから十日過ぎてもなんの動きもなかった。

だが、ある夜、王宮に火の手があがった。王宮は完全に封鎖されたようで誰も出てこない。

乗り込むかと思った頃、人影がでてきた。幸いだれも気づかなかったようで、二つの人影は助け合いながら向かってくる。

おれの合図で見張りが近寄り二人を保護した。傷口からしたたる血が後を残さないよう、布でしばってあった。

馬車に乗せた二人をみると重傷は一人だけだ。

馬車に乗り込み椅子にすわると女が失礼とおれに声をかけると、傷を縛っていた布を解いた。

止まっていた血がまた出てくる。

「なにをする、これ以上の出血は命取りだ」というとギルド長が

「静かにしろ、まかせたんだ」とかすれた声で言った。

女は手のひらを傷口に向けると一度大きく息を吸うとゆっくり吐いていった。

光がでると傷口のまわりを覆った。それからゆっくりと腕が生えてきた。

聞こえるのは女が息を吸って吐く音だけ・・・・

やがて腕がもとに戻った。

「できるとは自分でも信じられない」と女がいうと

「ありがとう、ミーナ」

「こちらこそ、助けてもらってありがとうだわ」

それからふたりはおれの方を向くと

「挨拶がおそくなってすまない。無事、逃げられた。こちらはミーナ、ポーション屋だ」
「ミーナと申します。ありがとうございます」

「ご無事でなによりです。もうすぐ本部に着きますので部屋で休んで下さい」
「助かります」
「ありがたい」

やがて馬車が本部に着き、馬車ごと本部の建物にいれると二人を降ろした。

ミーナはすぐに部屋に案内して休んでもらった。

おれたちは少し話をした。っていうか、腕を生やすなんてどえらいものを見せられたあとでゆっくり寝るなんて、できないだろ!

その晩は囚われの美人ポーション屋をギルド長が救ったってことだが、ポーション屋がギルド長にポーションをお守りがわりにもっていろと渡していたらしい、そりゃポーション売ってるからそれくらいするよな・・・・でギルド長は城の護衛だ衛兵だとかと戦っているうちに右足の先を飛ばされたそうだ。
ないよりマシだとポーション飲んだら、足が生えたそうだ。それからまた戦って火の中をくぐってポーション屋の部屋に行ったそうだ。途中で天井が焼け落ちて、ひどい火傷をしたそうだがそれもポーションで直したそうだ。
そして無事にお姫様。じゃないポーション屋を助けて逃げる途中で、腕を飛ばしたそうだ。それからはおれが見た通りってことだ。

無くした腕を生やす。神話の世界の話だ。

今日は随分派手な夢をみたってことだな・・・っとおれがめずらしく頭を使っている間にギルド長寝ちまった。無理もないが・・・・

おれはそっと部屋をでると執務室へはいった。


翌日はおれが早くから仕事していると、ギルド長が朝から仕事をしてると事務員が騒いでうるさかった。

ふたりは、しばらくギルドで休養して、火事騒ぎが治まった頃戻っていった。

丁寧にお礼を言われて柄にもなくかしこまってしまった。あそこのギルドはみんな上品なのだろうか?

見学に行ってみたい気がする。


王宮でまた騒ぎがあったらしいが、詳しいことはわからないまま俺たち冒険者ギルドの日常は過ぎていく。そんなある日、ギルド長が訪ねてきた。

携えてきた箱にポーションが十本入っていた。

「これはミーナからのお礼だ。今作れる最高のポーションらしい。絶対に売り物にしないで欲しいそうだ。ただ、使い方は任せるそうだ。必要な時には惜しまずに。勿論、自分にも遠慮なく使ってくれと言っていた」

正直おれは、戸惑った。そんなしろものをおれに預けるなんて、あれはそんなもんを託されるやつじゃないと思った。

だが、ちょっとだけ、そのちょっとだけ効果をみたいと思っていた。

それ以来おれは、おれはポーションを一本、常に持ち歩くようになった。

そしておれはだんだん、こんな事を考えるようになった。

どこかで誰か怪我しないかな!そしたらこれを試せるのにって

こんなおれに罰がくだって、恐ろしいことが起きたのだ。

ある日、おれがギルド本部でぼけっとしているとき、ものすごい爆発音が聞こえたのだ。

おれはポーションを全部バッグに入れると、ギルドを飛び出した。

あの音の方向は錬金術をやってるあいつのうちだと思いそちらに急いだ。


人がなにかを囲んでいた。

「ビルさんが・・・」「皆を助けようと・・・・」「あの人がいなかったら・・」

ビルはおれの天敵だ。子供のころからいけ好かないやつでいつもおれを・・・

おれを見て人垣が崩れた・・・おれはそばに近づいた・・・

ビルはまだ生きていた・・・体がいろいろなくなり、ありえない方向に曲がった首と・・・ずる賢い目と・・

「おぉ最後におまえをみるなんて、ついてないや・・・もう助からないことはわかってる・・・首の骨が折れたのか?痛みがないから助かった・・・」

「ふん、これくらいで死ぬとは自分勝手だな・・・おまえのことだ・・・感動的な遺言なんて残しただろ」
おれは言いながらポーションを出すとあいつの口にねじ込んだ。

ぼろぼろで焼けただれた皮膚が綺麗になった。ついで体がもとに戻った。ただ、首の角度が変わらなかったので、もう一本口に当てた。

やつの喉がゆっくり動く。やがて首がもとに戻りあいつが不思議そうに起き上がると自分の体をみて手を動かし、おれをみて・・・おれたちは抱き合っていた。

なんでも、弟子が調合を間違えて爆発が起ころうとしたとき、あいつがその上に覆いかぶさったそうで、あいつの体が蓋になって被害があの程度で済んだそうだ。

確かにあいつの体は人体実験をやりすぎて人間要塞のようになっていたからな・・・・

あのポーションについてはギルドの倉庫からでてきたもので錬金術の材料になるかと思い、ちょうど持ってきたものだと説明した。

後日、あいつの奥方からお礼にとフルーツケーキが届けられた。

おれはそのうちの一斤を持つとポーションと一緒に温泉へいくと行って、旅行にでた。

初心者のギルドは若者であふれ活気に満ちていた。おれはギルド長に会うと、ポーションで大事な友を救えたことを話した、そしてこれを持っていると自分がとんでもないことになりそうでこわいから返すと言った。
ギルド長はうなづいて受け取ってくれた。フルーツケーキを渡してくれるよう頼むと引きうけてくれた。

せっかくだから温泉を楽しんで王都に戻った。

おみやげにここのギルドで売っているポーションを買った。
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