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15 相続 浮気相手目線
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あの相続の席に行く朝、わたしは鏡の前で何度も自分を見直した。
黒いワンピース。まとめた髪。
本家の跡取りの母の地位に相応しい、格好だ。
娘しか産めなかった本妻と違い、わたしは息子を産んだ。親戚も息子を跡取りと認めている。
その一点だけで、わたしは勝ったと思っていた。
「跡取りは男じゃないと」
「母親のあんたもしっかりしとるし」
葬儀の席で、みんなが挨拶に来た。喪主も親戚に押されて息子がやった。
だから、今日。
わたしはようやく正式な勝利を手にする。あの女は法律がとか、戸籍がとか、言ってるけど私が息子を産んだのは事実。それは揺るがない。
家、土地、財産、すべて息子のものになる。
わたしはその母親だ。本家はわたしのものだ。
本家のリビングは広く、やけに洋風で洒落ていた。
高そうなソファ。大きなテーブル。
その中央に、丁寧に手書きされた財産目録が置かれていた。
親戚がぎっしり集まっている。
誰もがわたしの息子を見てニコニコしていた。
本妻が、お茶を運んで来た。お茶請けにはお菓子もあるが、漬物、煮物。おにぎりを盛った皿もある。
こんな席なのに、こんなもてなしなの?親戚もあの人も当たり前の顔してる。
やがて、あの人は自分のマグカップを手に席についた。
「それでは、本家の相続について報告します。当主は息子が受け継ぎます」
彼女は静かに座り、目録を一枚ずつめくった。
「では、説明しますね」
(あんたに説明されたくない)
と心で毒づいたが、親戚が全員、彼女のほうを向いているので黙るしかなかった。
「まず、この家と土地、そして蔵の中身もですね。当たり前ですが……」
親戚の年長者がうなずいて言った。
「そうじゃのう。この家は息子が継ぐ。代々そうして来た」
「次に現金で三千万。相続税込みですが、渡します。まぁ息子の教育費を出していませんので」
「いい心がけだ。さすがだ」と一人が言うと、親戚一同がうなずいた。
でも、一人がわたしに向かって湯呑みをあげた。何お代わり?ってこと。
別の一人も湯呑みをあげた。
仕方ない、急須を持ってお茶を注いで回る。わたしが席に戻るのを待ってあの女が
「あと、わたしの嫁入り道具は持って行きます。確認お願いしますね」とわたしに向かって言った。
「あぁ、それがいい。わしたちはここで待っとるよ」
おにぎりに手を出しながら、笑顔で言われた。
古い畳の部屋に案内された。ちょっと高そうなタンスがあって、あの女が中から、黄色い布に包まれたのを出した。その中の紙の包み紙から着物を出していく。これは何々と色々言っているが、覚えきれない。全部にちゃんと実家の紋が入っているとか。それから子供の着物。お宮参りとかそんなの、娘の成人式。に娘の着物。嫁入り先に持って行ってないからここにあるけど、これは娘の物だから持っていくとか……それくらいはいいよ。
あとは鏡台とか、整理ダンスとか。
「明日、運び出します。立ち会いをお願いしますね」
と言われて、反射的にうなずいてしまった。
翌日、本家、ううん、わたしの家に行くと、美味しそうな匂いがしていた。
テーブルには、すでに煮物、漬物、お菓子におにぎり。今日は炊き込みご飯のおにぎりと、色々な具のおにぎりが並んで、湯呑みが用意してあった。
「お客さんが来るんですか?」
「そうね、引っ越しだから来ると思うわよ」
そう言うと、あの女は自分のマグカップにお茶を入れてソファに座った。
「ここも見納めね。ここはわたしが来た時は畳の部屋だったけど、膝が悪い親戚が増えてこんな風にしたのよ」とあの女が言ったけど、わたしは返事をしなかった。
「へーーこんな、器があるんですか?」と食器棚を見て言うと、
「あぁそれね。素敵でしょ。プリンを食べたりするのに使っていたのよ」と返事があった。
この足付きの器は、この部屋によく似合う。漬物だの煮物だの、嫌だな。
やがて、運送会社が来て、あの女の荷物を積み込んだ。あの女はエプロンを外してマグカップを包むと手提げに入れた。
運送会社のトラックを見送ると女は、門のところで頭を下げた。
「これで、嫁の役割は終わりました。お世話になりました。失礼します」
そして車に乗り込むと去って行った。
「じゃあ、ご本家さん、祝いでもするか?」と親戚は言うと家の中に入った。
わたしは、お茶を淹れたり、ビールと出したり、出前の寿司を頼んだり、ピザを頼んだり、親戚の奥さんもやって来たり孫も来たり……
「普段からこんなんじゃないのよ。今日はお祝いね」と誰かの奥さんがわたしの肩を叩いたが、笑う気力もなかった。
黒いワンピース。まとめた髪。
本家の跡取りの母の地位に相応しい、格好だ。
娘しか産めなかった本妻と違い、わたしは息子を産んだ。親戚も息子を跡取りと認めている。
その一点だけで、わたしは勝ったと思っていた。
「跡取りは男じゃないと」
「母親のあんたもしっかりしとるし」
葬儀の席で、みんなが挨拶に来た。喪主も親戚に押されて息子がやった。
だから、今日。
わたしはようやく正式な勝利を手にする。あの女は法律がとか、戸籍がとか、言ってるけど私が息子を産んだのは事実。それは揺るがない。
家、土地、財産、すべて息子のものになる。
わたしはその母親だ。本家はわたしのものだ。
本家のリビングは広く、やけに洋風で洒落ていた。
高そうなソファ。大きなテーブル。
その中央に、丁寧に手書きされた財産目録が置かれていた。
親戚がぎっしり集まっている。
誰もがわたしの息子を見てニコニコしていた。
本妻が、お茶を運んで来た。お茶請けにはお菓子もあるが、漬物、煮物。おにぎりを盛った皿もある。
こんな席なのに、こんなもてなしなの?親戚もあの人も当たり前の顔してる。
やがて、あの人は自分のマグカップを手に席についた。
「それでは、本家の相続について報告します。当主は息子が受け継ぎます」
彼女は静かに座り、目録を一枚ずつめくった。
「では、説明しますね」
(あんたに説明されたくない)
と心で毒づいたが、親戚が全員、彼女のほうを向いているので黙るしかなかった。
「まず、この家と土地、そして蔵の中身もですね。当たり前ですが……」
親戚の年長者がうなずいて言った。
「そうじゃのう。この家は息子が継ぐ。代々そうして来た」
「次に現金で三千万。相続税込みですが、渡します。まぁ息子の教育費を出していませんので」
「いい心がけだ。さすがだ」と一人が言うと、親戚一同がうなずいた。
でも、一人がわたしに向かって湯呑みをあげた。何お代わり?ってこと。
別の一人も湯呑みをあげた。
仕方ない、急須を持ってお茶を注いで回る。わたしが席に戻るのを待ってあの女が
「あと、わたしの嫁入り道具は持って行きます。確認お願いしますね」とわたしに向かって言った。
「あぁ、それがいい。わしたちはここで待っとるよ」
おにぎりに手を出しながら、笑顔で言われた。
古い畳の部屋に案内された。ちょっと高そうなタンスがあって、あの女が中から、黄色い布に包まれたのを出した。その中の紙の包み紙から着物を出していく。これは何々と色々言っているが、覚えきれない。全部にちゃんと実家の紋が入っているとか。それから子供の着物。お宮参りとかそんなの、娘の成人式。に娘の着物。嫁入り先に持って行ってないからここにあるけど、これは娘の物だから持っていくとか……それくらいはいいよ。
あとは鏡台とか、整理ダンスとか。
「明日、運び出します。立ち会いをお願いしますね」
と言われて、反射的にうなずいてしまった。
翌日、本家、ううん、わたしの家に行くと、美味しそうな匂いがしていた。
テーブルには、すでに煮物、漬物、お菓子におにぎり。今日は炊き込みご飯のおにぎりと、色々な具のおにぎりが並んで、湯呑みが用意してあった。
「お客さんが来るんですか?」
「そうね、引っ越しだから来ると思うわよ」
そう言うと、あの女は自分のマグカップにお茶を入れてソファに座った。
「ここも見納めね。ここはわたしが来た時は畳の部屋だったけど、膝が悪い親戚が増えてこんな風にしたのよ」とあの女が言ったけど、わたしは返事をしなかった。
「へーーこんな、器があるんですか?」と食器棚を見て言うと、
「あぁそれね。素敵でしょ。プリンを食べたりするのに使っていたのよ」と返事があった。
この足付きの器は、この部屋によく似合う。漬物だの煮物だの、嫌だな。
やがて、運送会社が来て、あの女の荷物を積み込んだ。あの女はエプロンを外してマグカップを包むと手提げに入れた。
運送会社のトラックを見送ると女は、門のところで頭を下げた。
「これで、嫁の役割は終わりました。お世話になりました。失礼します」
そして車に乗り込むと去って行った。
「じゃあ、ご本家さん、祝いでもするか?」と親戚は言うと家の中に入った。
わたしは、お茶を淹れたり、ビールと出したり、出前の寿司を頼んだり、ピザを頼んだり、親戚の奥さんもやって来たり孫も来たり……
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