神子の余分

朝山みどり

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14 伏し目がちの冒険者 フェルナンド目線

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一年のぶりにこの町に戻って来た。ここは国で二番目の町で冒険者も多く、とてもいごこちのいい町だ。


ギルドに行くと、顔なじみの冒険者たちに囲まれた。

「フェルナンドさんだ」「お久しぶりです」「戻ったんですね」「あっフェルナンドさん」

「戻って来た。またよろしくな」と俺は返した。

一年経つと成長しているのがわかる。ひょろひょろの少年ががっちり、しっかりした体つきになり、顔の輪郭も引き締まっている。

俺の視界の端になにか輝くものが写った。そこにいたのは男だった。茶色の髪に茶色の目、少しおおきめのマントを羽織っていた。なにかが光の加減で光ったのだろう。そう思って冒険者たちと話を続けたが、その男をつい目で追ってしまった。

男は俺を気にすることなくギルドを出て行った。


翌朝、その男を見かけた。薬草採取の依頼を受けていたが、そこに赤毛の男が寄って行って、話しかけていた。


「なぁルーク。そんなしょぼい依頼なんかやめて俺たちと一緒に行こう。魔法士でソロなんて無理だろ。俺たちが守ってやるよ」

「僕は守ってもらうような所には行かないよ。薬草を取るのが好きなんだ」

「俺たちが守って奥へ行けば、もっと薬草が取れるだろう。ついでも狩りするから手伝ってくれ」

「いや、俺は一人が好きだから」

「いやぁ、実力を生かさないのはもったいない」と赤毛が目で他の男に合図すると男が四人でルークと呼ばれた男を取り囲んで歩き出した。

「仕方ない、今日だけだぞ。それから薬草は必ずとるからな」とルークが言いながら歩いて行った。

よく見るとルークの髪は金茶色、瞳は黒に近い茶色だ。あの目に自分が写る所をみたい・・・はっとした何を考えてるんだ。俺とした事が・・・・だが・・・気づいたら、彼らの後を追っていた。


赤毛の男はルークのそばを歩きながら、いろいろ話しかけている。やがて一行は森のなかへ入って行った。

ルークが赤毛の男や他の男に注意していた。


「ここからは魔獣が出るから静かにしてくれ、無駄に戦いたくない」

「相変わらず慎重だね、ルークは」と赤毛が言うとルークは

「怖がりだからだよ」と答えた。ただ、それから彼らは黙って歩いて行った。

「待って」と言うとルークは薬草を摘んでいた。一応、他のやつらも薬草を摘んでいるようだ。

しばらくするとルークが

「待たせてすまなかった充分だ」と言うと一行はまた歩き出した。しばらくするとルークが立ち止まり

「三頭向かって来ている」と言った。

ルークはすっと後ろに下がり、赤毛ともうひとりが剣を抜いた。ひとりはルークと並んで弓を構えた。

一人は少し脇により盾を持って備えた。


するとルークが指し示した方向から、角狼が走ってきた。すぐさま盾を構えた男が、盾を叩いて角狼を引きつけた。

っと一番前の一頭がもんどりうって倒れた。前足がまとめて拘束されている。そこに後ろの二頭がぶつかって三頭とも転がった。

そこに剣を持った二人が斬りかかった。一頭は起き上がると盾に向かって突進したが、盾を持った男はがっちり受け止めた。

その角狼に弓を持っていた男が、剣を抜いて斬りかかったが、すこし危ない。だが、赤毛が加勢にはいり無事仕留めた。

ルークは一応剣を抜いていたが、使うことはなかった。一行は角狼の毛皮を剥ぎ、魔石を取り出した。

手を洗いながら、

「ルーク。さすがだな。この水、ありがたいよ。だけど俺たちがいて良かっただろう」と盾を持った男が言った。

「そうだよ、俺たち息が合ってるよな」と赤毛が、ルークの肩を抱いた。



その後彼らは、薬草を摘み、双角狼を討伐していた。この時もルークは三頭が来ることを予告した。

毛皮と肉を取っているが、ルークがちょっと青い顔になっている。


ここで彼らは少し休憩すると帰り始めた。

俺は見つからないように脇道に潜んだが、ルークが足を止めじっと俺のほうを見てきた。

「どうした?なにか来そうか?」

「うん、気配がしたような気がしたけど・・・気のせいかな」

「ルークの怖がりがでたんだな」

「俺たちといれば安心だぞ」と赤毛の男は冗談めかしてルークの手を取った。

「やめろよ。エスコートはいらないよ」とルークが言うと赤毛はあっさり手を離すと

「よし、最後まで気を抜かずに帰るぞ」と言うとルークに向かってにっと笑った。

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