神子の余分

朝山みどり

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17 ルークの不思議 フェルナンド目線

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俺は邪魔をされるのに慣れると邪魔だと思わなくなると言う理論の元、ルークをかまった。

「ルーク、俺も薬草図鑑を見て少し勉強した。これは、見惚れ草だね。おや、角兎が来る。すぐに始末するから採集を続けてくれ」

ルークが困った顔をするが、かまわない。

「角兎を解体するから採集をしていてくれ。今度これをご馳走するよ。うちに来てくれ」

ルークは聞こえない振りをしているが、薬草をとる手が少し乱れている。いや正確に言うと魔法が乱れている。

「移動します」と小さい声で言うとルークは歩き出した。

俺はあわててついて行った。

「このあたりに魔獣はいないようだ」とルークの目をしっかり見て言った。


途中、角兎、深森猪と倒した。それも解体したが、ルークが深森猪を解体した。それからも採集を続け、

「フェルナンドさん、終わりました。帰りましょう」とルークが言うと、

「飲み物でもどうだ」と蓋をねじ切りながら果実水を渡すと、受け取り

「ありがとう、いただきます」と素直に飲んで

「おいしいですね」と笑ってくれた。


翌日も護衛をしたが今日は、ギルドに薬草を収めてさっさと帰ろうとするルークを引き止めた。

「約束通り、肉をご馳走する」

「約束なんてしてませんよ」とルークが迷惑そうに答える。

「水臭いこというなよな。俺とルークの仲だろ」

「護衛と薬草取りの仲ですよ」

などと話しながら俺はルークの肩をがっちりとつかみ、待たせていた馬車に押し込んだ。

ルークも諦めたようでため息をつくと

「ご馳走してくれるのは嬉しい。世話になる」

「水臭い、一緒に飯を食うのは仲良しって事だ」

そう言うとルークは笑った。



「すごい家だな」と馬車を降りながらルークが言うのを

「冒険者で儲けている」と答えた。


ふっとなにやら気配がしたが、振り向かずに耐えた。

ルークの靴の泥汚れとローブのほこりがきれいになっていた。こっそり浄化したのか?



食堂に案内すると食卓を見て

「おぉ結婚式みたいだ」と喜んだ。

けっこんしき?結婚式って???これだけのナイフとファークを使う程の物を食う結婚式ってなに?

戸惑うことなく外側からナイフとファークを取って使っているし、マナーも綺麗だ。この国の正式なマナーではないが、どこかの国の貴族なのか?

驚くことは他にもあった。胡椒がかかったソースを見て

「あぁ胡椒の香りがいいな。挽きたてって事?すごいな」とか

知ってるお前がすごいんだよ。わかるお前がすごいんだよ。

食後にコーヒーを出すと

「おぉコーヒーは久しぶりだ。この辺はお茶だもんな」とか

コーヒーを知ってるってどういうことだ?


食後、泊まるように勧めたが、残念ながらルークは帰って行った。







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