神子の余分

朝山みどり

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06 王宮の雑用係が仲間を囲んでいた。

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神官見習いからの直接の暴力でオオヤナギは神殿から逃げ出す決心を固めた。

前から逃げる事を考えていたが、無一文で逃げる勇気はなかった。それが給金がでるようになったのだ。

お金を安全に隠す場所をいうことで空間収納を考えた。

治癒が使えるようになった以上収納も大丈夫のはずだと・・・・イメージを固めていった。


召喚のときのマンホール。あれが魔法陣だったといまでは知っているが、あのマンホールを腰の横に思い浮かべた。

自分を吸い込んだホール。庭で拾って来た石をそのホールに吸い込ませる。何度やっても吸い込まないが、根気よく続けた。

合間に柔軟をやる。ピアノを弾くように指を動かす。ギクシャクする体を使いこなす為だ。

寝るときも魔力のかたまりを動かしながら、石を吸い込ませる・・・・羊のかわりに石を吸い込ませながら寝ようとしたら・・・・吸い込まれた。はっと目が覚めた。ホールの前に手をおくと石があるのがわかった。取り出そうとしたら取り出せた。

もう一度吸い込ませた。取り出す。これをなんどか繰り返した。最後に吸い込ませてから眠りについた。




目が覚めた。すぐにホールに手をやると石が入っていた。魔力が減った感じもしない。

一度石を取り出して正面にホールがあるつもりで石を持っていくと吸い込んだ。床にあるつもりで落としても吸い込まれた。

想像してたより、空間収納は使いやすい。

これで給金を常に持ち歩ける。神殿をでる日は確実に近づいた。





さて、今日も歩かされていると、

「しっかりしろ、ビル、冷やすと楽になる。すぐ水が来るからな」と声がした。

オオヤナギが行ってみると王宮の雑用係が仲間を囲んでいた。

「どうしましたか?」とオオヤナギは声をかけた。

「足を痛めて」と一人が答えると

「見せて」と言うとオオヤナギは場所を変わった。

足首が腫れ上がっていた。

「内緒ですよ」と言うとオオヤナギは足に軽く触れると魔力を軽く流した。

「まだ、この程度しかできませんが、痛みはとれたと思います。無理しないで」そして人差し指を唇にあてて、

「内緒」と言った。




去っていくオオヤナギを見て彼らは

「誰?」

「知らね」

「けど助かった。やっぱ神殿で働くやつらはすごい」

「無理するなとか無理だね。さっ仕事」とビルは、立ち上がった。



今日は魔法士の訓練場で水を出しては落としてしまうミツルギを見ながら、魔力を動かしていたが

「お前がいると神子が集中できない。下がれ」とハロルド王子がオオヤナギに罵声を浴びせた。

「かしこまりました」

「今から神殿の広間の掃除でもしてろ」と王子が続けて言うのを受けてオオヤナギはブラウン神官を見た。

「仰せのごとくに」と言うとブラウン神官は、あごで神殿の方をさした。


黙って頭を下げるとオオヤナギは歩き出したが

「ハロルド・・・・僕が・・・・怖がりで・・・」と声でみるとミツルギが抱きしめられてうったえる姿が目にはいった。


自分の媚びた笑顔をみてもなんともおもわなくなった。

今はこの体が自分の体だ。大分、自由に使えるようになった。鏡を見ても驚かなくなった。



だが、前の世界のくせが戻ってきてしまった。できるだけ体を縮めて下を向いて歩く事だ。目立たないようにやっていた事だ。大学に入ってから、一生懸命なくした、くせだ。



すると前に助けた雑用係たちが通りかかった。

「あっあの」と声をかけられた。

「ああ、あれからどうでした?」とオオヤナギが言うと

「治りました。全然大丈夫」

「お礼をしたいと思って」

「内緒だから」いやいやと手を振ると

「えっと内緒のお礼・・・・」

「あの・・・外に出たりする?」

「うん、休みの日はいつもなにしてるの?」と三人が口々言うので、

「そしたら、町を案内して貰っていい?行ったことがなくて」とオオヤナギが言うと、

三人は顔を見合わせていたが、うなずきあうと

「いいよ、お安いご用だ。休みはいつだ?」

「合わせる」とオオヤナギが答えると

「明後日だ。九時に門の外にいる。隠れているから外に出たら動かずじっとしてて」

「わかった。よろしく」とオオヤナギはにっこり笑って答えた。


彼らは一度振り返ると笑って手を振って、去って行った。
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