神子の余分

朝山みどり

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12 魔獣との戦い

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スピードをあげて走っていた馬車が止まった。

戦闘はやや離れた所で行われている。ルークは板を少しずらして外をみた。確か迷彩狼。四人で戦うには数が多い。

ルークは手伝う事にした。恐怖を殺して外に出た。残った乗客にもう一度かんぬきをかけるように言った。

数が多くて大盾のサミーに敵を集める事ができない状態をみて取ったルークは、サミーの後ろに立つと石をできるだけ迷彩狼をねらって打った。

対して当たらないが迷彩狼がサミーを目掛けてやって来た。二十メートルまでくれば口のなかに水を発生させられる。

いきなり口のなかに水が出来たらびっくりするし、気管にも入るだろうし、迷彩狼の動きがおかしくなった、そこをデイビーとクロスが切り捨てて行った。


切られた迷彩狼の断末魔の叫びと、血の匂い。ルークは耐えられなかった。馬車に戻ろうとしたけど、地面に四つん這いになって吐いた。

デイビーが背中をさすってくれたが、ルークは胃がからになるまで吐いた。

イジュが来て、清浄で汚れた服や顔をきれいにしてくれた。

デイビーの手を借りて馬車に戻ったが、ルークは崩れるように座席に座った。

乗客の一人が、コップについだ水を手渡してくれた。ルークはそれを飲んで小さくお礼を言うと、目を閉じた。


ふっと目が覚めた。

「目が覚めた?」と声が・・・・イジュだ。

「あぁ、寝てたのか」とルークが答えると

「ああいうのは初めて?」

「うん、参った」と答えると

「自然と平気になるさ」とデイビーが慰めるように言うと

「そうゆうもんだ」とサミーが続けた。

「そうなんですね」とルークは手をぐんと伸ばしながら言った。

「もうすぐ町だ。ゆっくり休むといい」とデイビーが言った。



ルークは宿でサミーたちが死んだ迷彩狼から、魔石をとっていた光景を思い出していた。

魔石を取り出すと魔獣の体が消えて行くのだ。毛皮が欲しければ先に毛皮を、肉が欲しければ肉をとり最後に魔石を取ればいいということだ。

小説なんかの設定とは少し違うが、この世界はこういうものらしい。

四人とも普通に魔石を取り出していた。この世界で生きていくと決めたのだ。克服すると決心したが、神殿はその点よかったとちょっと後悔した。

魔石を売った代金を分けてもらった、ルークは目的地である南の国へ行く目処が立った。

終点で四人と別れたが、南への馬車は来週だというので、ギルドで依頼を受けてみる事にした。



初心者らしく薬草を探して、ルークは森に向かった。


キョロキョロしながら、歩いていると、なにやら、叫び声が聞こえた。急いで向かうと森猫と子供が戦っている。というより逃げようとしているが、逃げられないと言った感じだった。



「伏せろ」とルークが大声を出すと子供三人は従った。

最初、石を出して森猫の注意をこちらに引くと、向かって来た森猫の口に水を出す。

わけがわからず混乱する森猫に子供たちもびっくりしているが

「倒せ」の声に剣で斬りかかって行く。ルークは最後に自分に向かって来た森猫に剣を向けたが、結局子供が斬って倒した。

「ありがとう、お兄さん」と三人にお礼を言われて

「どういたしまして、この魔獣は魔石以外使い道ある?」

「あるよ、毛皮。肉は臭いから誰も食べない」

「じゃあ毛皮の取り方を教えて」


ルークは三人に教わりながら、吐き気をこらえて毛皮を剥ぎ取った。それから魔石を抜くと森猫は消えて行った。

水を出して、自分も三人も手を洗うと


「お兄さんは水かぁ・・・それだけ出せるといいよね」

「僕も水だけど、やっとコップに一杯くらい」と一人が少しがっかりした顔で言うのを受けて

「この辺になにかあるって感じる?」とおへそのしたを指した。

「わからない・・・・」

「こんな所じゃわからないか。ベッドに入った時、探してごらん。見つかったらそれを右とか左に動かしてみて」

「そしたら、どうなる?」

「水の量が増えるかも知れない」とルークが笑って答えると

「知れないかぁ・・・・寝るときは暇だからやってみるか」と答えた少年に、毛皮と魔石を渡しながら

「これは君たちのだ」と言うと

「いいの?・・・ほんとに?」

「うん、僕は薬草をとるからね」と答え


「もう少し奥に行くからここでお別れだ。気をつけて」と言うとさっと奥に向かった。


三人はルークの後ろ姿を見ながら

「あの人、強いのか弱いのかわからないね

「とりあえず、いい人だ」

「違いない」と笑いあった。



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