神子の余分

朝山みどり

文字の大きさ
33 / 39

30 ミツルギの治療

しおりを挟む
どうしてもルークがヘタレで話が進みませんでした。やっとルークが歩き出してくれました。


◇◇◇◇◇◇
フェルナンドへ差し入れのことを相談して、厨房に頼むことにした。

お腹が減ってる若いのに差し入れると言うと
「要は騎士に食わせるようなやつですね。肉をたくさん用意しますよ」と引き受けてくれた。

それから彼らが嫌じゃなかったら、連れて帰りたいと言うと、フェルナンドは少し考えたが

「それくらいなら、どこでも仕事はあるし、勉強したいなら援助するし、剣を使えるようになりたいなら教える。ルークの恩人は俺の恩人だからな、出来るだけのことをしたい」と頼もしく答えてくれた。

そこに隊長からの使いが来て、僕たちは会いに行った。

「この国の瘴気なんだが、最初に聞いたよりの酷い状態になっているようだ。ルークの安全」

「行きますよ。国民には罪がないですよ」と被せて答えた。油断しているとフェルナンドが危ない所には行かせないなんて言い出すから先に言い切った。
あれ?二人とも・・・呆れちゃった?

「国民というのか?」「国民!」と二人がお互いに顔を見合わせている。なんだ?変なことを言った?

「そうだな。国の民だ。国民だ。平民と言うより優しい。慈悲に溢れている。やはり神子様なんだな」
「そうだな、フェルナンド。神子様だ」

「それで神子様、危ない所は」と隊長が言いかけたのを
「頼もしい、皆様と一緒だと」と笑うと、もう一度二人は顔を見合わせて

「そうだな、守ればいいんだ」と隊長は言うと
「訓練しておくか」と立ち上がった。

「ミツルギの腕の治療をやりに行きます」と僕はフェルナンドに言った。

ミツルギの部屋にはハロルド王子が来ていたが、二人の間の空気はなぜか冷たい。何故だ?

「オオヤナギ。お前が神子だと言うのは本当か?」

いきなり、そう話しかけられた。なんかムカつく。

「はい、アガペーナ王国ではそうですね」とはっきり答えた。
「何故、逃げ出したのか?」
「殺されそうになったからですよ」
「あれはお前が・・・」
「うるさいですよ。この国の神子を治療しにきたんですけど、邪魔するならやめますが・・・大体、その程度自分で治療すればいいんですよ。どうしますか?」
「く・・・オオヤナギ!生意気な」とミツルギが言いかけたが、ハッと気づいて黙った。

そこをフェルナンドが、後ろに周り、両腕を押さえた。
「これでいいか?」
「はい、大丈夫です」と言いながら治療を始めた。
切れた腱が固く縮んでいた。伸ばして繋いだ。痛がっているが無視して続けた。今回はこのために押さえつけて貰ったのだ。

痛くて暴れられたら面倒だから・・・

「はい、終わり」と言ってフェルナンドを見たら、ニッと笑いが返って来て、ミツルギを離した。

「では、これで」とハロルド王子に言って部屋を出ようとしたらミツルギが言い出した。

「おい、顔を返せ。全部、俺のものじゃないか。その顔も体も。かっこいいだろう。どうだ?抱いたのか?よかっただろう?俺だ」
「何を言ってるんだ」とハロルド王子がミツルギの顔を覗き込む。

「全部、聞かせてやるよ。たっぷりとな」とミツルギがソファにどっかりと座った。

しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

もう一度、その腕に

結衣可
BL
もう一度、その腕に

禁書庫の管理人は次期宰相様のお気に入り

結衣可
BL
オルフェリス王国の王立図書館で、禁書庫を預かる司書カミル・ローレンは、過去の傷を抱え、静かな孤独の中で生きていた。 そこへ次期宰相と目される若き貴族、セドリック・ヴァレンティスが訪れ、知識を求める名目で彼のもとに通い始める。 冷静で無表情なカミルに興味を惹かれたセドリックは、やがて彼の心の奥にある痛みに気づいていく。 愛されることへの恐れに縛られていたカミルは、彼の真っ直ぐな想いに少しずつ心を開き、初めて“痛みではない愛”を知る。 禁書庫という静寂の中で、カミルの孤独を、過去を癒し、共に歩む未来を誓う。

君に望むは僕の弔辞

爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。 全9話 匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意 表紙はあいえだ様!! 小説家になろうにも投稿

【完結】Restartー僕は異世界で人生をやり直すー

エウラ
BL
───僕の人生、最悪だった。 生まれた家は名家で資産家。でも跡取りが僕だけだったから厳しく育てられ、教育係という名の監視がついて一日中気が休まることはない。 それでも唯々諾々と家のために従った。 そんなある日、母が病気で亡くなって直ぐに父が後妻と子供を連れて来た。僕より一つ下の少年だった。 父はその子を跡取りに決め、僕は捨てられた。 ヤケになって家を飛び出した先に知らない森が見えて・・・。 僕はこの世界で人生を再始動(リスタート)する事にした。 不定期更新です。 以前少し投稿したものを設定変更しました。 ジャンルを恋愛からBLに変更しました。 また後で変更とかあるかも。 完結しました。

グラジオラスを捧ぐ

斯波良久@出来損ないΩの猫獣人発売中
BL
憧れの騎士、アレックスと恋人のような関係になれたリヒターは浮かれていた。まさか彼に本命の相手がいるとも知らずに……。

帰宅

pAp1Ko
BL
遊んでばかりいた養子の長男と実子の双子の次男たち。 双子を庇い、拐われた長男のその後のおはなし。 書きたいところだけ書いた。作者が読みたいだけです。

婚約破棄させた愛し合う2人にザマァされた俺。とその後

結人
BL
王太子妃になるために頑張ってた公爵家の三男アランが愛する2人の愛でザマァされ…溺愛される話。 ※男しかいない世界で男同士でも結婚できます。子供はなんかしたら作ることができます。きっと…。 全5話完結。予約更新します。

処理中です...