わたしの運命の相手は輪廻を超えて会いに来てくれた。忘れていたけど覚えていた。

朝山みどり

文字の大きさ
18 / 31

18 マダム・ボーテ・メルバ

しおりを挟む
公爵は急ぎで馬車を作らせている。
レベッカ専用だ。レベッカはリチャードに宣言した通り徒歩で学院に行こうとしたが、リチャードが必死で止めた。
すぐに専用の馬車を用意する。とりあえず今日は馬車で行ってくれ、帰りもレベッカを待つからと約束して、やっとレベッカは馬車に乗ってくれた。

さて、アグネス・バードはサマンサ・メイフォードと話していた。

そして、Eクラスの授業時間を他のクラスに回していたと話した。

何故そんなことをと言う問いに、アグネスは

「だって、魔力が少ない連中に教えるって面倒だし面白くないし・・・その点Aクラスは優秀だから教えやすい。楽だったから」と答えた。

「道理でね。Eクラスの力が落ちていたのはアグネス。あなたが原因だったってことね」とサマンサはため息をついた。

「アグネス、あなたの魔法の実力ではわからないだろうけど、Aクラスの上級生の力が伸びないのよ。年々ひどくなってるの。その理由が今、わかったわ」

「なによ。それもわたしのせいなの?」

「そうよ。不思議なんだけどね。上は下から押し上げられて伸びるの。下が弱いと上が上がらないのよ。だからEクラスをしっかり教育して土台になって貰わないといけないのよ。あなたのやったことは国力を落とすことよ。

下手すれば一族全員が反逆罪に問われるわ」とメイフォードが威圧を込めて言うと、アグネスは顔色を悪くして

「サマンサ様、わたくしはどうすればいいでしょうか?」と小さな声で言った。
「残りの学期、Eクラスを伸ばすことね。先ず、しっかり謝ってねEクラスに」
アグネスは涙ぐみながら頷いた。

レベッカの学院生活が軌道に乗った。専用の馬車で登校する。何故か急に授業をするようになったトニク先生の授業中は授業を無視して、読書、自習をする。魔法の実技の時間は教師のアグネス・バードをじっと見つめて、時折頷いたり、首を傾げたりする。

その度ごとに、アグネスは挙動不審になるが、必死に授業をすすめた。

生徒たちの魔法技術は問題なく伸びていった。

マルチネス王室と教会から、ある知らせが、このアルゴス王国に届いた。

「天使様が他の国を見たいと、再度降臨なさっている。今回は周辺の国を視察したいとのご希望なので、使節団として訪問する」と言ったものだ。

詳細は追って連絡とあったが、王室。教会。共に歓迎の準備を始めた。

ブルークリフ家はさっそく、マダム・ボーテ・メルバを呼んで、ドレスを三人分頼んだ。
マダムはベテランの助手と新人の採寸係を連れてやって来た。

その新人は
「あぁ、こちらがレベッカ・・・様ですか」と思わず口走り「ふっ」と笑いを漏らした。
それを誤魔化す為に
「なんでもご病弱だったとか・・・今はお元気だとか」とか喋りだした。

レベッカはにこやかに笑い
「まぁ場を誤魔化す・・・じゃなく和ませる方ですね」と採寸されながら言った。

採寸係はなんとなく手が重いような気がして来たが、気のせいだと採寸を続けた。

口を開く余裕がなくなったが、本人はそれに気がつかなかった。

無言のまま、公爵夫人とステラの採寸を終えると、採寸係はマダムの助手から小声で叱られ部屋の隅に追いやられた。
「なにもしなくていいから、そこにいて」と言う指示は『役立たず』の意味だった。
本来なら、気を聞かせて似合いそうな生地を先回りして持って来る、実力をみせるいい機会だったのだが・・・体が重くてなにも出来なかった。

公爵夫人は先ずレベッカに声をかけた。
「レベッカ、マダムのおすすめはこれですって。どう思う?」と一枚用意された生地を見せた。
「わからないのでお任せします」
「そう言わないで! よく見てこの色はあなたの肌によく映るわ」と夫人が言うとステラが
「これは、それでいいんじゃない?わたしに似合うのを持って来て」と言った。
「ステラ様には、このあたりがお似合いだと」とマダムは満面の笑みで助手を招いた。
助手の手には生地が五枚ほど乗っていた。
「どれもお似合いですし、着こなされますので出来るだけ用意して参りました」と三人がかりで生地を広げてステラの肩にかけたり顔の横に持って来て、公爵夫人に見せたりした。
「では、わたしはこれで」と言うとレベッカはドアを念動で開けた。
少し宙に浮いて滑って移動して部屋から出た。風もないのに髪が靡いた。

音を立ててドアが閉まった。今、見たものを誰も信じなかった。夫人は自分の勘違いだと思った。マダムは、この屋敷にかけられた巧みな魔法だと思った。正解だが、間違った認識だ。
ステラは気がつかなかった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

婚約破棄から50年後

あんど もあ
ファンタジー
王立学園の卒業パーティーで、王子が婚約者に婚約破棄を宣言した。王子は真に愛する女性と結ばれ、めでたしめでたし。 そして50年後、王子の孫の王子は、婚約破棄された女性の孫と婚約する事に。そこで明かされた婚約破棄の真実とは。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

あなたなんて大嫌い

みおな
恋愛
 私の婚約者の侯爵子息は、義妹のことばかり優先して、私はいつも我慢ばかり強いられていました。  そんなある日、彼が幼馴染だと言い張る伯爵令嬢を抱きしめて愛を囁いているのを聞いてしまいます。  そうですか。 私の婚約者は、私以外の人ばかりが大切なのですね。  私はあなたのお財布ではありません。 あなたなんて大嫌い。

はっきり言ってカケラも興味はございません

みおな
恋愛
 私の婚約者様は、王女殿下の騎士をしている。  病弱でお美しい王女殿下に常に付き従い、婚約者としての交流も、マトモにしたことがない。  まぁ、好きになさればよろしいわ。 私には関係ないことですから。

完結 冗談で済ますつもりでしょうが、そうはいきません。

音爽(ネソウ)
恋愛
王子の幼馴染はいつもわがまま放題。それを放置する。 結婚式でもやらかして私の挙式はメチャクチャに 「ほんの冗談さ」と王子は軽くあしらうが、そこに一人の男性が現れて……

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

私のことはお気になさらず

みおな
恋愛
 侯爵令嬢のティアは、婚約者である公爵家の嫡男ケレスが幼馴染である伯爵令嬢と今日も仲睦まじくしているのを見て決意した。  そんなに彼女が好きなのなら、お二人が婚約すればよろしいのよ。  私のことはお気になさらず。

願いの代償

らがまふぃん
恋愛
誰も彼もが軽視する。婚約者に家族までも。 公爵家に生まれ、王太子の婚約者となっても、誰からも認められることのないメルナーゼ・カーマイン。 唐突に思う。 どうして頑張っているのか。 どうして生きていたいのか。 もう、いいのではないだろうか。 メルナーゼが生を諦めたとき、世界の運命が決まった。 *ご都合主義です。わかりづらいなどありましたらすみません。笑って読んでくださいませ。本編15話で完結です。番外編を数話、気まぐれに投稿します。よろしくお願いいたします。 ※ありがたいことにHOTランキング入りいたしました。たくさんの方の目に触れる機会に感謝です。本編は終了しましたが、番外編も投稿予定ですので、気長にお付き合いくださると嬉しいです。たくさんのお気に入り登録、しおり、エール、いいねをありがとうございます。R7.1/31 *らがまふぃん活動三周年周年記念として、R7.11/4に一話お届けいたします。楽しく活動させていただき、ありがとうございます。

処理中です...