勝手に召喚して勝手に期待して勝手に捨てたじゃないの。勝手に出て行くわ!

朝山みどり

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第16話 あれからの・・・

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琴子と涼介は朝寝坊をした。マリカが涼介の独身最後の飲み会にホテルのスイートを借りてくれたので、そこに二人で泊まり、豪華な夕食と夜食を部屋に運んで貰い、朝食も頼んだ。
「このオレンジジュースっていくらよ?ほんとに絞ってあるぞ」と涼介がグラスを見ながら言うと
「貧乏資産家ね」と琴子が笑った。
「あぁ、今日で卒業だけどな」とオムレツを口に入れた。
「ほんと、行き届いてるよな・・・こういうところ、このオムレツの焼き加減、あいつがシェフに教えたんだ、最初に・・・当たり前のような顔して・・・躑躅林の名が効いてるんだろ。それを捨てるとか、あの女、頭おかしいゾ」と

「そうなのよね。優遇されても特別扱いされても、当たり前の顔して、ありがとうって。普通のことだと思ってる」と琴子が顔を歪めて言った。

「このことがバレたらどんな顔するかな?」と涼介が言うと

「ちょっと顔をしかめるかな?でもあの女、歪んでるから・・・親の愛情がおかしいから。お手伝いさんに大事にされてるけど・・・あの婆さん、おひいさまって呼ぶからね。本気でよ。誰よりも尊い存在と扱われるのに、母親からはゴミ扱い・・・
父親からは母親のおまけと思われている。あの女ね、八歳の時、言ったんだ。いつものように母親からけちょんけちょんに馬鹿にされた時に、薄笑いを浮かべながら言ったのよ。『わたしは自分で自分を育ててる。育児書をたくさん読んだから、出来る。普通より出来る』ってどうしてそう思うの?って聞いたら『どうしてって、育てられる本人も育児書読んでるのよ。答えを知ってるの。つまり完全攻略出来るってことでしょ』だから、わたしは優秀な良い子に育つわ。だけど悔しいから親には見せない』ってね」と琴子は笑うと
「まぁ結果は引きこもりの陰気な女よね。寄付するとか・・・それってなによ。あの女は日陰に・・・ううん、床下とか屋根裏にいたらいいのよ」

「そうか、参考にさせて貰うよ。いろいろありがとな。これからは一緒にいない方がいいだろう。僕は妻をあらゆる敵から守るんだから、嫉妬と僻みいっぱいの従姉は排除だよ」と涼介が言うと、琴子は笑って

「冗談うまいんだから」と涼介の腕を取った。

「いや、本気だよ。僕は誤解されたくないんだ。君といるとあらぬ誤解をされるだろう。わずらわしい思いをしたくないんだ」と言う涼介を睨んで
「うまいこと言って、金を独り占めするんだろ」と琴子が言えば

「独り占め?妻の金を夫が管理するだけだろ。どうして従姉がそれに口出しするんだ?」と涼介が冷静な口調で言っていると

スマホがなった。友人からだった。

「涼介、なにやったんだ。おまえ結婚するって言ってなかったか?」


そこに琴子のスマホの呼び出し音が優雅に響いた。琴の音色だ。地獄の幕開けを飾るにふさわしい音色だった。

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