手放してみたら、けっこう平気でした。

朝山みどり

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第二話 第三話 葬儀

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第二話と第三話は同じものでした。 番号は変えずにこの形で訂正しました。  7/24記す


そんなある日、父が事故で死んでしまった。地盤が緩んで石が落ちてきて、父の乗った馬車に当たった。馬車が横倒しになったのだ。
そして、自動車で来た人が父を病院に運んでくれたが、父は助からなかった。
その時の彼、ジーク・アドレーは事業家として上り坂の人だった。

知らせを受けて急いで学院から戻ったわたしは気が動転してなにをしていいのかわからなかった。

更に、義母の放った
「すぐに『ベラミ』を呼んで、この喪服は伯爵夫人として恥ずかしいわ」の言葉と
「そうですわ。伯爵令嬢として人前に出られませんわ」の義妹の言葉に打ちのめされた。

だが、そこをアドレー様が厳しい声で
「エリザ様。ご令嬢。もうあなたはお嬢様ではないですよ。伯爵です。誇りをなくさないで。守って貰う側ではなく守る側ですよ」と言った。
それでわたしはしゃっきりとなって、二人にこう言えた。

「それは必要ありません。喪服が悲しみを表すのではありません。仕立て上がるのを待つ時間はありません」

『ベラミ』で仕立てるなんて、請求金額を知ってるのかしら?

「お義母様は親戚の方がいらしたら相手をお願いします。ラーラもです。挨拶だけはきちんとなさい」

そこに祖父が来て、棺を香木で作った物にするように言って来た。
「お祖父様、それは出来ませんわ。伯爵の身でそのような棺は分を超えています」
「だが、自慢の息子だ。それに貴族院の仲間が議長の息子だから、それくらいは当たり前だと言っている。ほら、ナイル子爵だ。いや前ナイル子爵だな。あいつの伝手で少し安く出来るそうだ」
「考えてみますが、まだ、お返事はしないで下さい」
「議長閣下、あちらでお茶をどうぞ。ちょうど、車に酒を積んでおりましたし、よければそれも?」と少し前から部屋にいたアドレー様がお祖父様に声をかけた。

「ナイル子爵はずるい男だ。あの棺は偽物だ。埋めてしまうからばれない。香木を外側に貼り付けただけの物を高く売りつける。わたしが子爵と話をするお祖父様を傷つけないように気をつけるからまかせて欲しい」とアドレー様は小声で言うと帰って行った。

翌日、ナイル前子爵がやって来た。祖父と一緒にわたしが相手をしていると、アドレー様がやって来た。
「おや、ジーク。君がここに来るなんて・・・」とナイル前子爵が呟いた。
「棺をあなたが用意すると聞いたからね」とアドレー様が言うと
「そのつもりだ」
「例の香木を使った物だろう?あれは材料がまだ集まってないと聞いたが」
「そうなんだ。良かった。ジークが言ってくれて、わたしが勘違いして、すぐ用意できるつもりで、話をしたんだが用意出来ないと、部下が青い顔で報告して来て・・・怒鳴りつけてきたんだが、どう申し上げようかと悩んでいたんだ」と言うとナイル前子爵は、立ち上がり深々と頭を下げた。

「許して下さるさ」とアドレー様が言うと祖父を見て
「自慢の御子息を亡くされて、ご心痛はさぞかしでございましょう。ですが、ここのご令嬢があとを引き受けて下さいます。お部屋で一人御子息と対話なさって下さい。よければお酒も少し持って参りました」と侍従を目で呼ぶと酒を渡して
「これを持ってお部屋にお連れして」と言って祖父を片付けた。

それからアドレー様はナイル前子爵を見て
「出て行け」と行った。

「ご令嬢、乱暴で申し訳ない。今日はこれで帰りますが、父上の最後に立ち会い約束いたしました。お力になります」と言うとアドレー様も部屋を出て行った。

アドレー様が帰って行くのを窓から見ていた親戚の一人が
「おや、あいつはジーク・アドレーだね。ニューリッシュなんて体裁のいい言い方をしてるけど、あいつらは卑しい生まれのハイエナだ」と言うと
「でも自動車は素敵ですわ。お父様はあれに乗って帰って来ましたよ」とラーラが言った。
「自動車なんて情緒のないものを・・・あれは金さえあれば買える」
「そうだとも。風情もない、卑しい者の乗る物ですな」
買うお金のある人だけが買えるのに・・・王子の一人が乗り始めたのを知らないのかしら。

そして、当日。義母と義妹は墓所へ行く馬車のなかでは、お菓子をつまんでいたのに馬車から降りると泣き始めた。
慰められると
「大事な大好きなお父様とお別れですのよ」
「旦那様がわたしを置いて逝ってしまったの。一緒に行きたいですわ」と答えてハンカチを顔に当てていた。
ちらっと振り返るとアドレー様が一番後ろから自動車でついて来ていた。
お母様のお墓の隣りは、もう準備が出来ていて、大きな花輪がたくさんあった。

「さすが、議長の息子の葬式だ」「前伯爵の威光は衰えていませんね」などと声が聞こえて祖父は気をよくしていたが、これは全部、アドレー様が好意で贈って下さった物だ。
「死者の名誉は生者を救います」と仰って有難かった。

長老貴族院のメンバーは、祖父を含めてあまり手元に余裕がない。いろいろ時代が変わり始めているのだ。
お父様の棺に土がかけられる時、テリウス様が手を握ってくれた。わたしたちは最後までずっと手を繋いでいた。
気がついたら、彼がわたしの涙をハンカチで拭いていた。自分が泣いていることにその時、気がついた。
背中をさすってくれる手が暖かいと始めて知った。この人の妻になりたいと改めて思った。
◇◇◇◇

「黒と青、金と紫、銀と紫」と作品も投稿しております。読んで見てください。
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