手放してみたら、けっこう平気でした。

朝山みどり

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第十二話 

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「マメゾン」の客の一人が、再来年の鉱山の売上で払うからと言い出した。
運転手として屋敷を見た時、破綻を感じた。
出迎えの侍従のお仕着せが体に合ってなかったのだ。

収入が減っても生活を小さく出来ないなんてことではない。

祖父じいさん父親おやじも好きに金を使っていたんだから、自分も大丈夫。そう思っているのがたくさんいるのだ。

没落していくのは、なにかまずいことをやった連中。普通にやっている自分は大丈夫。

大丈夫なものはないのだ。領地は金の卵じゃないのだ。


「エリザ。シスレー伯爵の前伯爵夫人のことだが」とジークがお茶の時間に話し出した。
「えぇ、病気でしょうか?結婚式で見かけませんでした」
「それが追い出されたそうなんだ」
「追い出された?」
「そうだな、追い出されたって言うのは大げさだな」とジークは言うと
「なんでも、ラーラさんが、言ったそうなんだ『お母様が下品で目立つからわたしが庶子だとみんなが思いだす。お母様がいなければいいのよ』って。これはあそこの使用人からの情報だ。それで領地の屋敷に閉じ込められていたそうなんだが、逃げ出したとか。それでも捕まって王都の屋敷で、閉じ込められているそうだ。まぁそんだけなんだが・・・」
「そうですか?まぁどうしようもないですね、わたしとしては。そうですね。意地悪をされたと言えばそうですが・・・まぁ意見、価値観が違いましたから」

◇◇◇◇
ジーク目線
ラーラの母親のことをエリザに話してみた。過去のことを思っている様子に安心した。
あの母親は、結婚式の頃なんとわたしに金を借りに来たのだ。
衣装を新調する金をテリウスが出さない。ラーラもそれに賛成しているとかで・・・

なんの担保もない女に貸す金はわたしが個人的に出した。

一応、署名も貰ったがなんの役にも立たないだろう。

◇◇◇
テリウス目線
エリザのやつ、貯め込んでいた。確かに領地の利益はまだ確定していない。だが、取り立てればいいだけの話だ。

子供の頃から、父は本家を羨ましがっていた。全て持っていると、言っていた。
そしてわたしが婚約者になると、夢を語り始めた。
曰く、屋敷を立て直そう。いい馬を買おう。王都の夜会に出て王族に挨拶をして・・・領地にお招きしよう。

ところが、現実は違っていた。伯爵は厳しくわたしを評価して後継は、エリザだと決めていた。
王城で文官をしているわたしではなく学院で学んでいるエリザを評価したのだ。

「いいかね、テリウス。今は耐える時代だ。全てを一族で使えた時代は終わった。平民の台頭は止められない。だから出来るだけ、頭を低くして耐えてやり過ごすんだ。
それにこの十年のうちに不作の年がある。それに備えねばならない。
それが過ぎれば領地経営で新しいことをやってもいい。

確かにずっと豊かな実りが続いている。だが、長い領主の記録から判断するとその周期が来るのだ。
だから、手堅い経営をするのが大事だ。だから、ここはエリザが継ぐ。
君はエリザとラーラを守って欲しい。正直、ラーラが可愛い。安心出来る相手を探しているが、どうも上手く行かない。エリザはラーラの面倒をずっと見てくれると思うし、君も大丈夫だろう。だが、それではエリザの負担が大きすぎる。テリウス。君は顔も広いし、人付き合いが上手い。だからエリザを助けてやって欲しい」

ふん、所詮、本家のお坊ちゃんだ。分家の妬みを理解わかってなかった。

貯めていたお金で結婚式を挙げた。豪華な客。まぁ義祖父じいさんのおねだりが面倒だったが、それなりの旧家と縁が出来た。

弟の縁談がまとまりそうだと連絡があった。少し顔合わせに見えを張った甲斐があると言うものだ。
大丈夫、持参金で埋め合わせをすれば問題ない。


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