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03 迎えの一行
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朝食を済ませて、本を読んでいると、外が騒がしくなりドアがノックされた。
「お待ちください」「侍女が・・・・お連れしますので」と声がしてドアがノックされた。
普段ノックと同時に開くので、座ったままドアを見ていると、
「王妃殿下、開けてよろしいですか」と声がかかった。
「どうぞ、開けます」と言うとジュディはドアを開けた。
普段見ている男とは全く異質の男が三人そこにいた。彼らの後ろに立っているのは食事を運ぶだけの侍女とこの前会った宰相。そして一度だけ会った王太子だった。
「おや、王妃殿下自ら、ドアを開けて下さるとは・・・・王国の作法は気さくなんですね。わたし好みです」
と言ったのは、黒髪をさらりと揺らした男だった。
「なかでお話しても?」とその男に言われて
「どうぞ」と部屋に招き入れた。
あわてて、侍女と王国の宰相と王太子も入って来た。
部屋は狭いし、椅子が足りないのもひと目でわかる。
「この方は本当に正妃ですか?」と黒髪の男が言うと
「正妃様は質素な方ですので・・・・・お迎えはまだ先だと・・・」と宰相が返事すると、
「はい、迎えは先です。お連れするのは予定通り、二週間後ですよ。ちょっと早く着きましたので、待ちきれなくて会いに来ました」と黒髪の男は言った。
「後、本当に王妃殿下なのかの確認も兼ねております」と青い顔色になった宰相を見ながら黒髪の男が笑った。
「客間に書類の用意が出来ております。そちらに場所を移していいでしょうか?」と宰相がおどおどと言うと、
「もちろんですよ」と黒髪の男は返事をした。そして
「王妃殿下参りましょう」とジュディに手を差し出した。
案内された部屋は、王宮で一番の客間だった。黒髪の男は
「本来なら、ここの宰相があなたを紹介するんでしょうが、自己紹介します。わたくしはジンダイ帝国宰相のバージル・ベルウッド。こちらが、わたくしの侍従、ライリー・ワイド。護衛のミック・ブリッジ」
二人は無言で頭を下げた。
「ジュディ・ブルーホークです」
ジュディが、他人事のように名乗るとバージルはうなづいて、ジュディをソファに座らせた。
それから、パルメラ王国の二人、王太子と宰相に向かって、
「王妃殿下がそちらの国王の、正妃となった書類を確認したい」と言った。
「俺、わたしが保証するそこの女は、正妃だ」と王太子が言ったが、バージルは、
「書類を見せて欲しい」と宰相に向かって言った。
「この書類には、不備がありますね。正妃には継承権があるはずですよ。この国の誠意。王太子殿の誠意を疑わせないで欲しいですね」バージルの冷たい声が響いた。
「王妃殿下、ジュディ様と呼んでよろしいでしょうか?」とバージルは打って変わった優しい声で言った。
「はい」とジュディは短く答えた。
そこにようやく、書類が届けられた。バージルはそれを読んで、一言
「いいでしょう」と言うと
「王妃殿下、署名して下さい」とジュディの前に書類をおいた。じっくり読んで署名をすると、バージルはそれを取り上げて、
「帝国宰相とこちらの宰相が署名すると終わりですね」と言うと署名して、もう一度、宰相に渡した。
「はい、これで、ジュディ様の人質の価値が上がりました。ジュディ様。命を大事にして下さいね。軽はずみな事をしないようにして下さい」
それを聞いた王太子は、
「我が国の誠意を理解していただけて嬉しい。後は宰相と話をしてくれ」と言うと席を立った。
「宰相殿、もう用は済んだ」とバージルが言うと、宰相は、ほっとしたようにジュディを残して出て行った。
「ジュディ様、予定より早めの出発となりますので、そのつもりで」とバージルは言うと、
「お部屋まで送りましょう」と手を差し出したが、ジュディは、
「いえ、不要です。一人で帰ります」と断った。
ジュディは継承権について考えながら、歩いていた。順位は王太子より前。
帝国はわたしを殺すより、取り込んだ方が有利だ。
あの席でその言葉を聞いた時、なくなったと思っていた未来が戻って来たのを感じたのだ。
母が死んだ後、父親、母の実家の人たち、そして国がわたしを捨てた。
だけど、ただ捨てられるような事はごめんだ。継承権・・・・使えるように準備しよう。
味方を・・・裏切らない味方・・・・お金?・・・力。知識。もっと学んで・・・・人質って少なくとも時間はあるだろうから・・・
あの王太子が、またなにか馬鹿な事をやるだろう。その時、すぐに動けるようにしておかなくては・・・・
部屋に戻って、少ない荷物をまとめながらも、ジュディは、考え続けた。
そして、国王の長生きを願った。
「お待ちください」「侍女が・・・・お連れしますので」と声がしてドアがノックされた。
普段ノックと同時に開くので、座ったままドアを見ていると、
「王妃殿下、開けてよろしいですか」と声がかかった。
「どうぞ、開けます」と言うとジュディはドアを開けた。
普段見ている男とは全く異質の男が三人そこにいた。彼らの後ろに立っているのは食事を運ぶだけの侍女とこの前会った宰相。そして一度だけ会った王太子だった。
「おや、王妃殿下自ら、ドアを開けて下さるとは・・・・王国の作法は気さくなんですね。わたし好みです」
と言ったのは、黒髪をさらりと揺らした男だった。
「なかでお話しても?」とその男に言われて
「どうぞ」と部屋に招き入れた。
あわてて、侍女と王国の宰相と王太子も入って来た。
部屋は狭いし、椅子が足りないのもひと目でわかる。
「この方は本当に正妃ですか?」と黒髪の男が言うと
「正妃様は質素な方ですので・・・・・お迎えはまだ先だと・・・」と宰相が返事すると、
「はい、迎えは先です。お連れするのは予定通り、二週間後ですよ。ちょっと早く着きましたので、待ちきれなくて会いに来ました」と黒髪の男は言った。
「後、本当に王妃殿下なのかの確認も兼ねております」と青い顔色になった宰相を見ながら黒髪の男が笑った。
「客間に書類の用意が出来ております。そちらに場所を移していいでしょうか?」と宰相がおどおどと言うと、
「もちろんですよ」と黒髪の男は返事をした。そして
「王妃殿下参りましょう」とジュディに手を差し出した。
案内された部屋は、王宮で一番の客間だった。黒髪の男は
「本来なら、ここの宰相があなたを紹介するんでしょうが、自己紹介します。わたくしはジンダイ帝国宰相のバージル・ベルウッド。こちらが、わたくしの侍従、ライリー・ワイド。護衛のミック・ブリッジ」
二人は無言で頭を下げた。
「ジュディ・ブルーホークです」
ジュディが、他人事のように名乗るとバージルはうなづいて、ジュディをソファに座らせた。
それから、パルメラ王国の二人、王太子と宰相に向かって、
「王妃殿下がそちらの国王の、正妃となった書類を確認したい」と言った。
「俺、わたしが保証するそこの女は、正妃だ」と王太子が言ったが、バージルは、
「書類を見せて欲しい」と宰相に向かって言った。
「この書類には、不備がありますね。正妃には継承権があるはずですよ。この国の誠意。王太子殿の誠意を疑わせないで欲しいですね」バージルの冷たい声が響いた。
「王妃殿下、ジュディ様と呼んでよろしいでしょうか?」とバージルは打って変わった優しい声で言った。
「はい」とジュディは短く答えた。
そこにようやく、書類が届けられた。バージルはそれを読んで、一言
「いいでしょう」と言うと
「王妃殿下、署名して下さい」とジュディの前に書類をおいた。じっくり読んで署名をすると、バージルはそれを取り上げて、
「帝国宰相とこちらの宰相が署名すると終わりですね」と言うと署名して、もう一度、宰相に渡した。
「はい、これで、ジュディ様の人質の価値が上がりました。ジュディ様。命を大事にして下さいね。軽はずみな事をしないようにして下さい」
それを聞いた王太子は、
「我が国の誠意を理解していただけて嬉しい。後は宰相と話をしてくれ」と言うと席を立った。
「宰相殿、もう用は済んだ」とバージルが言うと、宰相は、ほっとしたようにジュディを残して出て行った。
「ジュディ様、予定より早めの出発となりますので、そのつもりで」とバージルは言うと、
「お部屋まで送りましょう」と手を差し出したが、ジュディは、
「いえ、不要です。一人で帰ります」と断った。
ジュディは継承権について考えながら、歩いていた。順位は王太子より前。
帝国はわたしを殺すより、取り込んだ方が有利だ。
あの席でその言葉を聞いた時、なくなったと思っていた未来が戻って来たのを感じたのだ。
母が死んだ後、父親、母の実家の人たち、そして国がわたしを捨てた。
だけど、ただ捨てられるような事はごめんだ。継承権・・・・使えるように準備しよう。
味方を・・・裏切らない味方・・・・お金?・・・力。知識。もっと学んで・・・・人質って少なくとも時間はあるだろうから・・・
あの王太子が、またなにか馬鹿な事をやるだろう。その時、すぐに動けるようにしておかなくては・・・・
部屋に戻って、少ない荷物をまとめながらも、ジュディは、考え続けた。
そして、国王の長生きを願った。
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