王妃はわたくしですよ

朝山みどり

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19 夜会のあとで

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「ねぇライリー様、ああいう所では知り合いって言うか学院で一緒だとしても気づかないふりをするマナーだった?」
「知らんふり?あぁ、あの小娘は学院で一緒だったね」

「うん、そうなの。挨拶しろって言うのを無視するぞって、心積もりしていたのに・・・知らない人扱いされて。困ったの」

「ふっふっふ。そうかぁぁ。うふっふ。多分、単純にジュディのことがわからなかったんだね」と笑いの合間にライリーが言うと

「わからない!そんな・・・」とジュディがあせっていると

「ジュディが見違える程、綺麗だからさ」とライリーが教えたが

「もう、真面目に考えているのに・・・確かに綺麗にして貰ったけど、わたしってわからない程は」とジュディは怒りながら不思議そうに続けた。

「確かにあの女が挨拶をするように言って来たところを無視するつもりだったが、予想外だった。だが効果はあった。わかっていて知らない振りをしたとは思えない。まぁ今日は大成功だ。よくやった」とライリーに褒められてジュディは安心したようで笑った。


 屋敷に戻るとジュディはパメラに優しく世話をやかれて、すぐにベッドに入った。

「報告は明日で大丈夫です。今日はもうゆっくり休んで下さい」とパメラが言うのを半分夢の中でジュディは聞いたのだった。


 ジュディが部屋に引っ込むと三人はすぐに話し合いを始めた。

 最初にライリーが夜会の様子と馬車のなかのことを話した。バージルもミックも笑ったが、

「思ったより遥かに優秀だな」とバージルが言うと二人は笑うのをやめてバージルを見た。

「次に行ってもいいかと」と言うと

「学院を楽しんでいるようですよ」とミックが不満を隠さずに言ったが

「わたしが相手をするし、教師も用意する。文官として活動して貰う」とバージルが言うと

「わかりました」とライリーが答えるとバージルは、いやな笑いを浮かべると

「実は」と切り出した。二人は緊張して続きの言葉を待った。

「モルファイ侯爵家にちょっかい出そうと思ってるんだ。ほら、俺って宰相だしーー」

 二人はその声を聞いてモルファイ侯爵家のことを気の毒に思った。

「馭者の控え室でさ。他の控え室って行ったことないが、いい所だった。飯も酒も用意してあってな。楽しく飲んで喋った。そこで聞いた話しなんだが・・・モルファイの小娘が馬車ですれ違った相手にいちゃもんをつけてな。無防備に馬車から降りたんだそうだ。それで相手のホワイト侯爵の息子が自分が悪いと謝ったそうだ。そうすれば娘も馬車に戻るだろう?紳士としては正解だが貴族としてはなぁ。だがいいやつだ。貴族としては失格だからダメだが、いいやつなんだが、貴族としては」と繰り返しながらバージルは二人をちらちらと見る。

 根負けしたライリーが

「そんないい人なら、モルファイを痛い目に合わせたいですね。もちろんホワイトさんは望まないでしょうが、偶然なにか起こるかも知れないし」と言ったところでバージルが

「あら、そんなことを思っちゃうのライリーは危ない人?」と言った。ライリーとミックはこれみよがしにため息をつくと
「ちょっとした嫌がらせですよ。宰相の力を使うなんて」とミックが言ったところで

「あら、遠慮しないで。協力するよ。二人の為に」とバージルが早口で言うと、三人は爆笑した。

「確かにモルファイを大人しくさせると、やりやすくなるでしょう」とミックがまとめた。


「ジュディはここでパメラたちとのんびり過ごしていて貰いましょうか」とライリーが言うと二人も賛成した。




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