王妃はわたくしですよ

朝山みどり

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37 国王の死

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 国王の死は静かに疾く広まった。死を悼むものはいなかった。葬儀をどうするか次の王は誰か?

 どう振る舞えば家門を繁栄させられるか。考えること。決めることは多かった。

 いち早く動いた者がいる。取るに足りない者であったが。

「ほら、もうあの女の言うことを聞く必要はないわよ」

「え?どうしてここまで頑張ったのよ。正式に採用されるまで少しよ。王妃殿下からも褒められたし」

「王妃なんか・・・王が追い出すわよ」

「王って亡くなったじゃない」

「次の王よ」その言葉に周りを囲んでいた侍女たちが、いや侍女見習いが近寄って来た。

「王ってどなたなの?まだ葬儀も済んでないのよ。エミリー。いい加減なことを言ってはいけないわ」

「次の王は王太子殿下よ。第二妃のジャンヌ様にお祝いを言いに行きましょう」

「だめよ。エミリーまだ葬儀も終わってないのよ」

「そうだけど、第二妃殿下にお仕えしたいじゃない」とエミリーは言いながら、一人に目を止めると

「カトレア。あなたはどうするの?アルトナー子爵家って王妃と関係あるらしいじゃない?」

「関係ないわ。とっくに縁は切れている」とその一人は答えた。

「え?カトレア。あなた自慢してたじゃない?王妃殿下のお母様の実家だって。お母様の弟があなたのお父様って言ってなかった?つまり、殿下と従姉妹よね。関係ないの?」とエミリーは周りに聞こえるように大声で言った。

「だから、縁は切れてるって言いましたよ。理解できないのね。エミリー」

 そこにパメラがやって来て

「話は聞こえていました。まだ侍女として酷いですが、第二妃と第三妃の所へ希望者を配属させます。身分は下女になりますが、ここまで残った皆さんですから・・・この書類を持ってそれぞれの妃殿下の所へ言ってご本人から署名を貰って来て下さい」

 そこで話していた者の大半は用紙を受け取ると第二妃ジャンヌの第二宮へ行った。残りは第三妃シルビーの第三宮へ急いだ。

 第二妃のそばで寛大な態度で女たちを待っていたのは、元侍女長のサリナだった。

 一目で事情を察したエミリーは

「サリナ様」と大声呼びかけた。

「エミリー。はしたないですよ。第二妃ジャンヌ様。恐れ多くも国王陛下のお母堂様の前ですよ」と芝居げたっぷりにサリナが言うと集まった者たちは

「ジュンヌ様。おめでとうございます」と挨拶をした。

「皆、ありがとう。だけどわたくしはわたくし。たとえ我が子が王になろうともね。今まで通りに接して下さいね」

「ありがとうございます」そして女たちは用紙をサリナに渡した。

「なにやらジャンヌ様の署名を貰えとあの者が言ったそうだな。言うことを聞くのも腹ただしいが、そなたたちの為になるなら」とジャンヌはサリナがジャンヌの前に置いた用紙に署名をしていった。

「ジャンヌ様ありがとうございます」と殊更、おおげさにサリナがお礼を言うのに合わせて、女たちも頭を下げた。

「疲れたわ」とジャンヌが言いながら立ち去ると、サリナが新しくこの第二宮で働くことになった者、用紙に明記してあったように、新しく下女として働くことになった女たちを見てこう言った。

「下女が補充されて安心しました」


「これをどうぞ」と新しく第二宮と第三宮の下女となった者が署名入りの用紙を持って、パメラの所へやって来た。


「三分の二、助かったわ。面倒なく追い出せるわね。侍女ならともかく下女ですもの。問答無用で追い出せるなんて、おばかさん!ありがとう」とジュディが空に向かって言った。


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