3 / 48
03 二つの結婚式
一回目です
それからまもなくエリザベートと王太子殿下の結婚式が行われた。結婚式の前の夜、侯爵夫人がエリザベートの部屋を訪ねた。
「王宮でもロザモンドを守ってあげてね。あなただけが頼りよ。お願いね。今までのように」そう言うとエリザベートを抱きしめた。
「約束してね。あなたも大事な娘。二人でがんばって」とお母様が切れ切れに紡ぐ言葉にわたくしの心は満たされた、大事なのはロザモンドわたくしを利用してるだけとわかっているのに・・・・・この腕を与えられてわたくしは喜んでいる。お母様がわたくしを認めてくれるなら、抱きしめてくれるなら。エリザベートはそう思った。
全員、王宮の礼拝堂に揃った。
衣装は準備していたものを着た。この衣装を見るたびに胸にこみ上げた思いは決して表に出してはいけないとエリザベートは自分を律した。
子供の頃の両親からのプレゼントの装身具は重厚な衣装に合わないが、この奇妙な結婚に相応しいとエリザベートと自嘲した。
父のセントクレア侯爵と目も合わせず、言葉も交わさず祭壇まで歩いた。
王太子の手は冷たく義務的に差し出された。
全員が早く終わらないかなと思っていた式だった。
式が終わると
「じゃあ、奥様。俺とロザモンドの式の準備頼むね」と新夫は背中を向けながら言った。一応礼儀として侯爵夫妻、国王夫妻、王太子とロザモンドを見送って、最後に礼拝堂をでた。
そしてエリザベートはドレスのまま、自分の部屋に戻った。
侍女のケイトが乱暴にドレスを脱がした。
夕食の席に王太子は来なかった。一人で食事を済ませ部屋に戻ると王太子の伝言が届いていた。
今晩は所用があると一言記されていた。
エリザベートはいままでしていたように、一人で湯浴みをしていつもの寝巻きを着てベッドに入った。
ロザモンドの王太子妃教育が始まったが、全然すすまなかった。当たり前だとエリザベートは思った。
王太子はロザモンドにかまうのに忙しく執務はすすまなかった。その分エリザベートが忙しくなったが、白い結婚どころか会うこともない彼女を城の使用人たちは軽んずるようになって来た。
執務に忙しく食事に行けない日が続くと、いつしかエリザベートの食事は用意されなくなった。執務が終わってから厨房をたずねて残り物を貰った。
着るものも侍女がいない為に自分で着られる服だけを着まわした。
書類を運んで来る者は多いが戻してくれる者はいない。エリザベートが自分で戻しに行く。一度その途中で王太子殿下に会った。
「おまえはあてつけでそんな格好をしてるのか。可愛げのない・・・・うんざりだ。せいぜい仕事をしてくれ」そう怒鳴りつけると返事をするひまもなく去って行った。
『うんざりなのは、わたくしだわ。だけどこれを終わらせないと城が回らない・・・・・』とエリザベートは足を速めた。
王太子がエリザベートを怒鳴りつけたことは、城中に広がり彼女を見るとどの使用人も、くすくす笑うのだった。
加えて結婚式の準備が大変だった。ロザモンドの要求は大きくまためまぐるしく変わり、手配はエリザベートに丸投げされた。
ロザモンドがやったのはドレスの仮縫いだけと言ってよかった。
それでもどうにか準備は整って素晴らしい結婚式が行われたが・・・・エリザベートは疲れ果て、結婚式もその後のパレードも欠席した。動けなかったのだ。
気がついたらすべて終わっていた。やっと目が覚めたエリザベートを王宮の者は嫉妬して、あてつけに欠席した冷たい姉だという非難した。
侯爵夫人はわざわざエリザベートの部屋を訪れ、なじり頬をぶって帰って行った。
エリザベートの服装や手入れしていない髪、肌を見てもなにも思わない、何も感づかない母親なんだと今更ながら気づいた。
反対に侯爵夫人の侍女はエリザベートの有様に驚いていた。だが同情的な目で見ただけだった。
この侍女は子供のエリザベートが一緒にお茶したい、散歩したいと母親にすがりつくのを引き剥がし部屋のなかに押し込む係だった。
子供の頃、エリザベートは庭でお母様と二人でお茶をするロザモンドが羨ましかった。ロザモンドは優秀だから勉強しないでいいのだと思っていた。
その考えが違っていると気づいたのは、王家のお茶会に二人で呼ばれた時だ。
まわりの令嬢はきちんと椅子に座っていたが、ロザモンドはいつのまにかいなくなっていた。そして、泥だらけの姿で庭師に連れられて戻って来た。
わたくしたちはすぐにお暇した。家に戻ってわたくしはすごく叱られた。頬を何度もぶたれた。
「妹に気を配れないなんて最低だと」
ロザモンドつきの侍女もいたし、侍女も気がつかないうちにいなくなったのにエリザベートの責任だと叱ったのだ。
ぶたれるエリザベートを見て、ロザモンドは
「お姉さまってほんとうにだめね」と言ったし侍女も
「ほんとうですね」と嘲笑った。
ロザモンドはロザモンドだから愛されるのだとその時、理解できた。
エリザベートはぶたれた頬を水で冷やすとスピーチの原稿を書き始めた。
式に参列した複数の王室を招いたお茶会なので、友好国の今後に期待する、もっと頻繁に行き来しましょう。という内容でまとめた。
ロザモンドに古代ギリー語の知識がないのはよく知っているので、社交の慣例を無視して普通の言葉だけで書いた。
せめて挨拶の言葉でも覚えて欲しかったが、侯爵夫人の怒りを買っただけだった。
普段だと届ける事を要求されるのだが、これはロザモンドの侍女が取りに来た。
この侍女は、はれた頬を見て、侮蔑の笑いを浮かべると帰って行った。
それからまもなくエリザベートと王太子殿下の結婚式が行われた。結婚式の前の夜、侯爵夫人がエリザベートの部屋を訪ねた。
「王宮でもロザモンドを守ってあげてね。あなただけが頼りよ。お願いね。今までのように」そう言うとエリザベートを抱きしめた。
「約束してね。あなたも大事な娘。二人でがんばって」とお母様が切れ切れに紡ぐ言葉にわたくしの心は満たされた、大事なのはロザモンドわたくしを利用してるだけとわかっているのに・・・・・この腕を与えられてわたくしは喜んでいる。お母様がわたくしを認めてくれるなら、抱きしめてくれるなら。エリザベートはそう思った。
全員、王宮の礼拝堂に揃った。
衣装は準備していたものを着た。この衣装を見るたびに胸にこみ上げた思いは決して表に出してはいけないとエリザベートは自分を律した。
子供の頃の両親からのプレゼントの装身具は重厚な衣装に合わないが、この奇妙な結婚に相応しいとエリザベートと自嘲した。
父のセントクレア侯爵と目も合わせず、言葉も交わさず祭壇まで歩いた。
王太子の手は冷たく義務的に差し出された。
全員が早く終わらないかなと思っていた式だった。
式が終わると
「じゃあ、奥様。俺とロザモンドの式の準備頼むね」と新夫は背中を向けながら言った。一応礼儀として侯爵夫妻、国王夫妻、王太子とロザモンドを見送って、最後に礼拝堂をでた。
そしてエリザベートはドレスのまま、自分の部屋に戻った。
侍女のケイトが乱暴にドレスを脱がした。
夕食の席に王太子は来なかった。一人で食事を済ませ部屋に戻ると王太子の伝言が届いていた。
今晩は所用があると一言記されていた。
エリザベートはいままでしていたように、一人で湯浴みをしていつもの寝巻きを着てベッドに入った。
ロザモンドの王太子妃教育が始まったが、全然すすまなかった。当たり前だとエリザベートは思った。
王太子はロザモンドにかまうのに忙しく執務はすすまなかった。その分エリザベートが忙しくなったが、白い結婚どころか会うこともない彼女を城の使用人たちは軽んずるようになって来た。
執務に忙しく食事に行けない日が続くと、いつしかエリザベートの食事は用意されなくなった。執務が終わってから厨房をたずねて残り物を貰った。
着るものも侍女がいない為に自分で着られる服だけを着まわした。
書類を運んで来る者は多いが戻してくれる者はいない。エリザベートが自分で戻しに行く。一度その途中で王太子殿下に会った。
「おまえはあてつけでそんな格好をしてるのか。可愛げのない・・・・うんざりだ。せいぜい仕事をしてくれ」そう怒鳴りつけると返事をするひまもなく去って行った。
『うんざりなのは、わたくしだわ。だけどこれを終わらせないと城が回らない・・・・・』とエリザベートは足を速めた。
王太子がエリザベートを怒鳴りつけたことは、城中に広がり彼女を見るとどの使用人も、くすくす笑うのだった。
加えて結婚式の準備が大変だった。ロザモンドの要求は大きくまためまぐるしく変わり、手配はエリザベートに丸投げされた。
ロザモンドがやったのはドレスの仮縫いだけと言ってよかった。
それでもどうにか準備は整って素晴らしい結婚式が行われたが・・・・エリザベートは疲れ果て、結婚式もその後のパレードも欠席した。動けなかったのだ。
気がついたらすべて終わっていた。やっと目が覚めたエリザベートを王宮の者は嫉妬して、あてつけに欠席した冷たい姉だという非難した。
侯爵夫人はわざわざエリザベートの部屋を訪れ、なじり頬をぶって帰って行った。
エリザベートの服装や手入れしていない髪、肌を見てもなにも思わない、何も感づかない母親なんだと今更ながら気づいた。
反対に侯爵夫人の侍女はエリザベートの有様に驚いていた。だが同情的な目で見ただけだった。
この侍女は子供のエリザベートが一緒にお茶したい、散歩したいと母親にすがりつくのを引き剥がし部屋のなかに押し込む係だった。
子供の頃、エリザベートは庭でお母様と二人でお茶をするロザモンドが羨ましかった。ロザモンドは優秀だから勉強しないでいいのだと思っていた。
その考えが違っていると気づいたのは、王家のお茶会に二人で呼ばれた時だ。
まわりの令嬢はきちんと椅子に座っていたが、ロザモンドはいつのまにかいなくなっていた。そして、泥だらけの姿で庭師に連れられて戻って来た。
わたくしたちはすぐにお暇した。家に戻ってわたくしはすごく叱られた。頬を何度もぶたれた。
「妹に気を配れないなんて最低だと」
ロザモンドつきの侍女もいたし、侍女も気がつかないうちにいなくなったのにエリザベートの責任だと叱ったのだ。
ぶたれるエリザベートを見て、ロザモンドは
「お姉さまってほんとうにだめね」と言ったし侍女も
「ほんとうですね」と嘲笑った。
ロザモンドはロザモンドだから愛されるのだとその時、理解できた。
エリザベートはぶたれた頬を水で冷やすとスピーチの原稿を書き始めた。
式に参列した複数の王室を招いたお茶会なので、友好国の今後に期待する、もっと頻繁に行き来しましょう。という内容でまとめた。
ロザモンドに古代ギリー語の知識がないのはよく知っているので、社交の慣例を無視して普通の言葉だけで書いた。
せめて挨拶の言葉でも覚えて欲しかったが、侯爵夫人の怒りを買っただけだった。
普段だと届ける事を要求されるのだが、これはロザモンドの侍女が取りに来た。
この侍女は、はれた頬を見て、侮蔑の笑いを浮かべると帰って行った。
あなたにおすすめの小説
【完結】私は側妃ですか? だったら婚約破棄します
hikari
恋愛
レガローグ王国の王太子、アンドリューに突如として「側妃にする」と言われたキャサリン。一緒にいたのはアトキンス男爵令嬢のイザベラだった。
キャサリンは婚約破棄を告げ、護衛のエドワードと侍女のエスターと共に実家へと帰る。そして、魔法使いに弟子入りする。
その後、モナール帝国がレガローグに侵攻する話が上がる。実はエドワードはモナール帝国のスパイだった。後に、エドワードはモナール帝国の第一皇子ヴァレンティンを紹介する。
※ざまあの回には★がついています。
妹に一度殺された。明日結婚するはずの死に戻り公爵令嬢は、もう二度と死にたくない。
たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】
恋愛
婚約者アルフレッドとの結婚を明日に控えた、公爵令嬢のバレッタ。
しかしその夜、無惨にも殺害されてしまう。
それを指示したのは、妹であるエライザであった。
姉が幸せになることを憎んだのだ。
容姿が整っていることから皆や父に気に入られてきた妹と、
顔が醜いことから蔑まされてきた自分。
やっとそのしがらみから逃れられる、そう思った矢先の突然の死だった。
しかし、バレッタは甦る。死に戻りにより、殺される数時間前へと時間を遡ったのだ。
幸せな結婚式を迎えるため、己のこれまでを精算するため、バレッタは妹、協力者である父を捕まえ処罰するべく動き出す。
もう二度と死なない。
そう、心に決めて。
悪役断罪?そもそも何かしましたか?
SHIN
恋愛
明日から王城に最終王妃教育のために登城する、懇談会パーティーに参加中の私の目の前では多人数の男性に囲まれてちやほやされている少女がいた。
男性はたしか婚約者がいたり妻がいたりするのだけど、良いのかしら。
あら、あそこに居ますのは第二王子では、ないですか。
えっ、婚約破棄?別に構いませんが、怒られますよ。
勘違い王子と企み少女に巻き込まれたある少女の話し。
愚か者が自滅するのを、近くで見ていただけですから
越智屋ノマ
恋愛
宮中舞踏会の最中、侯爵令嬢ルクレツィアは王太子グレゴリオから一方的に婚約破棄を宣告される。新たな婚約者は、平民出身で才女と名高い女官ピア・スミス。
新たな時代の象徴を気取る王太子夫妻の華やかな振る舞いは、やがて国中の不満を集め、王家は静かに綻び始めていく。
一方、表舞台から退いたはずのルクレツィアは、親友である王女アリアンヌと再会する。――崩れゆく王家を前に、それぞれの役割を選び取った『親友』たちの結末は?
なにをおっしゃいますやら
基本二度寝
恋愛
本日、五年通った学び舎を卒業する。
エリクシア侯爵令嬢は、己をエスコートする男を見上げた。
微笑んで見せれば、男は目線を逸らす。
エブリシアは苦笑した。
今日までなのだから。
今日、エブリシアは婚約解消する事が決まっているのだから。
ジェリー・ベケットは愛を信じられない
砂臥 環
恋愛
ベケット子爵家の娘ジェリーは、父が再婚してから離れに追いやられた。
母をとても愛し大切にしていた父の裏切りを知り、ジェリーは愛を信じられなくなっていた。
それを察し、まだ子供ながらに『君を守る』と誓い、『信じてほしい』と様々な努力してくれた婚約者モーガンも、学園に入ると段々とジェリーを避けらるようになっていく。
しかも、義妹マドリンが入学すると彼女と仲良くするようになってしまった。
だが、一番辛い時に支え、努力してくれる彼を信じようと決めたジェリーは、なにも言えず、なにも聞けずにいた。
学園でジェリーは優秀だったが『氷の姫君』というふたつ名を付けられる程、他人と一線を引いており、誰にも悩みは吐露できなかった。
そんな時、仕事上のパートナーを探す男子生徒、ウォーレンと親しくなる。
※世界観はゆるゆる
※ざまぁはちょっぴり
※他サイトにも掲載
『「ママは我慢してればいいんでしょ?」と娘に言われた日、私は妻をやめた』~我慢をやめた母と、崩れていく家族、そして再生~
まさき
恋愛
私はずっと「いい妻」でいようとしてきた。
夫に逆らわず、空気を読み、波風を立てないように生きる。
それが、この家を守る唯一の方法だと思っていた。
娘にも、そうであってほしかった。
けれど──
その願いは、静かに歪んでいく。
夫の言葉をなぞるように、娘は私を軽んじるようになった。
そしてある日、夕食の後片付けをしていた私に、娘は言った。
「ママはさ、我慢してればいいんでしょ?」
その一言で、何かが壊れた。
我慢することが、母である証だと思っていた。
だがそれは、私自身をすり減らすだけの“呪い”だった。
──もう、我慢するのはやめる。
妻であることをやめ、母として生き直すために。
私は、自分の人生を取り戻す決意をした。
その選択は、家族を大きく揺るがしていく。
崩れていく夫婦関係。
離れていく娘の心。
そして、待ち受ける“ざまぁ”の行方。
それでも私は問い続ける。
母とは何か。
家族とは何か。
そして──私は、どう生きるべきなのか。
[完結]いらない子と思われていた令嬢は・・・・・・
青空一夏
恋愛
私は両親の目には映らない。それは妹が生まれてから、ずっとだ。弟が生まれてからは、もう私は存在しない。
婚約者は妹を選び、両親は当然のようにそれを喜ぶ。
「取られる方が悪いんじゃないの? 魅力がないほうが負け」
妹の言葉を肯定する家族達。
そうですか・・・・・・私は邪魔者ですよね、だから私はいなくなります。
※以前投稿していたものを引き下げ、大幅に改稿したものになります。