9 / 68
第9話 夕食で
しおりを挟む
ビザン帝国の港に着いた。さすがの特権で下船して迎えの馬車に乗り込むと、すぐに洋品店に行った。
アリスは嬉しかった。自分の好みの服を選べるのだ。アリスは黄色いワンピースを先ず選んだ。
丸い襟ぐりに白い襟がついている。アリスの年齢には少し幼いデザインだ。だがアリスはこういうのを着てみたかったのだ。いつも王妃の勧めで王妃よりも地味なものを着ていたのだ。だから好きなのを着る。もう一枚はピンクで袖がレースになっていて、可愛い。
「お嬢様二枚は少ないですよ。あと二・三枚必要ですよ」とラズベリーが言ったが
「ううん、二枚で充分よ。そういえばわたくしが着ていたのはどうなりましたか?」
「お手入れして綺麗になりましたが・・・お嬢様にはちょっと」とラズベリーが言った。
「わたくしもそう思うけど、綺麗になったならそれも着るから」と話していると
「こら、わたしが買いたいからもう少し買え。そこの水色と緑色はどうだ?それとその青・・・それとそのピンクの服はデザインがいいな。その色違いはあるか?とアレクが入ってくるなりそう言った。
「このデザインは人気で色違いを追加したところです。青と緑が揃います」と店主が答え店員が素早く品物を出して来た。
「お嬢様にはもう少し袖を長くすると綺麗ですね。明日のお昼までにピンクと青と緑の三着の補正が出来ますが」と店主が言うと
「頼む」とアレクが返事をした。
「せっかくですが、青は嫌いです」とアリスが言うと
「そうか青はやめておこう」とアレクが言うと店主は
袖なしのワンピースにボレロが付いている紺色のセットを持って来た。
「お嬢様、これも可愛いでしょ。ボレロが総レースなんですよ」と見せた。
「そんなには」とアリスが言ったが
アレクは
「そうだな、そういうのも一着は欲しいな。色がいい」と追加を決めた。そしてアリスに
「どうだ、アリス。黄色を着ていくか?」と話しかけた。
「はい」とアリスは答えた。
「ふっふふ、少し余るな。だが、ちゃんと食べて肉がつくから、それでいいな」とアレクが笑った。
そのあとは宝石店に行って金にダイヤをあしらった髪飾りと金とダイヤの小さなピアスを買って、今まで使っていた青い宝石のついた髪飾りとピアスを外してつけかえた。
それからも身の回りの物を細々買うと夕食の時間となった。
「今日はお茶の時間が取れなかったな。アリスは海の物は好きかい?」とアレクが尋ねると
「どうでしょうか?あまり食べたことがないのでわかりません」と返事が返ってきた。
「そうか、それなら試してみたらいいな。少し早めだが夕食にしよう」とアリスをレストランに連れて行った。
「わたくし、お店で買い物も初めてでした。レストランに来るのも初めてです」とアリスに言われたアレクはなんとも言えない気持ちが身内に溢れるのを感じた。
怒りなのか、哀れみなのか、同情なのか・・・
『こんな気持ちになるのは初めてだ』とアレクは思った。『なんと返事すればいいのか』迷ったが口をついて出たのは
「デイビスも来るから、少し待つがワインを飲んでみるか?これも初めて?」
「いいえ、少し飲めます」と言う返事にちょっとだけアレクはがっかりした。
そして、食前に注文した甘口の白ワインを飲み始めた時にデイビスがやって来た。
『まったく気のきかないやつだ』とアレクは思った。
「これは、珍しいワインですね。あっアリスの為ですね。よく選びました」とデイビスがにこにこアリスに話しかけるのを睨みつけた。おまけにデイビスは
「アリス、よく似合いますね。黄色を着てると黄色いガーベラの花束のようですよ」
とにこにことアリスを褒めると
「なにを食べるか決めた?」と二人に向かって言った。
「おまかせします」とアリスが言い
「茹でたロブスターと粉ふきいもと温野菜はどうだろうか?」とアレクが答えた。
「そうだな。わたしは焼きガキも食べたい」とデイビスが言うと
「それもいいな」とアレクが頷いた。
「アリス。マナー違反になるが、分けて食べよう。今日はスープはやめておいたほうがいいな。他が入らなくなる。あとワインと一緒にレーズンとナッツはどうかな。アリスはワインになにを合わせたい?」と言うアレクに
「別に・・・なにも・・・おまかせします」とアリスはグラスに入ったワインを見ながら答えた。
ワインから始めた食事はどれも美味しくアリスは、ロブスターが明日の自分を元気にする様が頭に浮かんで来た。粉ふきいもの胡椒の香り、バターで炒めた野菜の甘さ。それが全部自分に吸収されていく。
ロブスターを食べるときに頼んだワインも少し飲んだアリスは、常よりも笑顔が自然だった。二人はそれに気づいた。
思ったよりも酒を飲めそうなアリス。いつもよりも・・・美しく・・・妖艶!?と言う言葉が浮かんだアレクは戸惑った。保護した子供じゃないか。どうしたんだ。酒のせいか?
アレクは
「平常心・平常心・平常心・平常心」と自分に言い聞かせるのだったが、心臓はその度にドキン・ドキンと大きく鼓動して主に逆らうのだった。
アリスは嬉しかった。自分の好みの服を選べるのだ。アリスは黄色いワンピースを先ず選んだ。
丸い襟ぐりに白い襟がついている。アリスの年齢には少し幼いデザインだ。だがアリスはこういうのを着てみたかったのだ。いつも王妃の勧めで王妃よりも地味なものを着ていたのだ。だから好きなのを着る。もう一枚はピンクで袖がレースになっていて、可愛い。
「お嬢様二枚は少ないですよ。あと二・三枚必要ですよ」とラズベリーが言ったが
「ううん、二枚で充分よ。そういえばわたくしが着ていたのはどうなりましたか?」
「お手入れして綺麗になりましたが・・・お嬢様にはちょっと」とラズベリーが言った。
「わたくしもそう思うけど、綺麗になったならそれも着るから」と話していると
「こら、わたしが買いたいからもう少し買え。そこの水色と緑色はどうだ?それとその青・・・それとそのピンクの服はデザインがいいな。その色違いはあるか?とアレクが入ってくるなりそう言った。
「このデザインは人気で色違いを追加したところです。青と緑が揃います」と店主が答え店員が素早く品物を出して来た。
「お嬢様にはもう少し袖を長くすると綺麗ですね。明日のお昼までにピンクと青と緑の三着の補正が出来ますが」と店主が言うと
「頼む」とアレクが返事をした。
「せっかくですが、青は嫌いです」とアリスが言うと
「そうか青はやめておこう」とアレクが言うと店主は
袖なしのワンピースにボレロが付いている紺色のセットを持って来た。
「お嬢様、これも可愛いでしょ。ボレロが総レースなんですよ」と見せた。
「そんなには」とアリスが言ったが
アレクは
「そうだな、そういうのも一着は欲しいな。色がいい」と追加を決めた。そしてアリスに
「どうだ、アリス。黄色を着ていくか?」と話しかけた。
「はい」とアリスは答えた。
「ふっふふ、少し余るな。だが、ちゃんと食べて肉がつくから、それでいいな」とアレクが笑った。
そのあとは宝石店に行って金にダイヤをあしらった髪飾りと金とダイヤの小さなピアスを買って、今まで使っていた青い宝石のついた髪飾りとピアスを外してつけかえた。
それからも身の回りの物を細々買うと夕食の時間となった。
「今日はお茶の時間が取れなかったな。アリスは海の物は好きかい?」とアレクが尋ねると
「どうでしょうか?あまり食べたことがないのでわかりません」と返事が返ってきた。
「そうか、それなら試してみたらいいな。少し早めだが夕食にしよう」とアリスをレストランに連れて行った。
「わたくし、お店で買い物も初めてでした。レストランに来るのも初めてです」とアリスに言われたアレクはなんとも言えない気持ちが身内に溢れるのを感じた。
怒りなのか、哀れみなのか、同情なのか・・・
『こんな気持ちになるのは初めてだ』とアレクは思った。『なんと返事すればいいのか』迷ったが口をついて出たのは
「デイビスも来るから、少し待つがワインを飲んでみるか?これも初めて?」
「いいえ、少し飲めます」と言う返事にちょっとだけアレクはがっかりした。
そして、食前に注文した甘口の白ワインを飲み始めた時にデイビスがやって来た。
『まったく気のきかないやつだ』とアレクは思った。
「これは、珍しいワインですね。あっアリスの為ですね。よく選びました」とデイビスがにこにこアリスに話しかけるのを睨みつけた。おまけにデイビスは
「アリス、よく似合いますね。黄色を着てると黄色いガーベラの花束のようですよ」
とにこにことアリスを褒めると
「なにを食べるか決めた?」と二人に向かって言った。
「おまかせします」とアリスが言い
「茹でたロブスターと粉ふきいもと温野菜はどうだろうか?」とアレクが答えた。
「そうだな。わたしは焼きガキも食べたい」とデイビスが言うと
「それもいいな」とアレクが頷いた。
「アリス。マナー違反になるが、分けて食べよう。今日はスープはやめておいたほうがいいな。他が入らなくなる。あとワインと一緒にレーズンとナッツはどうかな。アリスはワインになにを合わせたい?」と言うアレクに
「別に・・・なにも・・・おまかせします」とアリスはグラスに入ったワインを見ながら答えた。
ワインから始めた食事はどれも美味しくアリスは、ロブスターが明日の自分を元気にする様が頭に浮かんで来た。粉ふきいもの胡椒の香り、バターで炒めた野菜の甘さ。それが全部自分に吸収されていく。
ロブスターを食べるときに頼んだワインも少し飲んだアリスは、常よりも笑顔が自然だった。二人はそれに気づいた。
思ったよりも酒を飲めそうなアリス。いつもよりも・・・美しく・・・妖艶!?と言う言葉が浮かんだアレクは戸惑った。保護した子供じゃないか。どうしたんだ。酒のせいか?
アレクは
「平常心・平常心・平常心・平常心」と自分に言い聞かせるのだったが、心臓はその度にドキン・ドキンと大きく鼓動して主に逆らうのだった。
3,222
あなたにおすすめの小説
言い訳は結構ですよ? 全て見ていましたから。
紗綺
恋愛
私の婚約者は別の女性を好いている。
学園内のこととはいえ、複数の男性を侍らす女性の取り巻きになるなんて名が泣いているわよ?
婚約は破棄します。これは両家でもう決まったことですから。
邪魔な婚約者をサクッと婚約破棄して、かねてから用意していた相手と婚約を結びます。
新しい婚約者は私にとって理想の相手。
私の邪魔をしないという点が素晴らしい。
でもべた惚れしてたとか聞いてないわ。
都合の良い相手でいいなんて……、おかしな人ね。
◆本編 5話
◆番外編 2話
番外編1話はちょっと暗めのお話です。
入学初日の婚約破棄~の原型はこんな感じでした。
もったいないのでこちらも投稿してしまいます。
また少し違う男装(?)令嬢を楽しんでもらえたら嬉しいです。
【完結済】後悔していると言われても、ねぇ。私はもう……。
木嶋うめ香
恋愛
五歳で婚約したシオン殿下は、ある日先触れもなしに我が家にやってきました。
「君と婚約を解消したい、私はスィートピーを愛してるんだ」
シオン殿下は、私の妹スィートピーを隣に座らせ、馬鹿なことを言い始めたのです。
妹はとても愛らしいですから、殿下が思っても仕方がありません。
でも、それなら側妃でいいのではありませんか?
どうしても私と婚約解消したいのですか、本当に後悔はございませんか?
【完結】不貞された私を責めるこの国はおかしい
春風由実
恋愛
婚約者が不貞をしたあげく、婚約破棄だと言ってきた。
そんな私がどうして議会に呼び出され糾弾される側なのでしょうか?
婚約者が不貞をしたのは私のせいで、
婚約破棄を命じられたのも私のせいですって?
うふふ。面白いことを仰いますわね。
※最終話まで毎日一話更新予定です。→3/27完結しました。
※カクヨムにも投稿しています。
虐げられてる私のざまあ記録、ご覧になりますか?
リオール
恋愛
両親に虐げられ
姉に虐げられ
妹に虐げられ
そして婚約者にも虐げられ
公爵家が次女、ミレナは何をされてもいつも微笑んでいた。
虐げられてるのに、ひたすら耐えて笑みを絶やさない。
それをいいことに、彼女に近しい者は彼女を虐げ続けていた。
けれど彼らは知らない、誰も知らない。
彼女の笑顔の裏に隠された、彼女が抱える闇を──
そして今日も、彼女はひっそりと。
ざまあするのです。
そんな彼女の虐げざまあ記録……お読みになりますか?
=====
シリアスダークかと思わせて、そうではありません。虐げシーンはダークですが、ざまあシーンは……まあハチャメチャです。軽いのから重いのまで、スッキリ(?)ざまあ。
細かいことはあまり気にせずお読み下さい。
多分ハッピーエンド。
多分主人公だけはハッピーエンド。
あとは……
そんなに妹が好きなら死んであげます。
克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。
『思い詰めて毒を飲んだら周りが動き出しました』
フィアル公爵家の長女オードリーは、父や母、弟や妹に苛め抜かれていた。
それどころか婚約者であるはずのジェイムズ第一王子や国王王妃にも邪魔者扱いにされていた。
そもそもオードリーはフィアル公爵家の娘ではない。
イルフランド王国を救った大恩人、大賢者ルーパスの娘だ。
異世界に逃げた大魔王を追って勇者と共にこの世界を去った大賢者ルーパス。
何の音沙汰もない勇者達が死んだと思った王達は……
【完結】わたしの欲しい言葉
彩華(あやはな)
恋愛
わたしはいらない子。
双子の妹は聖女。生まれた時から、両親は妹を可愛がった。
はじめての旅行でわたしは置いて行かれた。
わたしは・・・。
数年後、王太子と結婚した聖女たちの前に現れた帝国の使者。彼女は一足の靴を彼らの前にさしだしたー。
*ドロッとしています。
念のためティッシュをご用意ください。
【完結】旦那様、その真実の愛とお幸せに
おのまとぺ
恋愛
「真実の愛を見つけてしまった。申し訳ないが、君とは離縁したい」
結婚三年目の祝いの席で、遅れて現れた夫アントンが放った第一声。レミリアは驚きつつも笑顔を作って夫を見上げる。
「承知いたしました、旦那様。その恋全力で応援します」
「え?」
驚愕するアントンをそのままに、レミリアは宣言通りに片想いのサポートのような真似を始める。呆然とする者、訝しむ者に見守られ、迫りつつある別れの日を二人はどういった形で迎えるのか。
◇真実の愛に目覚めた夫を支える妻の話
◇元サヤではありません
◇全56話完結予定
善人ぶった姉に奪われ続けてきましたが、逃げた先で溺愛されて私のスキルで領地は豊作です
しろこねこ
ファンタジー
「あなたのためを思って」という一見優しい伯爵家の姉ジュリナに虐げられている妹セリナ。醜いセリナの言うことを家族は誰も聞いてくれない。そんな中、唯一差別しない家庭教師に貴族子女にははしたないとされる魔法を教わるが、親切ぶってセリナを孤立させる姉。植物魔法に目覚めたセリナはペット?のヴィリオをともに家を出て南の辺境を目指す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる