気がついたら無理!絶対にいや!

朝山みどり

文字の大きさ
13 / 68

第13話 侯爵の戸惑い

しおりを挟む
気が付くと侯爵は家に戻っていた。夫人を探すと庭で、バーバラとお茶をしていた。
「あら、アリスはまだお城で遊んでいるのですか?」と侯爵夫人が笑うと
「エドワード様がお優しいから」とバーバラが理由知り顔で言った。

「アリスは行方不明だ。あの雨の夜から・・・わたしたちはアリスを忘れて帰った。帰りの馬車は窮屈じゃなかった」と侯爵が言うと
「そうだったわね。でも行方不明って・・・確かあの時お姉様が馬車に乗るように皆に言って・・・エドワード様はすぐに馬車に向かって・・・わたしもすぐに馬車に向かったけど・・・お姉様はぐずぐずしていて」とバーバラが思い出しながら言った。

夫人が
「わたくしたちは悪くないわ。婚約者が残っているのにさっさと馬車に乗る王太子が悪いわ。やっぱりあの女の息子だから」と叫んだ。

「あの女とは姉上のことか?お前こそ、娘がいないに気がつかず」と侯爵が言うと

「そうよあの女よのくせに王家に入って・・・わたくしは公爵家よ。わたくしこそが王家にふさわしい」と口にして夫人がはっとして黙った。

「・・・心配のあまり・・・気が動転して・・・」と涙を流した。

「アリス。どこにいるの?」と言いながらわっと泣き出した母親をバーバラが抱きしめて
「お母様。しっかりして・・・心配しすぎると体に悪いわ・・・お姉様がもっとしっかりしていれば良かったのよ」と言った。

見ていて気分が悪くなった侯爵は、二人をそのままにして家を出た。


侯爵も思い出した。誰かが馬車に戻るように大声で・・・そうだ、あの声はアリスだった。何故かそれに従いさっさと馬車に戻った。そしてすぐに出発したんだ。

当番はスペーダ家だが、あいつらはなにをしていた?俺たちの周りを取り囲んだ一団にいたかも・・・奥方は別の一団に・・・

なにもしてないじゃないか。いやいや、それはない。この当番は国事行為だ。ピクニックなんて楽しい形だが、大切な行事だ。それを蔑ろにするなんて許されることではない。

ピクニックをやった湖に向かって馬を走らせながら侯爵は、妻の言葉、王妃の言葉、書類の山。お城に泊まったと言う意味。分かりたくない、認めたくない事実がぐるぐるうずまきながら自分を飲み込むのを感じていた。

しおりを挟む
感想 284

あなたにおすすめの小説

言い訳は結構ですよ? 全て見ていましたから。

紗綺
恋愛
私の婚約者は別の女性を好いている。 学園内のこととはいえ、複数の男性を侍らす女性の取り巻きになるなんて名が泣いているわよ? 婚約は破棄します。これは両家でもう決まったことですから。 邪魔な婚約者をサクッと婚約破棄して、かねてから用意していた相手と婚約を結びます。 新しい婚約者は私にとって理想の相手。 私の邪魔をしないという点が素晴らしい。 でもべた惚れしてたとか聞いてないわ。 都合の良い相手でいいなんて……、おかしな人ね。 ◆本編 5話  ◆番外編 2話  番外編1話はちょっと暗めのお話です。 入学初日の婚約破棄~の原型はこんな感じでした。 もったいないのでこちらも投稿してしまいます。 また少し違う男装(?)令嬢を楽しんでもらえたら嬉しいです。

【完結済】後悔していると言われても、ねぇ。私はもう……。

木嶋うめ香
恋愛
五歳で婚約したシオン殿下は、ある日先触れもなしに我が家にやってきました。 「君と婚約を解消したい、私はスィートピーを愛してるんだ」 シオン殿下は、私の妹スィートピーを隣に座らせ、馬鹿なことを言い始めたのです。 妹はとても愛らしいですから、殿下が思っても仕方がありません。 でも、それなら側妃でいいのではありませんか? どうしても私と婚約解消したいのですか、本当に後悔はございませんか?

【完結】不貞された私を責めるこの国はおかしい

春風由実
恋愛
婚約者が不貞をしたあげく、婚約破棄だと言ってきた。 そんな私がどうして議会に呼び出され糾弾される側なのでしょうか? 婚約者が不貞をしたのは私のせいで、 婚約破棄を命じられたのも私のせいですって? うふふ。面白いことを仰いますわね。 ※最終話まで毎日一話更新予定です。→3/27完結しました。 ※カクヨムにも投稿しています。

虐げられてる私のざまあ記録、ご覧になりますか?

リオール
恋愛
両親に虐げられ 姉に虐げられ 妹に虐げられ そして婚約者にも虐げられ 公爵家が次女、ミレナは何をされてもいつも微笑んでいた。 虐げられてるのに、ひたすら耐えて笑みを絶やさない。 それをいいことに、彼女に近しい者は彼女を虐げ続けていた。 けれど彼らは知らない、誰も知らない。 彼女の笑顔の裏に隠された、彼女が抱える闇を── そして今日も、彼女はひっそりと。 ざまあするのです。 そんな彼女の虐げざまあ記録……お読みになりますか? ===== シリアスダークかと思わせて、そうではありません。虐げシーンはダークですが、ざまあシーンは……まあハチャメチャです。軽いのから重いのまで、スッキリ(?)ざまあ。 細かいことはあまり気にせずお読み下さい。 多分ハッピーエンド。 多分主人公だけはハッピーエンド。 あとは……

そんなに妹が好きなら死んであげます。

克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。 『思い詰めて毒を飲んだら周りが動き出しました』 フィアル公爵家の長女オードリーは、父や母、弟や妹に苛め抜かれていた。 それどころか婚約者であるはずのジェイムズ第一王子や国王王妃にも邪魔者扱いにされていた。 そもそもオードリーはフィアル公爵家の娘ではない。 イルフランド王国を救った大恩人、大賢者ルーパスの娘だ。 異世界に逃げた大魔王を追って勇者と共にこの世界を去った大賢者ルーパス。 何の音沙汰もない勇者達が死んだと思った王達は……

【完結】わたしの欲しい言葉

彩華(あやはな)
恋愛
わたしはいらない子。 双子の妹は聖女。生まれた時から、両親は妹を可愛がった。 はじめての旅行でわたしは置いて行かれた。 わたしは・・・。 数年後、王太子と結婚した聖女たちの前に現れた帝国の使者。彼女は一足の靴を彼らの前にさしだしたー。 *ドロッとしています。 念のためティッシュをご用意ください。

【完結】旦那様、その真実の愛とお幸せに

おのまとぺ
恋愛
「真実の愛を見つけてしまった。申し訳ないが、君とは離縁したい」 結婚三年目の祝いの席で、遅れて現れた夫アントンが放った第一声。レミリアは驚きつつも笑顔を作って夫を見上げる。 「承知いたしました、旦那様。その恋全力で応援します」 「え?」 驚愕するアントンをそのままに、レミリアは宣言通りに片想いのサポートのような真似を始める。呆然とする者、訝しむ者に見守られ、迫りつつある別れの日を二人はどういった形で迎えるのか。 ◇真実の愛に目覚めた夫を支える妻の話 ◇元サヤではありません ◇全56話完結予定

善人ぶった姉に奪われ続けてきましたが、逃げた先で溺愛されて私のスキルで領地は豊作です

しろこねこ
ファンタジー
「あなたのためを思って」という一見優しい伯爵家の姉ジュリナに虐げられている妹セリナ。醜いセリナの言うことを家族は誰も聞いてくれない。そんな中、唯一差別しない家庭教師に貴族子女にははしたないとされる魔法を教わるが、親切ぶってセリナを孤立させる姉。植物魔法に目覚めたセリナはペット?のヴィリオをともに家を出て南の辺境を目指す。

処理中です...