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第34話 メアリーの出発
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王妃は好調だ。
憎いポーレットに言ってやったし、アリスは平民になった。
彼女のなかでいつのまにか、アリスは迷子になって迷惑をかけたのに謝罪をしなかった娘。こちらから婚約破棄した娘となっている。
面倒くさい執務も有能な人材がやっと育って、任せることが出来るようになった。
それでやっと時間が空いた王妃は、メアリーに目を向けた。
あちらに馴染むように、結婚まえに同居するということで来月、出発する予定だったのが、メアリーの希望で早めの出発となった。
ずっと交わしている文を通じて、あちらからも好意を寄せられているようだ。文を見せて貰ってそこは確信出来た。
さすが、わが娘だ。あの国の者も価値を認めたとは!可愛い娘と別れがたいが、仕方ない。
王室の役割は大切だ。
それで王妃はメアリーの早くなった出発の準備にかかり切りになっている。ドレスも装身具もさらに予算を割いて準備している。
「だから、港まで一緒に来てよ。もう日にちがないの。だけどわたし忙しかったから、紹介された時の挨拶を考えてないのよ。馬車で一緒に考えてよ」とメアリーは散歩中のアリスをつかまえて、頼む。
「そうね、ちょうど港へ行こうと、思っていたから、行くかな。アレク様も一緒に行くけどそれでいいなら」とアリスが返事すると
「そうよ。そう返事すればいいのよ」とメアリーは言うと
「出発は明日よ。早く行くって言えばいいのに、ぐずぐずしてるからギリギリになったわ。ほんと迷惑なんだから」と付け加えた。
メアリーは知らなかったが、アリスが止めなければラズベリーから、靴を頭に投げつけられる所だった。
「ラズベリーでも怒るのね。でもあそこの侍女から聞いてるのでしょ。メアリーったら挨拶をどうするかすごく焦っているみたい。ここで破談に持っていくほうが親切でしょうけど。わたくし親切じゃないし・・・準備を整えて送り出したいの。海の一族に会いに行くつもりで準備してたから、平気。アレク様たちも承知だし。すぐにでも出発出来るくらいなのよ」とアリスが言うと
「そうですけど・・・不愉快です」とラズベリーが言った。
翌朝、メアリーは出発したが、華々しい出発の儀式は特務部の権限で中止された。
来年の挙式に予算を回したいと言われて王妃は納得した。
手の空いた侍女と特務部が全員、ずらりと並んで見送った。
最初に王妃の馬車が出て、次にメアリーの馬車出た。ここにアリスが同乗している。見送り人が解散した後でアレクとデイビスの馬車が続いた。
「確か最初に一族の長老に挨拶して、家族の見習いをさせていただくお許しをいただくだったかしら」とアリスが言うと
「お許し!」とメアリーは憤ったが
「そうよ。随分格式が高いわよね。並みだと務まらないよね」と言うアリスの言葉に黙った。
「その挨拶は、えーーと、一般的な前置きの後で、この身を燈明の油ともなし、婚家の皆さまに尽くすことこそ喜びとして皆さまと暮らして参ります。わたくしのものは皆さまのものでございます。とかでいい?」とアリスが言えば
「まぁそんなものかな? あとなんか、気の効いた言葉を少し考えといて」とメアリーが言うので
「この後に適当につければいいのですよ。
浅はかな この身を恥じる 冬の宵 この冬の宵の部分を、春の夜とか、朝まだきに変えるといいですよ」
「なるほどね。それくらいなら、いくつも出来るけど、どんなのが出来たか聞いてあげるわ」とメアリーが言うと
「そうですね。けっこう、これ難しいですよね。
不甲斐ない 我を導く やさしさよ ここを有り難さとか、お義母様とか、御手数多 とかですかね。王女殿下がへりくだると、あちらもその分丁寧になるでしょうね」と言うと
「そうかもね。わたしがへりくだれば、向こうはもっとへりくだらないと、いけないわね。それって気の毒だから、わたしの威光を示すのもあったほうがいいかも」
「民たちを 見下ろす我の ありがたさ みたいなものですか?」とアリスが言うと
「そうそう、そういうのがいいわね」とメアリーが言うと
「あの国でこれはダメですよ。絶対に駄目ですよ」とアリスは慌てて言った。
「どうして、王女のわたしが嫁ぐのよ。もっと言ってもいいのよ」とメアリーが言うとメアリーの侍女が
「異国より 嫁ぐ尊き このわたし はどうでしょうか?」と言った。
「素晴らしいわ。アリスより才能があるわね。他には」とメアリーが言うと
「波超えし 嫁ぐ乙女の 美しさ」
「わぁ こんなのを待っていたのよ。良かったいい侍女を選んだわ。そう言えば名前はなんだった?」とメアリーが言うと
「え?わたくしはライラと申します」と侍女は答えた。
「ライラね。わたしを独り占めして仕えるって、おまえは幸せ者ね」とメアリーが言うと
「・・・はい、王女殿下」とライラは答えた。
途中泊まった宿は、港に行くときに泊まっていた宿だったが、ここでアリスは気がついた。自分は安い宿に泊まっていたことに。
伯母と移動する時は、馬車も宿も別で
「自立心を養うためよ」って説明されていて、その時は嬉しかったけど・・・
ほんとにクソ伯母ね。メアリーに意地悪してやってるからいいけどとアリスは
意地悪が くせになったら 止められない と頭に浮かんで、怖いもの見たさで、メニリーフ王国へ行ってみようかとちらっと思って、ダメダメと自分に言い聞かせていた。
『いいかげん やめて欲しいな 五七五』とアリスが馬車を降りながら思っていると
「アリちゃん」「アリちゃ」「アリちゃーーん」と声をかけられた。
「あーーー久しぶり。遊びに来てみたけど・・・いい?」とアリスが答えると
「いいに決まってるよ」の言葉に皆で笑っていると
「静かにしろ。離れろ」と王女の護衛が怒鳴りつけた。
「ごめん、後でね。見送ったら」とアリスが囁くと
「怖。怖。ちょっと失礼なやつら。後でね。アリス」と海の一族の若者達は去って行った。
憎いポーレットに言ってやったし、アリスは平民になった。
彼女のなかでいつのまにか、アリスは迷子になって迷惑をかけたのに謝罪をしなかった娘。こちらから婚約破棄した娘となっている。
面倒くさい執務も有能な人材がやっと育って、任せることが出来るようになった。
それでやっと時間が空いた王妃は、メアリーに目を向けた。
あちらに馴染むように、結婚まえに同居するということで来月、出発する予定だったのが、メアリーの希望で早めの出発となった。
ずっと交わしている文を通じて、あちらからも好意を寄せられているようだ。文を見せて貰ってそこは確信出来た。
さすが、わが娘だ。あの国の者も価値を認めたとは!可愛い娘と別れがたいが、仕方ない。
王室の役割は大切だ。
それで王妃はメアリーの早くなった出発の準備にかかり切りになっている。ドレスも装身具もさらに予算を割いて準備している。
「だから、港まで一緒に来てよ。もう日にちがないの。だけどわたし忙しかったから、紹介された時の挨拶を考えてないのよ。馬車で一緒に考えてよ」とメアリーは散歩中のアリスをつかまえて、頼む。
「そうね、ちょうど港へ行こうと、思っていたから、行くかな。アレク様も一緒に行くけどそれでいいなら」とアリスが返事すると
「そうよ。そう返事すればいいのよ」とメアリーは言うと
「出発は明日よ。早く行くって言えばいいのに、ぐずぐずしてるからギリギリになったわ。ほんと迷惑なんだから」と付け加えた。
メアリーは知らなかったが、アリスが止めなければラズベリーから、靴を頭に投げつけられる所だった。
「ラズベリーでも怒るのね。でもあそこの侍女から聞いてるのでしょ。メアリーったら挨拶をどうするかすごく焦っているみたい。ここで破談に持っていくほうが親切でしょうけど。わたくし親切じゃないし・・・準備を整えて送り出したいの。海の一族に会いに行くつもりで準備してたから、平気。アレク様たちも承知だし。すぐにでも出発出来るくらいなのよ」とアリスが言うと
「そうですけど・・・不愉快です」とラズベリーが言った。
翌朝、メアリーは出発したが、華々しい出発の儀式は特務部の権限で中止された。
来年の挙式に予算を回したいと言われて王妃は納得した。
手の空いた侍女と特務部が全員、ずらりと並んで見送った。
最初に王妃の馬車が出て、次にメアリーの馬車出た。ここにアリスが同乗している。見送り人が解散した後でアレクとデイビスの馬車が続いた。
「確か最初に一族の長老に挨拶して、家族の見習いをさせていただくお許しをいただくだったかしら」とアリスが言うと
「お許し!」とメアリーは憤ったが
「そうよ。随分格式が高いわよね。並みだと務まらないよね」と言うアリスの言葉に黙った。
「その挨拶は、えーーと、一般的な前置きの後で、この身を燈明の油ともなし、婚家の皆さまに尽くすことこそ喜びとして皆さまと暮らして参ります。わたくしのものは皆さまのものでございます。とかでいい?」とアリスが言えば
「まぁそんなものかな? あとなんか、気の効いた言葉を少し考えといて」とメアリーが言うので
「この後に適当につければいいのですよ。
浅はかな この身を恥じる 冬の宵 この冬の宵の部分を、春の夜とか、朝まだきに変えるといいですよ」
「なるほどね。それくらいなら、いくつも出来るけど、どんなのが出来たか聞いてあげるわ」とメアリーが言うと
「そうですね。けっこう、これ難しいですよね。
不甲斐ない 我を導く やさしさよ ここを有り難さとか、お義母様とか、御手数多 とかですかね。王女殿下がへりくだると、あちらもその分丁寧になるでしょうね」と言うと
「そうかもね。わたしがへりくだれば、向こうはもっとへりくだらないと、いけないわね。それって気の毒だから、わたしの威光を示すのもあったほうがいいかも」
「民たちを 見下ろす我の ありがたさ みたいなものですか?」とアリスが言うと
「そうそう、そういうのがいいわね」とメアリーが言うと
「あの国でこれはダメですよ。絶対に駄目ですよ」とアリスは慌てて言った。
「どうして、王女のわたしが嫁ぐのよ。もっと言ってもいいのよ」とメアリーが言うとメアリーの侍女が
「異国より 嫁ぐ尊き このわたし はどうでしょうか?」と言った。
「素晴らしいわ。アリスより才能があるわね。他には」とメアリーが言うと
「波超えし 嫁ぐ乙女の 美しさ」
「わぁ こんなのを待っていたのよ。良かったいい侍女を選んだわ。そう言えば名前はなんだった?」とメアリーが言うと
「え?わたくしはライラと申します」と侍女は答えた。
「ライラね。わたしを独り占めして仕えるって、おまえは幸せ者ね」とメアリーが言うと
「・・・はい、王女殿下」とライラは答えた。
途中泊まった宿は、港に行くときに泊まっていた宿だったが、ここでアリスは気がついた。自分は安い宿に泊まっていたことに。
伯母と移動する時は、馬車も宿も別で
「自立心を養うためよ」って説明されていて、その時は嬉しかったけど・・・
ほんとにクソ伯母ね。メアリーに意地悪してやってるからいいけどとアリスは
意地悪が くせになったら 止められない と頭に浮かんで、怖いもの見たさで、メニリーフ王国へ行ってみようかとちらっと思って、ダメダメと自分に言い聞かせていた。
『いいかげん やめて欲しいな 五七五』とアリスが馬車を降りながら思っていると
「アリちゃん」「アリちゃ」「アリちゃーーん」と声をかけられた。
「あーーー久しぶり。遊びに来てみたけど・・・いい?」とアリスが答えると
「いいに決まってるよ」の言葉に皆で笑っていると
「静かにしろ。離れろ」と王女の護衛が怒鳴りつけた。
「ごめん、後でね。見送ったら」とアリスが囁くと
「怖。怖。ちょっと失礼なやつら。後でね。アリス」と海の一族の若者達は去って行った。
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