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第35話 出航
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「アリス、ぼさっとしてないでメアリーのお見送りの列に並びなさい」と王妃に言われて
「荷物を積み終わるまで時間がかかるのでは、ありませんか?」とアリスが返すと王妃は「あっ」と気がついたようだが
「待機してなさい」ときつい声で言った。
「それはいただけないな。アリスは休養が必要だ」とデイビスが言ってさらにアレクが
「そう、ちょっと散歩したら、僕たちの馬車で休憩だ。積み込みが終わったらわたしたちもお見送りをさせて貰うよ。王族の船出だ」と言うとアリスを連れて去って行った。
「はぁアレク様、来ていただいてありがとうございます。意地悪したり、からかったりしてたのですが、やはり疲れました」
「体をほぐすように少し歩きましょう」とデイビスが少し大股で歩き出すとアリスも真似して歩きだした。
するとすぐに
「アリちゃん」「アーリーちゃん」「アリちゃ」と呼ばれながら囲まれた。
「アリちゃんが来たけど護衛がいて話せなかったって聞いたよ」
「うん、遊びに来た。それでね」とアリスが言うと
「アリちゃんが、遊びに来たのがわかれば今はそれだけでいい。今日がいい?明日がいい?」と言った。
「明日がいい。四人で来たの」と言うと
「おぉ、たくさん食べて貰えるな。飲めるのか?」
「付き合う程度だ」とデイビスが答えると
「楽しみだ。だが、あの女はなんだ?あの王妃のなにかか?」
「娘。だからこの国の王女」とアリスが答えると
「わかった」と簡単な返事とともに、周りから人がいなくなった。
三人は馬車に戻ってお茶を飲みながら話をした。
「海の一族はわたくしのことをアリちゃんと呼びます。わたくしはそれぞれを名前で呼びます。先ほど話した感じだとご馳走責めになりますね。たくさん食べられるようになったのを見せてやります」とアリスが言うと
「うん、頼もしいな」とデイビスが笑い
「見せてやる たくさん食べて 元気だぞ って所ですね」とアリスが言うと
「メニリーフ王国に乗り込めるな」とアレクも笑った。
「積み込みが終わったようです」と知らせが来て三人は馬車を降りた。
アレクがさっさと歩いて、王妃の隣りに立った。
見送りの列は出来ていないが、見送りの人に囲まれたメアリーは自信たっぷりの態度で立っている。後ろにライラが控えている。
メアリーがライラになにか話しかけ、ちょっと考えたライラが答えた。
「彼の国へ 赴く薔薇よ 香が残る」 とメアリーが言った。
アレクが拍手すると、皆も拍手した。
「化の国へ 赴く薔薇は すぐ枯れる」とアリスは心でつぶやきながら、拍手をした。
船に乗り込んで、甲板から見下ろして手を振るメアリーに王妃も手を振る。
メアリーの後ろに立っているライラも王妃を見下ろした。
やがて船が動き出した。小さくなっていく船を王妃はじっと見ていた。
アリスたちが馬車に乗り込んでも王妃は、じっと見送っていた。
「あの女、いけすかないやつだ」「王妃ばばぁの娘だぜ」「アリスに意地悪してたって」
メアリーの乗った船に担当をしている「海の一族」が、話している。
そして不思議なことに海はさほど荒れていないのに、船が揺れた。動き出してすぐに、港から出る前に揺れだした。
メアリーはたまらず、ベッドに入った。
ライラも辛そうにソファに横になって、そのまま二人は動けなくなった。
船員は親切で水は毎日取り替えてくれた。ただ、水も飲みたくなかった。
「今回は嫌われたようだね。ひどいね。長くかかりそうだし。四日荒れて二日で治まって到着になるかな」と船員たちは話していた。
船員の噂話のように五日目の朝、揺れが治まった。
揺れが治まるとメアリーはベッドから出て、甲板を歩いた。
「あそこが王国ですよ。運がよければ三日で到着ですが、今回は大変でしたね」と船員がライラに話しかけた。
「三日って習ったけど。あなたたちの腕が悪いから時間がかかったのね。災難だったわ」と隣りで聞いていたメアリーがそう言うと船員は黙って頭を下げた。
しばらく甲板を歩き回っていたメアリーは、部屋に戻った。
ライラは船員にどれくらいで到着するか確認した。
「後、二時間くらいですね。迎えの馬車が来てから船を降りたらいいですよ」と言われて
「はい、わかりました。よろしくお願いします」とライラは軽く頭を下げると、メアリーのもとに戻り、お茶の支度をした。
「到着してから迎えの馬車が来てから王女殿下が降りるそうです。お茶がすんだら支度をしましょう」と侍女が言うと
「わかったわ。あのドレスで驚かせるわ」とメアリーは壁にかけてある派手なドレスを見た。
地味な服装で降りるように、アリスから言われていたが聞くはずもなく、逆に派手なのを着ることにした。
出迎えの一行が待ちくたびれて腹を立てた頃、メアリーが胸を張って降りて来た。
メアリーの首のネックレスが日に当たって煌めいた。
「お待ちしておりました」と頭を下げた一行に
「出迎えご苦労様。疲れたわ」と言ったメアリーに出迎えの一行は、さらにむかっとしたが、押さえて
「長の旅路をお出で下さいました。みなさま、お城で待っておられます」と馬車に案内する。
「そちらは手土産ですか?」と荷物を見た相手から、問いかけられたメアリーは
「はい。『手土産は』荷物のなかに入ってますので、お届けは後ほどになります」と答えた。
待たされていらいらしていた馬に、メアリーの様子を見て、いらいらした馭者がムチをくれると馬は走り出した。
「おぅ」と思わずメアリーが声を出すほど乱暴な走りだった。
遠ざかる馬車を船員たちは
「あーーあ」と言いながら見送った。
「荷物を積み終わるまで時間がかかるのでは、ありませんか?」とアリスが返すと王妃は「あっ」と気がついたようだが
「待機してなさい」ときつい声で言った。
「それはいただけないな。アリスは休養が必要だ」とデイビスが言ってさらにアレクが
「そう、ちょっと散歩したら、僕たちの馬車で休憩だ。積み込みが終わったらわたしたちもお見送りをさせて貰うよ。王族の船出だ」と言うとアリスを連れて去って行った。
「はぁアレク様、来ていただいてありがとうございます。意地悪したり、からかったりしてたのですが、やはり疲れました」
「体をほぐすように少し歩きましょう」とデイビスが少し大股で歩き出すとアリスも真似して歩きだした。
するとすぐに
「アリちゃん」「アーリーちゃん」「アリちゃ」と呼ばれながら囲まれた。
「アリちゃんが来たけど護衛がいて話せなかったって聞いたよ」
「うん、遊びに来た。それでね」とアリスが言うと
「アリちゃんが、遊びに来たのがわかれば今はそれだけでいい。今日がいい?明日がいい?」と言った。
「明日がいい。四人で来たの」と言うと
「おぉ、たくさん食べて貰えるな。飲めるのか?」
「付き合う程度だ」とデイビスが答えると
「楽しみだ。だが、あの女はなんだ?あの王妃のなにかか?」
「娘。だからこの国の王女」とアリスが答えると
「わかった」と簡単な返事とともに、周りから人がいなくなった。
三人は馬車に戻ってお茶を飲みながら話をした。
「海の一族はわたくしのことをアリちゃんと呼びます。わたくしはそれぞれを名前で呼びます。先ほど話した感じだとご馳走責めになりますね。たくさん食べられるようになったのを見せてやります」とアリスが言うと
「うん、頼もしいな」とデイビスが笑い
「見せてやる たくさん食べて 元気だぞ って所ですね」とアリスが言うと
「メニリーフ王国に乗り込めるな」とアレクも笑った。
「積み込みが終わったようです」と知らせが来て三人は馬車を降りた。
アレクがさっさと歩いて、王妃の隣りに立った。
見送りの列は出来ていないが、見送りの人に囲まれたメアリーは自信たっぷりの態度で立っている。後ろにライラが控えている。
メアリーがライラになにか話しかけ、ちょっと考えたライラが答えた。
「彼の国へ 赴く薔薇よ 香が残る」 とメアリーが言った。
アレクが拍手すると、皆も拍手した。
「化の国へ 赴く薔薇は すぐ枯れる」とアリスは心でつぶやきながら、拍手をした。
船に乗り込んで、甲板から見下ろして手を振るメアリーに王妃も手を振る。
メアリーの後ろに立っているライラも王妃を見下ろした。
やがて船が動き出した。小さくなっていく船を王妃はじっと見ていた。
アリスたちが馬車に乗り込んでも王妃は、じっと見送っていた。
「あの女、いけすかないやつだ」「王妃ばばぁの娘だぜ」「アリスに意地悪してたって」
メアリーの乗った船に担当をしている「海の一族」が、話している。
そして不思議なことに海はさほど荒れていないのに、船が揺れた。動き出してすぐに、港から出る前に揺れだした。
メアリーはたまらず、ベッドに入った。
ライラも辛そうにソファに横になって、そのまま二人は動けなくなった。
船員は親切で水は毎日取り替えてくれた。ただ、水も飲みたくなかった。
「今回は嫌われたようだね。ひどいね。長くかかりそうだし。四日荒れて二日で治まって到着になるかな」と船員たちは話していた。
船員の噂話のように五日目の朝、揺れが治まった。
揺れが治まるとメアリーはベッドから出て、甲板を歩いた。
「あそこが王国ですよ。運がよければ三日で到着ですが、今回は大変でしたね」と船員がライラに話しかけた。
「三日って習ったけど。あなたたちの腕が悪いから時間がかかったのね。災難だったわ」と隣りで聞いていたメアリーがそう言うと船員は黙って頭を下げた。
しばらく甲板を歩き回っていたメアリーは、部屋に戻った。
ライラは船員にどれくらいで到着するか確認した。
「後、二時間くらいですね。迎えの馬車が来てから船を降りたらいいですよ」と言われて
「はい、わかりました。よろしくお願いします」とライラは軽く頭を下げると、メアリーのもとに戻り、お茶の支度をした。
「到着してから迎えの馬車が来てから王女殿下が降りるそうです。お茶がすんだら支度をしましょう」と侍女が言うと
「わかったわ。あのドレスで驚かせるわ」とメアリーは壁にかけてある派手なドレスを見た。
地味な服装で降りるように、アリスから言われていたが聞くはずもなく、逆に派手なのを着ることにした。
出迎えの一行が待ちくたびれて腹を立てた頃、メアリーが胸を張って降りて来た。
メアリーの首のネックレスが日に当たって煌めいた。
「お待ちしておりました」と頭を下げた一行に
「出迎えご苦労様。疲れたわ」と言ったメアリーに出迎えの一行は、さらにむかっとしたが、押さえて
「長の旅路をお出で下さいました。みなさま、お城で待っておられます」と馬車に案内する。
「そちらは手土産ですか?」と荷物を見た相手から、問いかけられたメアリーは
「はい。『手土産は』荷物のなかに入ってますので、お届けは後ほどになります」と答えた。
待たされていらいらしていた馬に、メアリーの様子を見て、いらいらした馭者がムチをくれると馬は走り出した。
「おぅ」と思わずメアリーが声を出すほど乱暴な走りだった。
遠ざかる馬車を船員たちは
「あーーあ」と言いながら見送った。
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