気がついたら無理!絶対にいや!

朝山みどり

文字の大きさ
47 / 68

第46話 迎えに行く

しおりを挟む
「アリス、メニリーフ王国へ行きませんか?メアリーさんのお迎えを兼ねて、観光で」とアレクが朝食の席で言った。

「お迎えですか? ふっふふ、多分限界でしょうね。待ってるでしょうね」とアリスが答えると

「お迎えって名目があれば、入れてくれるでしょうね」とデイビスが言えば

「確かにそれなら入れますね・・・実は行ってみたいと思ったのですけど・・・ですけど勇気がなくて。あの怖い報告書が本当だったら・・・でもちょっとね。悪いとね。思っていたので。お迎えに行くのはいいですね」とアリスが反省してますって風で言うのをアレクとデイビスが笑いをこらえて見ていたが

「先ず、メアリーさんとライラの様子を見に行く。行ったついでに観光。あの半分鎖国している国に入るいい口実だ。アリスも外交デビューかな」とアレクが言えば

「まぁ準備しておいて良かったわ」と控えていたラズベリーが両手を打ち合わせて言った。
「そうね、ラズベリー。さすがね」とアリスが言うと、ラズベリーは

「わたくしと言うよりは」とアレクを意味ありげに見た。

「あぁアレク様が・・・ありがとうございます」
「わたしが選んだから・・・気に入ってくれるといいが」
「アレク様が選んだ物は好きです。アレク様に包まれているような・・・」と最後まで言えずに言葉が切れた。アリスはなんだか恥ずかしいことを言ったような気がして・・・うつむいてしまった。

アレクもそれを聞いていつもの落ち着きとがなくなって

「いや、その、なにか、気に・・・気にいって・・・また、また、買い物に」と言っていると、ラズベリーが笑いをこらえながら

「出発はいつですか?」と事務的に言った。

「行くと決めたらすぐに行きたい。アリスはどうかな?」とアレク言うと

「うん、早いほうがいいですね。明日でもいいくらいです」とアリスが答えると

「では明日。出発しよう。ここの王室に報告するのは帰国してからだな」とアレクが言うと
「それがいいですね」とデイビスが答えた。


翌日、誰の見送りも受けずに馬車が三台、王宮を出た。

船は四人が乗り込むと滑るように動き出した。

「どれくらいかかるかな?」とアリスが鏡のような海を見ながら言うと

「三日だそうだ」とデイビスが答えた。

アリスは毎日、甲板を早歩きで往復して過ごした。

そしていくつかの島を通り過ぎて陸が見えて来るとじっと立って近づくのを見た。

先に荷物を降ろして馬車に積み込んでから、四人は船から降りた。

アリスは船に向かって手を振ると馬車に乗り込んだ。



馬車が見えなくなると一族はこの国の沿岸を調査するために出発した。


四人は控え室に案内された。そこでアリスは髪を結い直した。

ほどなく迎えが来て国王夫妻と会うために移動した。

貴族が並ぶ部屋でラズベリーとデイビスは壁際に控え、アリスとアレクは並んで国王夫妻のもとへ向かった。

アリスは深く頭を下げたが、アレクは軽く会釈をした。

「今、ここにいるメアリー嬢の迎えに来たと言うことだな」と国王が言うと

「はい」とアレクが返事をすると

「メアリー嬢を中へ」と王が声をかけた。

地味に髪を結い古びたドレスを着たメアリーがライラに付き添われて入って着た。

『あら、ドレスが似合ってない。けっこう苦労した?ってライラやつれてる』とアリスは思いメアリーの様子を観察した。


国王が口を開いた。

「メアリー嬢、始めて顔を見るな」『始めて?どういうこと?』とアリスが混乱していると、メアリーが腰を曲げて頭を下げた。

「良い」と国王が言うとメアリーは頭を上げたがなにも言わなかった。そこにアレクが声をかけた。

「こんにちは、メアリー様。迎えに来ました。王妃殿下が寂しがっておられます。一度戻って下さい」

「母上が?」

「はい、とても寂しがって、ご自身で迎えに来たいと・・・ですがそれは無理ですのでわたくしどもが参りました」

「そうお。母上が、仕方ないわね。一度帰ります」

「かしこまりました。それではわたしは鉱山の視察に参りますので、それまでここで待っていて下さい」

「鉱山に行くの?一緒に行くわ」とメアリーが言った。顔に生気が戻った。

「それは頂けないな」とアレクが答えた時

「お土産です。まだ来ますよ」と箱が運び込まれた。

部屋にいる貴族がどよめいた。

「その赤い印の箱を先に開けて下さい。貴族の方へのお土産です。どんなものがいいのかわからなかったので、バッグを用意しました」とデイビスが言うと

「お配りします」とラズベリーがバッグを抱えて配り始めた。アリスも配り始めた。

「貰った者は引き取ってくれ」と国王の側近や侍従が声をかける。

やがて、部屋には貴族と入れ替わりにやって来た。おば様たちとちいおじ様たちが並んだ。

「この方たちは?」とデイビスが言うと

「おば様。ちいおじ様です」とパールが言った。四人とも意味がわからなかったが、追求しなかった。

「なるほど。黄色い印の箱を開けて下さい」とデイビスが言うと

ちいおじ様たちがさっと箱を開け始めた。

「布を持って参りました」とアレクが言うと

おば様たちはさっと取り出しては体に当てて行く。お互いの姿を見て燥いでいたが、それも治まり、布を手に頭を下げて出て言った。

ちいおじ様たちはラズベリーが布を当てて似合うのを渡している。やがてちいおじ様たちも出て行った。

「さて、メアリー嬢はこの者たちと一緒に鉱山に行きたいのだな?」と国王が言うと

メアリーは
「はい」と答えた。

「どうかな?」とアレクに国王は顔を向けた。

アレクは
「鉱山なんて行くのが大変だよ」とメアリーに言った。
しおりを挟む
感想 284

あなたにおすすめの小説

言い訳は結構ですよ? 全て見ていましたから。

紗綺
恋愛
私の婚約者は別の女性を好いている。 学園内のこととはいえ、複数の男性を侍らす女性の取り巻きになるなんて名が泣いているわよ? 婚約は破棄します。これは両家でもう決まったことですから。 邪魔な婚約者をサクッと婚約破棄して、かねてから用意していた相手と婚約を結びます。 新しい婚約者は私にとって理想の相手。 私の邪魔をしないという点が素晴らしい。 でもべた惚れしてたとか聞いてないわ。 都合の良い相手でいいなんて……、おかしな人ね。 ◆本編 5話  ◆番外編 2話  番外編1話はちょっと暗めのお話です。 入学初日の婚約破棄~の原型はこんな感じでした。 もったいないのでこちらも投稿してしまいます。 また少し違う男装(?)令嬢を楽しんでもらえたら嬉しいです。

【完結済】後悔していると言われても、ねぇ。私はもう……。

木嶋うめ香
恋愛
五歳で婚約したシオン殿下は、ある日先触れもなしに我が家にやってきました。 「君と婚約を解消したい、私はスィートピーを愛してるんだ」 シオン殿下は、私の妹スィートピーを隣に座らせ、馬鹿なことを言い始めたのです。 妹はとても愛らしいですから、殿下が思っても仕方がありません。 でも、それなら側妃でいいのではありませんか? どうしても私と婚約解消したいのですか、本当に後悔はございませんか?

【完結】不貞された私を責めるこの国はおかしい

春風由実
恋愛
婚約者が不貞をしたあげく、婚約破棄だと言ってきた。 そんな私がどうして議会に呼び出され糾弾される側なのでしょうか? 婚約者が不貞をしたのは私のせいで、 婚約破棄を命じられたのも私のせいですって? うふふ。面白いことを仰いますわね。 ※最終話まで毎日一話更新予定です。→3/27完結しました。 ※カクヨムにも投稿しています。

そんなに妹が好きなら死んであげます。

克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。 『思い詰めて毒を飲んだら周りが動き出しました』 フィアル公爵家の長女オードリーは、父や母、弟や妹に苛め抜かれていた。 それどころか婚約者であるはずのジェイムズ第一王子や国王王妃にも邪魔者扱いにされていた。 そもそもオードリーはフィアル公爵家の娘ではない。 イルフランド王国を救った大恩人、大賢者ルーパスの娘だ。 異世界に逃げた大魔王を追って勇者と共にこの世界を去った大賢者ルーパス。 何の音沙汰もない勇者達が死んだと思った王達は……

【完結】旦那様、その真実の愛とお幸せに

おのまとぺ
恋愛
「真実の愛を見つけてしまった。申し訳ないが、君とは離縁したい」 結婚三年目の祝いの席で、遅れて現れた夫アントンが放った第一声。レミリアは驚きつつも笑顔を作って夫を見上げる。 「承知いたしました、旦那様。その恋全力で応援します」 「え?」 驚愕するアントンをそのままに、レミリアは宣言通りに片想いのサポートのような真似を始める。呆然とする者、訝しむ者に見守られ、迫りつつある別れの日を二人はどういった形で迎えるのか。 ◇真実の愛に目覚めた夫を支える妻の話 ◇元サヤではありません ◇全56話完結予定

虐げられてる私のざまあ記録、ご覧になりますか?

リオール
恋愛
両親に虐げられ 姉に虐げられ 妹に虐げられ そして婚約者にも虐げられ 公爵家が次女、ミレナは何をされてもいつも微笑んでいた。 虐げられてるのに、ひたすら耐えて笑みを絶やさない。 それをいいことに、彼女に近しい者は彼女を虐げ続けていた。 けれど彼らは知らない、誰も知らない。 彼女の笑顔の裏に隠された、彼女が抱える闇を── そして今日も、彼女はひっそりと。 ざまあするのです。 そんな彼女の虐げざまあ記録……お読みになりますか? ===== シリアスダークかと思わせて、そうではありません。虐げシーンはダークですが、ざまあシーンは……まあハチャメチャです。軽いのから重いのまで、スッキリ(?)ざまあ。 細かいことはあまり気にせずお読み下さい。 多分ハッピーエンド。 多分主人公だけはハッピーエンド。 あとは……

【完結】わたしの欲しい言葉

彩華(あやはな)
恋愛
わたしはいらない子。 双子の妹は聖女。生まれた時から、両親は妹を可愛がった。 はじめての旅行でわたしは置いて行かれた。 わたしは・・・。 数年後、王太子と結婚した聖女たちの前に現れた帝国の使者。彼女は一足の靴を彼らの前にさしだしたー。 *ドロッとしています。 念のためティッシュをご用意ください。

婚約破棄は別にいいですけど、優秀な姉と無能な妹なんて噂、本気で信じてるんですか?

リオール
恋愛
侯爵家の執務を汗水流してこなしていた私──バルバラ。 だがある日突然、婚約者に婚約破棄を告げられ、父に次期当主は姉だと宣言され。出て行けと言われるのだった。 世間では姉が優秀、妹は駄目だと思われてるようですが、だから何? せいぜい束の間の贅沢を楽しめばいいです。 貴方達が遊んでる間に、私は──侯爵家、乗っ取らせていただきます! ===== いつもの勢いで書いた小説です。 前作とは逆に妹が主人公。優秀では無いけど努力する人。 妹、頑張ります! ※全41話完結。短編としておきながら読みの甘さが露呈…

処理中です...