魔力がなくなって冷遇された聖女は、助けた子供に連れられて

朝山みどり

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08 ルナ・ドール侯爵夫人

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「ちょっと、遊びすぎたみたいで、膝が痛いの」とルナ・ドール侯爵夫人は一見やさしい口調で言った。

『治して当たり前よ』という気持ちがにじみ出ている。オリビアはこの夫人が苦手だ。だが、決して敵にしてはいけない人物だ。

「最初にきちんと治療しておきませんと、時間がかかるようになりますわ」と丁寧に答えた。

普段通りに魔力をこめたが、なにも起こらなかった。それで膝に手を当てて魔力を込めようとしたが、魔力が出てこない。


「あら、オリビア珍しいわ。あなた手を触れずに治療するのに」

「はい、いえ、その症状が変わったように見えましたので」

「なら、早く治療して」と夫人はきつい声で言ったが、なにも起こらなかった。


エメが

「やはり、オリビア様、無理しすぎだんですよ。ドール侯爵夫人になにもできないなんて、おかしいです」

「どういうこと?オリビア」と侯爵夫人の声が尖った時


「見せていただけますか?」とロザリーが声をかけた。

「オリビア様は調子が悪いようですの」

「あなたはたしかロザリーさんね」

「ロザリーとお呼び下さい。治療してよろしいですか?」

「えぇ、そうだオリビアは下がった方がいいのでは?」とドール夫人が言うとオリビアはロザリーを睨んだが、

「オリビア様、そうさせていただきましょう」とエメが声をかけオリビアの背に手を添えて歩み去った。


「ロザリー、よろしくね」と夫人が言えば

「おまかせを」とわざと伏し目がちに、言葉少なに応じ、わざと時間をかけて魔力を出した。

長くためて出された魔力は、ふんわりと夫人の体を包んだ。

夫人の侍女が

「丁寧な治療ね」とささやきあっている。


「どうでしょうか?」と少し息を切らしたロザリーの声にはっと気づいた夫人は、侍女の手を借りて立ち上がったが、手を振り払ってたったったと歩いた。

「素晴らしいわ、なんともない。おぉロザリーありがとう」

「よかったですわ。わたくしも驚きました。こんなに気持ちのいい治療はあまりありませんので、魔力の相性がいいんですね」

とロザリーが疲れた風を装って答えた。

「そうなの・・・・よかったわ。わたしもロザリーを見つけたって事ね。こんなになるまで心を込めてくれてありがとう」

「奥様、これなら間に合いますわ」と侍女が声をかけると

「あら、まさかが起こったわね。痛みがとれなかったら欠席しようと思っていたの。もう行くわね」

そういうとドール夫人は弾む足取りで出て行った。


ロザリーとガーネは顔を見合わせて、口元で笑った。


それから、ロザリーは椅子に腰を下ろすと

「今日は終わり。いろいろ疲れた」ガーネはそれを聞くと外に出て

「カミーユ、終わりよ」と言った。

いつもなら門番に終わりの連絡をするのだが、ガーネはそれをやらなかった。


「レイ、終わりよ。診療室を掃除しましょ」とカミーユはレイモンドに言うと、二人は手を繋いで診療室に入った。




いきなりドアが開いた。

「誰もいないのか?」と男の声が響いた。

「僕たちだけです、終わって掃除をしてますが」とレイモンドが答えると

「なんだと、まだ早いではないか」

「門の所で聞きませんでしたか?終わりの連絡はしたはずですが・・・」とカミーユが言うと

「なにも聞いてない。主人が足をくじいたのだ。さっさと治せ」

従者がレイモンドくらいの子供を抱えてはいってきた。


レイモンドがにやりと笑った。


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