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17 夜会
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オリビアはパーシーから贈られたドレスをまといエスコートされて、会場にいた。
オリビアは予感していた。今日、素敵なことが起こると。
だから、ロザリーもジェラルド殿下も気にならない。ロザリーがドレスの色のチーフを身につけているのも気にならない。
ルナ・ドール夫人がパーシーより先にジェラルドに挨拶に行ったのも気にならない。挨拶をすませたドール夫人が離れて行ったのも気にならない。
パーシーが・・・うっかり自分をカミーユと呼んだのもすぐに忘れた。気に止めない。
国王夫妻が入場して、やがてダンスが始まった。
パーシーと踊った。ドレスが心地よく翻った。踊り終わると国王の元へ挨拶に行った。
「楽に」の声がかかるのが少し遅いように感じたが、頭をあげて微笑んだ。
「パーシー、心配していたけどいい方を見つけましたね」と王妃が言うと
「はい、王妃殿下」
「オリビア、息子をよろしく頼みます」
「はい、王妃殿下」とオリビアも答えた。
「次が待っておる。また後でな」と国王が言うと、二人は移動した。
もう一度踊って二人は、バルコニーで少し休憩した。
「もう、体調は大丈夫だろうか?町で無理をしたと思うが?」とパーシーが心配そうに言うと
「大丈夫です。調子が戻ったようです」と答えた。
「だといいのだが、やはり能力が高いほうがいいので・・・無粋で申し訳ないが」
「わかっております。その・・・父も殿下への助力は惜しみません」
「そうか、助かる」
「でも、殿下。わたくしの真心は殿下に捧げております」
その時、会場がざわざわとなり、悲鳴も聞こえた。二人はすぐに様子を見に行った。
階段から人が落ちたようだ。
「聖女が助ける。少し離れろ。場所を開けろ」とパーシーが指示をしながらオリビアの手を引いて急ぐ。
駆けつけた先には二人倒れていた。
一人は頭を中心に血が流れ、じわじわ広がっていく。一人は足が折れたようだった。かなり大きな声で呻いている。
オリビアは先ず、頭を怪我したほうのそばに座った。
手をかざして集中した。魔力があふれて来た。頭の傷が治ったようだ。出血が止まった。
そこで、魔力がなくなった。プツンと勢いがなくなった。
思わず「え?」と声が出てしまった。
それからは、どうやっても力は湧いてこなかった。
人目も気にせずにどうして?と呟いた時、
「代わってよろしいでしょうか? 早いほうがいいですので・・・差し出がましいですが・・・あの・・・」とあのむかつく声が聞こえた。おもわず
「あ!?」ときつい声を出してしまった。
「あの・・・」
「オリビア殿、君の矜持を守って差し上げたいが、怪我人を助けたいのだ。ロザリーに治療を譲ってくれないか?」
「ありがとうございます。ジェラルド殿下」とロザリーの声が聞こえた。
「え?」と言う思いがうずを巻いて体が動かなかった。
「オリビア。ロザリー殿に場所を譲れ」とパーシーの声がした。
はっとしてオリビアは立ち上がった。腕をつかまれ後ろに引かれた。
パーシーの腕のなかにいたが、それはオリビアを拘束する腕で、暖かく守ってくれる物ではなかった。
「もう、安心ですよ」とロザリーが怪我人に話しかけながら手をかざした。
その声は『無能は行きましたから、安心ですよ』とオリビアに聞こえた。
ロザリーの手に集まった白い光は青く色を変えると頭を包みそれから全身に淡く広がった。
怪我人は目を開けた。体を起こそうとするのをロザリーは止めた。
「まだ全身の傷は治せていません。安静に」と言った。ジェラルドが合図をすると護衛の騎士が担架を持って近づいてきた。
怪我人が部屋を出るときに先ほど骨折した足を治してもらった男が、一緒に自分で歩いてついて行った。
彼も安静にとロザリーに注意されたが、
「こんなに完全に治療して貰ったんです。大丈夫ですよ」と元気に言い
「聖女様ありがとうございます」とお礼を言った。
「オリビアの体調はまだ戻ってないようだ。これで失礼する」とパーシーは言うと、オリビアの腰に手を回すと会場から立ち去った。
「大丈夫でしょうか?オリビア様、神殿でも治療が出来ずにオリビア様は魔力が枯れ・・・いえ、疲れがとれないのではないかと、長年のご奉仕で・・・」とロザリーが心配そうに言うのを現場にいた者はしっかりと聞いたのだった。
このまま夜会は終わり、出席者は明日から、どう振る舞えばいいのかを考えながら家路を急いだのだった。
その夜、伯爵の手勢が王都のはずれの小さな家を襲った。
オリビアは予感していた。今日、素敵なことが起こると。
だから、ロザリーもジェラルド殿下も気にならない。ロザリーがドレスの色のチーフを身につけているのも気にならない。
ルナ・ドール夫人がパーシーより先にジェラルドに挨拶に行ったのも気にならない。挨拶をすませたドール夫人が離れて行ったのも気にならない。
パーシーが・・・うっかり自分をカミーユと呼んだのもすぐに忘れた。気に止めない。
国王夫妻が入場して、やがてダンスが始まった。
パーシーと踊った。ドレスが心地よく翻った。踊り終わると国王の元へ挨拶に行った。
「楽に」の声がかかるのが少し遅いように感じたが、頭をあげて微笑んだ。
「パーシー、心配していたけどいい方を見つけましたね」と王妃が言うと
「はい、王妃殿下」
「オリビア、息子をよろしく頼みます」
「はい、王妃殿下」とオリビアも答えた。
「次が待っておる。また後でな」と国王が言うと、二人は移動した。
もう一度踊って二人は、バルコニーで少し休憩した。
「もう、体調は大丈夫だろうか?町で無理をしたと思うが?」とパーシーが心配そうに言うと
「大丈夫です。調子が戻ったようです」と答えた。
「だといいのだが、やはり能力が高いほうがいいので・・・無粋で申し訳ないが」
「わかっております。その・・・父も殿下への助力は惜しみません」
「そうか、助かる」
「でも、殿下。わたくしの真心は殿下に捧げております」
その時、会場がざわざわとなり、悲鳴も聞こえた。二人はすぐに様子を見に行った。
階段から人が落ちたようだ。
「聖女が助ける。少し離れろ。場所を開けろ」とパーシーが指示をしながらオリビアの手を引いて急ぐ。
駆けつけた先には二人倒れていた。
一人は頭を中心に血が流れ、じわじわ広がっていく。一人は足が折れたようだった。かなり大きな声で呻いている。
オリビアは先ず、頭を怪我したほうのそばに座った。
手をかざして集中した。魔力があふれて来た。頭の傷が治ったようだ。出血が止まった。
そこで、魔力がなくなった。プツンと勢いがなくなった。
思わず「え?」と声が出てしまった。
それからは、どうやっても力は湧いてこなかった。
人目も気にせずにどうして?と呟いた時、
「代わってよろしいでしょうか? 早いほうがいいですので・・・差し出がましいですが・・・あの・・・」とあのむかつく声が聞こえた。おもわず
「あ!?」ときつい声を出してしまった。
「あの・・・」
「オリビア殿、君の矜持を守って差し上げたいが、怪我人を助けたいのだ。ロザリーに治療を譲ってくれないか?」
「ありがとうございます。ジェラルド殿下」とロザリーの声が聞こえた。
「え?」と言う思いがうずを巻いて体が動かなかった。
「オリビア。ロザリー殿に場所を譲れ」とパーシーの声がした。
はっとしてオリビアは立ち上がった。腕をつかまれ後ろに引かれた。
パーシーの腕のなかにいたが、それはオリビアを拘束する腕で、暖かく守ってくれる物ではなかった。
「もう、安心ですよ」とロザリーが怪我人に話しかけながら手をかざした。
その声は『無能は行きましたから、安心ですよ』とオリビアに聞こえた。
ロザリーの手に集まった白い光は青く色を変えると頭を包みそれから全身に淡く広がった。
怪我人は目を開けた。体を起こそうとするのをロザリーは止めた。
「まだ全身の傷は治せていません。安静に」と言った。ジェラルドが合図をすると護衛の騎士が担架を持って近づいてきた。
怪我人が部屋を出るときに先ほど骨折した足を治してもらった男が、一緒に自分で歩いてついて行った。
彼も安静にとロザリーに注意されたが、
「こんなに完全に治療して貰ったんです。大丈夫ですよ」と元気に言い
「聖女様ありがとうございます」とお礼を言った。
「オリビアの体調はまだ戻ってないようだ。これで失礼する」とパーシーは言うと、オリビアの腰に手を回すと会場から立ち去った。
「大丈夫でしょうか?オリビア様、神殿でも治療が出来ずにオリビア様は魔力が枯れ・・・いえ、疲れがとれないのではないかと、長年のご奉仕で・・・」とロザリーが心配そうに言うのを現場にいた者はしっかりと聞いたのだった。
このまま夜会は終わり、出席者は明日から、どう振る舞えばいいのかを考えながら家路を急いだのだった。
その夜、伯爵の手勢が王都のはずれの小さな家を襲った。
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