魔力がなくなって冷遇された聖女は、助けた子供に連れられて

朝山みどり

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16 オリビア

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オリビアはいらいらしていた。自分でも魔力が枯れたとわかるからだ。

湧き上がって来るものがない。治療もずっと休んでいる。治療室には行くが、ロザリーが治療するのを見ているだけだ。

ロザリーの侍女も、嫌味を言わなくなった。それがまた勝利を確信した余裕に感じられて、いらいらが募る。

午後には部屋に戻ったが、父の伯爵が訪ねて来て、どうしてカミーユを追い出したのかと詰って来た。

「追い出したりしていません。神殿が追放したんですよ。役立たずには相応しいことですよ。むしろ遅すぎたくらいです」とオリビアは反論したが、

「違うんだ。追い出そうとする神殿をわたしが止めていたんだ。今、あいつはどこにいる?」と伯爵が言うのを

「ぞんじませんわ。獣人の従者と出て行きました。あの従者が急に大人になって・・・あんな男を従者にするから・・・だから追い出されたんですわ」とオリビアが答えると

「すぐに行方を捜す」と言うと出て行った。

「なんなのかしら」とオリビアが言うと

「なんでしょうね。下働きにしろって事でしょうか」と赤髪の侍女が首をかしげたが、

「あのレイ君ですけど、ここで雇えばどうですか?見栄えもいいですし、それなりに戦えそうですし」と言った。

「それはいいわね」とエメがうなづくと、オリビアも

「そうね、お父様にも言っておかないと・・・すぐに追いかけて」と赤髪の侍女に言った。



侍女は必死に追いかけて伯爵にオリビアの伝言を伝えた。

それを聞いた伯爵はあの子供なら自分も仕えさせたいと思い、承知の返事を持ち帰らせた。


伯爵は王都一帯を捜索した。冒険者ギルドも見張らせた。

そして、二人が王都のはずれに住んでいるのを発見した。昼間、カミーユが一人でいる事もわかった。

後は二人を捕まえるだけだ。



伯爵は夜、二人を攫おうと決めたが、見張りをさせている護衛の行方がわからなくなったかと思うと、森に倒れているのを冒険者に見つけられたり、路地裏に倒れていたりと不思議な事が続いた。


そうしているうちに、王家主催の夜会が近づいて来た。

パーシーから、オリビアをエスコートしたいと連絡が来た。伯爵もオリビアも喜んで準備をした。

オリビアがパーシーと共にドレスを作りに行った時、広場で馬があばれて多数の怪我人が出た。

オリビアはパーシーの手前、逃げる事も出来ず、怪我人の治療をした。

オリビアの銀の光は枯れることなく、怪我人の治療が出来た。なんと怪我人のなかにルナ・ドール夫人がいた。

夫人はもっと前にでて見物しようとして転んで足をくじいただけだったが、大騒ぎして自分を一番に治療しろと騒いでいた。

そこにオリビアが行き合わせた。

「夫人、他の方に比べたらあなたは軽傷です。なのも誰よりうるさい。ですから最初に治療をして貰います。恥を知りなさい」とパーシーが厳しく言った後、

「オリビア、すまないドール夫人を最初に治療してやってくれ」とオリビアに頼んだ。

「えぇ、わかりますわ」とオリビアは夫人の足首に手をあてて魔力を込めた。

「痛みはとりました。しばらく安静にして下さい」とオリビアが言うと

「ありがとう、助かったわ。さすがはオリビアね。この前ね、ロザリーが」と喋りだしたのをパーシーが遮って

「ドール夫人、怪我人が待っています。治療の邪魔はやめて下さい」と大きな声で言うと周囲が

「なんだ、あの女」「聖女様綺麗だね」「王子様、かっこいいし、怪我人に」「大した怪我じゃないのに我が儘だね」とか言い出した。それが聞こえたドール夫人は、侍女にうながされて去って行った。

その姿を横目で見ながらオリビアは溜飲が下がった。パーシーが味方してくれたのも心強かった。

それから、オリビアは全員の治療をやった。一番怪我がひどかったのは、暴れた馬の馭者だった。

馬車から投げ出されて、運、悪く馬車が足の上に乗り上げた。

だが、オリビアは彼の足を完全に治したのだ。これはオリビア自身も驚いた。

治療を終えて息をつくオリビアに周りのものは喝采を送った。

オリビアも魔力が戻ったことにほっとした。



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