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11 ニックの嫉妬
ポール・セレンが、地獄の狼を倒した?
聞いたとき、俺は笑った。いや、笑おうとした。でも喉の奥に引っかかって出てこなかった。
「そんなわけあるか」
そう言ったのは俺じゃない。ジョンだった。けど、俺も同じ気持ちだった。
地獄の狼。伝説だろ? 見ただけで死ぬとか、刃が通らないとか、本当なのか?戦士でも震えるような存在だ。それを、ポールが、一人で?あの、半分強化の間抜けが?
そう馬鹿にしようとしたが、心の奥に「さすがポールだ」と言う思いがあった。苦くて黒い。
ありえない。そんなこと、あってたまるか。
でも実際に、肉屋に運ばれてきたという巨大な狼の死体を見た時、俺の中で何かが崩れた。信じたくないのに、目の前にあるものが、それを否定させてくれなかった。
「これは・・・まさか、本物か?」
とか、あの肉屋が言ったと聞いた。その時、俺の心は凍りついた。
ポールが?あのポールが?
はずれの加護持ち。訓練場にも入れてやらなかった。塀の外で黙々と棒きれ振ってた、みすぼらしい姿しか知らない。俺たちが王都を目指して準備していた時、あいつは黙って、誰にも頼らず、訓練を続けていたらしい。
「偶然だろ。たまたまだ。運が良かっただけだ」
何度も言った。口癖のように自分に言い聞かせた。だけど村の連中の目が変わっていた。サイモンもグレンも、口には出さないが、ポールを認めていた。
悔しかった。苛立った。焦った。
だから、俺は決めた。もう、こんな村にいられるか。俺たちは王都に行く。最初からそのつもりだったが、今はもう理由が違う。ポールから逃げるわけじゃない。あいつなんか、関係ない。ただ、この空気に耐えられないだけだ。
王都に行けば、もっと強いやつがいる。俺たちの加護だって、一流だ。剣、弓、魔法、槍。仲間と連携すれば、どんな獣だって倒せるはずだ。
それに、王都じゃポールのことなんて誰も知らない。
いや、むしろ、知られるべきだ。
「半分強化」という間抜けなギフトをもらったやつがいてさ、何が強化されるか分からないんだってよ。右手だけ強くなったり、左足だけ早くなったり。運任せで、いつ切れるかも分からない。まるで賭けだろ。そんなギフトをありがたがって、毎日、棒切れ振り回してるんだ。
俺は王都で、そういって語ってやるつもりだ。
あいつの話を面白おかしく広めてやる。酒場でも、ギルドでも、行く先々で「半分強化のポール・セレン」のことを皮肉混じりにばらまいてやる。
そうでもしないと、俺のこの気持ちはどこにも行けない。
あの日、ポールに喉元へ木剣を突きつけられて、俺は初めて「負けた」と思った。けど、口に出せなかった。そんなの、認めたくなかった。
それなのに今度は、地獄の狼だと。笑わせるな。
俺は、俺たちは、ちゃんと訓練もしてきたし、加護の相性だって最高のはずだ。あんな、一人で棒を振ってたようなやつに、何もかも持っていかれるなんて、あってたまるか。
王都に行く。それが俺たちの答えだ。
ポールがこの村に残るなら、それでいい。せいぜい、半分強化で頑張ってればいいさ。
でも、もしあいつが王都に来たら?
許さない。追い返してやる。
俺たちは「本物」にならなきゃならないんだ。王都で名を上げて、ギルドに認められて、金を稼いで、地位を手に入れる。
伝説になるのは俺たちだ。ポールじゃない。
聞いたとき、俺は笑った。いや、笑おうとした。でも喉の奥に引っかかって出てこなかった。
「そんなわけあるか」
そう言ったのは俺じゃない。ジョンだった。けど、俺も同じ気持ちだった。
地獄の狼。伝説だろ? 見ただけで死ぬとか、刃が通らないとか、本当なのか?戦士でも震えるような存在だ。それを、ポールが、一人で?あの、半分強化の間抜けが?
そう馬鹿にしようとしたが、心の奥に「さすがポールだ」と言う思いがあった。苦くて黒い。
ありえない。そんなこと、あってたまるか。
でも実際に、肉屋に運ばれてきたという巨大な狼の死体を見た時、俺の中で何かが崩れた。信じたくないのに、目の前にあるものが、それを否定させてくれなかった。
「これは・・・まさか、本物か?」
とか、あの肉屋が言ったと聞いた。その時、俺の心は凍りついた。
ポールが?あのポールが?
はずれの加護持ち。訓練場にも入れてやらなかった。塀の外で黙々と棒きれ振ってた、みすぼらしい姿しか知らない。俺たちが王都を目指して準備していた時、あいつは黙って、誰にも頼らず、訓練を続けていたらしい。
「偶然だろ。たまたまだ。運が良かっただけだ」
何度も言った。口癖のように自分に言い聞かせた。だけど村の連中の目が変わっていた。サイモンもグレンも、口には出さないが、ポールを認めていた。
悔しかった。苛立った。焦った。
だから、俺は決めた。もう、こんな村にいられるか。俺たちは王都に行く。最初からそのつもりだったが、今はもう理由が違う。ポールから逃げるわけじゃない。あいつなんか、関係ない。ただ、この空気に耐えられないだけだ。
王都に行けば、もっと強いやつがいる。俺たちの加護だって、一流だ。剣、弓、魔法、槍。仲間と連携すれば、どんな獣だって倒せるはずだ。
それに、王都じゃポールのことなんて誰も知らない。
いや、むしろ、知られるべきだ。
「半分強化」という間抜けなギフトをもらったやつがいてさ、何が強化されるか分からないんだってよ。右手だけ強くなったり、左足だけ早くなったり。運任せで、いつ切れるかも分からない。まるで賭けだろ。そんなギフトをありがたがって、毎日、棒切れ振り回してるんだ。
俺は王都で、そういって語ってやるつもりだ。
あいつの話を面白おかしく広めてやる。酒場でも、ギルドでも、行く先々で「半分強化のポール・セレン」のことを皮肉混じりにばらまいてやる。
そうでもしないと、俺のこの気持ちはどこにも行けない。
あの日、ポールに喉元へ木剣を突きつけられて、俺は初めて「負けた」と思った。けど、口に出せなかった。そんなの、認めたくなかった。
それなのに今度は、地獄の狼だと。笑わせるな。
俺は、俺たちは、ちゃんと訓練もしてきたし、加護の相性だって最高のはずだ。あんな、一人で棒を振ってたようなやつに、何もかも持っていかれるなんて、あってたまるか。
王都に行く。それが俺たちの答えだ。
ポールがこの村に残るなら、それでいい。せいぜい、半分強化で頑張ってればいいさ。
でも、もしあいつが王都に来たら?
許さない。追い返してやる。
俺たちは「本物」にならなきゃならないんだ。王都で名を上げて、ギルドに認められて、金を稼いで、地位を手に入れる。
伝説になるのは俺たちだ。ポールじゃない。
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