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8.君のことばかり考えてしまう
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『タクミ、どうだ? おいしいか?』
いつもの定位置から鈴音は頬杖をついて、僕が食べるのを見守っている。鈴音がカレーライスを作ってくれたんだ。スプーンでごはんとルーを掬って、口に運ぶ。だけど、味がない。カレーで味がないってことあるのか? そう思いながらも期待に満ちた目で見つめてくる鈴音に笑みを返す。
『うん、おいしいよ』
『そうか。よかった。あ、タクミ、口の周りについてる』
鈴音はティッシュで僕の口元を拭ってくれた。
『タクミ、好きだ。一緒にいられて嬉しい』
『うん……僕も鈴音のこと好きだよ』
『タクミ、大好きだ』
視線が交わって、鈴音が距離を詰めてくる。頬に触れると、鈴音は瞳を閉じた。
…………
……
「タクミ……タクミ、起きろー!」
「えっ」
瞬時に自分がベッドの上にいることを把握し、今の出来事が夢だったのだと理解した。だけど、すぐ目の前には鈴音がいて、夢の中では触れる寸前だった唇から思わず目を逸らした。こんな夢を見るなんて、どうかしている。
「やっと起きた! タクミ、おはよう。今日は料理作る約束だ。早く準備しよう」
「おはよう。……僕、寝言とか言ってなかった?」
鈴音は首を傾げた。鈴音のことが好きとか、口に出してなくてよかった。なんだったんだよ、あの夢は。あれが僕の願望だということなのだろうか。悶々とひとり考える僕をまるい瞳が不思議そうに見つめる。
「どうした、こわい夢でも見たのか?」
「いや……もう忘れたよ」
僕の夢にはたいして興味がないようで、鈴音は立ち上がると、トースターでパンを焼き始めた。今日は食材と調理器具を買いに出かける予定だ。ピーラーは絶対に買うように鈴音から口酸っぱく言われている。鈴音は僕が仕事に行っている間に料理番組も見ているようだ。実践はまだだけど、イメージトレーニングは何回もしているらしい。期待大だ。
いつもの定位置から鈴音は頬杖をついて、僕が食べるのを見守っている。鈴音がカレーライスを作ってくれたんだ。スプーンでごはんとルーを掬って、口に運ぶ。だけど、味がない。カレーで味がないってことあるのか? そう思いながらも期待に満ちた目で見つめてくる鈴音に笑みを返す。
『うん、おいしいよ』
『そうか。よかった。あ、タクミ、口の周りについてる』
鈴音はティッシュで僕の口元を拭ってくれた。
『タクミ、好きだ。一緒にいられて嬉しい』
『うん……僕も鈴音のこと好きだよ』
『タクミ、大好きだ』
視線が交わって、鈴音が距離を詰めてくる。頬に触れると、鈴音は瞳を閉じた。
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「タクミ……タクミ、起きろー!」
「えっ」
瞬時に自分がベッドの上にいることを把握し、今の出来事が夢だったのだと理解した。だけど、すぐ目の前には鈴音がいて、夢の中では触れる寸前だった唇から思わず目を逸らした。こんな夢を見るなんて、どうかしている。
「やっと起きた! タクミ、おはよう。今日は料理作る約束だ。早く準備しよう」
「おはよう。……僕、寝言とか言ってなかった?」
鈴音は首を傾げた。鈴音のことが好きとか、口に出してなくてよかった。なんだったんだよ、あの夢は。あれが僕の願望だということなのだろうか。悶々とひとり考える僕をまるい瞳が不思議そうに見つめる。
「どうした、こわい夢でも見たのか?」
「いや……もう忘れたよ」
僕の夢にはたいして興味がないようで、鈴音は立ち上がると、トースターでパンを焼き始めた。今日は食材と調理器具を買いに出かける予定だ。ピーラーは絶対に買うように鈴音から口酸っぱく言われている。鈴音は僕が仕事に行っている間に料理番組も見ているようだ。実践はまだだけど、イメージトレーニングは何回もしているらしい。期待大だ。
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