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幕間2.魔女と少女

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 この世にひとつしかない、自分のためだけに作られた髪飾り。少女はそれを両の手のひらで包むように持ち上げ、うっとりと眺めた。髪飾りの中央には、タクミが「必ず迎えに来る」と言って持たせてくれた鈴が結び付けられている。

 机に向かうタクミの様子を窺う。「べんきょう」というのをしているらしく、この時間に邪魔をするとものすごく怒られる。嫌われたりしないように、静かにしておかなければ。せっかくタクミに『人間らしくなった』と認めてもらえたのだから。つまりそれは、恋人としてタクミの隣に立つ資格を得たと言ってもいいだろう。

 タクミは自分のことを好いているに違いない。だって、そうでもなければこんな素敵な贈り物をくれるわけがないのだ。昼間に見るテレビドラマでも、プレゼントは大切な恋人や愛する人に贈るものと決まっている。少女は舞い上がるような気持ちを抑えきれず、ベッドから立ち上がった。

「タクミ」

 集中しているタクミの邪魔はしたくない。控えめに呼びかけたが、聞こえなかったのか反応はない。手に持っていた髪飾りは枕の上に置いた。大切なものだから、落としてしまってはいけない。

 忍び足でベランダに通じる窓に近寄り、ゆっくりとひらく。途端に秋らしい甘い匂いの風を顔に浴びる。細く開けた窓の間を滑り出ると、濃紺の夜空に宝石のような星がきらきらと煌めいていた。

 少女は思わず駆け出した。タクミと暮らすようになってから、夜中に外を出歩くことはめっきりなくなった。しかし、猫の姿のときは夜こそが自由に動き回れる時間だった。

 明るい道よりも暗い道を選ぶ。それはすっかり染みついた習性のようなもの。けれど、途中で足を止める。今は人間なのだから、暗い路地を選ぶ必要はないのだ。

 街灯に照らされた整備された道を歩く。前方に仲睦まじげに寄り添って歩く恋人たちを見つけ、今ここにタクミがいたらなあ、と彼らの姿に自分とタクミを重ね、幸せな妄想に浸った。

 いつも、外を歩くときはタクミが隣にいて、手を握ってくれている。いつの間にかそれが当たり前のことになっている。

 空を見上げると、通りの明るさのせいか、あんなにたくさんあったはずの星が見えなくなってしまった。今にも消えてなくなりそうな細い月だけが心もとなげに浮かんでいる。





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