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11話 昔話

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「いい試合もしたし、これで昼食が美味しくなるぞ」
と言い楽しそうだ、僕もお腹を押さえ
「そうですね、主」
と言うとお腹がぐぅぅ~~と鳴った
「あらあら、アルカ君お腹空いちゃったの?」
と言うとエマ様が
「今回の昼食は期待してもいいわよ」
と何やら気になる事を言った
「それはどう言うことだい?」
と反応したのは主だった
「何と今回の昼食はアリアちゃんが作るのよ」
ために溜めて言い放った
「おう、それは楽しみだな、それと私は今から武器庫を直してくるからエマたちは先に行っといてくれ」
と主は言いながら武器庫を直しに行った
「あっ、そうだ、アルカ君森に行ってメアリーを呼んで来てくれない?」
とエマ様に言われ
「森にですか?」
と聞き返すと
「ええ、あの娘いつもあそこで魔法の練習をしてるのよ」
と困ったように言った
「分かりました、エマ様」
と言うとエマ様
「うん、それじゃあメアリーの事頼んだわよ」
と言いながら屋敷へと戻っていった
「じゃあ、僕も探しに行くとするか」
と言い、森へと足を進めた


「しっかし、この森深いなぁ、メアリーお嬢様は何処に居るんだろ?昼食までに間に合えば良いけど......」
と言いながら探していると
「私がどうしたのお兄ちゃん?」
と言う声が後ろから聞こえ、後ろを振り向くとメリーが不思議そうな顔をして立っていた
「メ、メリーここに居たんですね、もう昼食なので一旦屋敷に戻りましょう、それと今日の昼食はアリアが作るそうですよ」
と言うとメリーは少し不機嫌そうに
「ず、ずいぶんあの娘と仲良くなったのね?お兄ちゃん」
と言い先を歩いている
「ど、どうしたのですか?お嬢様?」
と僕は、メリーの雰囲気が変わったのを察知し、恐る恐る訊くと
「もう!お嬢様じゃなくて、メリーて呼んでよ!」
と怒られてしまった
「申し訳ありません、メリー」
と僕が謝ると、メリーは一瞬顔を曇らせ
「ううん、私の方こそごめんね、お兄ちゃん、今、魔法の操作が上手くいかなくてイライラしてた」
と言い謝ってきた、それを見て僕は
「やっぱり、そう言う所は変わりませんね、メリー」
と言い笑うと、メリーは不思議そうな顔で
「それって、どういう意味?」
と聞かれ
「忘れてるかも知れませんが、メリーに最初に無属性魔法のエンチャントを教えたのは、僕なんですよ?」
と僕が言うと、メリーは
「そんなの嘘だよ、だって私が魔法を習った人、クロって言う何だか口の悪い人だったもん」
と言い、否定した
やっぱり、覚えていたかと思いながら
「メリー、これから少し昔話をしますが聴いてくれますか?」
と僕が聞くとメリーは
「う、うん良いけど」
と言い戸惑っていた
そして、僕は昔話を始めた


                  ▲▼▲▼


この頃の僕は、家の中でも外でも素を出していた、だから口調も僕ではなく俺だった。要するにヤンチャしていた。
「はぁ~~、何で俺がわざわざ、父さんの友達の娘のお祝い何かしなきゃいけないんだよ」
と言いながら、宮殿に来た
「もぅ~~そんなこと言わずに付いてきてくださいよ兄様」
とアイリスに言われ俺は仕方なくついて行っていた
「しっかし、この屋敷凄いな、庭とは広すぎだろ、これだけ広ければ魔法の練習し放題じゃん」
と言いながら辺りをみわたしていると、金髪の女の子が庭でひっそりと1人で魔法の練習をしていた


それを見て、これはおもしろそうだなと思い俺はその女の子が居る庭に行くと
「もう!何で出来ないのよ」
と言いながら、近くにあった魔法書を投げ捨てた少女
「どうした?魔法書を投げて?」
と俺が訊くとその少女は目に涙を貯めながら
「だってこの補助魔法が出来なくて......」
と言いまた泣き出した、それを見て俺は溜息を吐きながら、少女の投げた魔法書を拾い上げ見ると
「えー、どれどれ......ってこれ初級魔法のエンチャントじゃんか!」
と俺が言うと、少女は
「うるさいわね、じゃあ貴方は出来るの?」
と言ってきた
「はっ、馬鹿にするなよこんなの、余裕だ」
と言うと俺は初級魔法のエンチャントの詠唱をした

《我が魔力よ 我が身体に宿れ エンチャント》

と詠唱すると、俺の体に魔力を具現化させ、敢えて見えるように纏った
「ふっ、どうだ!」
と俺が少しドヤ顔で言うと少女は悔しそうに
「い、いいもん、無属性が使えないくらい」
と言い意地を張る少女に少し苛立ちを覚えた俺は
「いつか、その馬鹿にしていた、無属性に負けることになるぞ」
と少しどす黒い声で言うと、少女は少し肩をビクッとさせて
「じゃあ、貴方が教えてくれない?」
とさっきの生意気な態度とは打って変わって俺に頼んできた
「うーーん......、まぁ、暇だしいいか」
と、いつもなら断っていた、俺だが、今回は珍しく受けた


「じゃあ、まずはエンチャントの詠唱からやってみ」
と俺が言うと、少女は頷き詠唱をはじめた

《我が魔力よ、我が身体に宿れ、エンチャント》

と少女が詠唱すると、俺程ではないが、少しだけ魔力が具現化していた
おいおい、マジかよ俺も具現化するまでに1年は掛かったのにこいつ......面白ぇと思いながら
「おおっ!、出来てるじゃないか、これのどこに問題があるんだ?」
と俺が聞くと、少女は
「私は、このエンチャントに属性を付けたいの!!」
と大声で言った、それを聞いて
「はぁ?お前馬鹿じゃねえの?エンチャントの属性付加は色決めの儀式で色が分かるまで出来ねぇぞ、それにエンチャントへの属性付加は上級魔法だぞ」
と俺が言うと少女は
「え?そうなの?、じゃあ今までの私の苦労って......」
と言い、少女がその場に座り込むと、俺は軽く笑って
「まぁ、そんなに落ち込むな、それにお前の頑張りは無駄では無いぞ」
と俺が言うと少女は顔を上げ俺を見て
「じ、じゃあどこが無駄じゃないの?」
と聴いてきた、それに俺は
「最初にも言ったが、お前は最初無属性なんか使えなくてもと言ったよな?だが、もしこのままずっと無属性魔法の練習をし無かったら、大事な場面で発動出来ないって事になるかも知れないと言うことに気づけた」
と俺が言うと、少女は
「確かに」
と納得したような表情をし言った
「あぁ、これからも努力する事を忘れるなよ?」
と言い、俺が部屋を出ようとした時
「ね、ねぇ、貴方の名前訊いても良い?」
と何故か顔を赤らめながら言われ、俺は、面倒だったから
「嫌だ、めんどいし」
と言い早々と行こうとすると、少女は俺の袖を掴み
「名前、教えてくれるまで離さないから」
と言い強く袖を掴んだ
「あ~~、もう分かったよ、俺の名前は......クロだ、理由があって家名は言えないが......」
と苦し紛れの言い訳をすると、少女は
「貴方、クロって言うのね、覚えたは、クロ、誕生日パーティーで会いましょ」
と言い、少女は俺より先に部屋を出てった
「全く、騒がしい娘だったな、さて俺も」
と言い、庭から屋敷に入ると、屋敷の中からアイリスが走ってきた、凄い顔で
「もぉ~~、兄様は今まで何やってるのですか!?」
と俺の話も聞かずに、別の部屋に連れ込まれた、そしてそこで髪を整えきちんと正装をし、口調を変え、パーティーに参加し、そこでメリーとまた会った

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「ていう事は、あのクロっでもしかしてお兄ちゃん?」
とメリーが凄い驚いた表情をして言った、そこで僕は仕方なく、昔の口調で
「あぁ、久しぶりだな」
と言うと、メリーは、嬉しそうに
「そうね、久しぶりクロ」
と言い笑っていた、そしてメリーと森を出る途中で
「それはそうと、そろそろ戻らないとエマ様に怒られますよ?」
といつもの口調に戻し僕が言うとメリーは
「あらっ、もうあの喋り方はしてくれないの?クロ?」
と少し意地悪っぽく笑いながら言った
「あの喋り方は、あの時限定です!」
と僕が言うと、メリーは笑いながら
「えー、あの喋り方でもいいのに」
と言い笑っていた
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