2 / 9
キックオフ
Episode 2
しおりを挟むこの試合はグループリーグ進出をかけた大事な公式戦だ。勝てば上に進めるが、引き分けであれば他のチームとの得失点差になる。負ければ予選敗退だ。部内では5月大会と呼ばれているので真琴もそう呼んでいるが、公式にもっと長い大会の名前があるらしい。とにかく、大事な試合であることに変わりはない。
ホイッスルと同時にボールを蹴り出したのはワントップを努める3年前澤一樹。前澤は言ってみれば館華高校のエースストライカーであり、同じFWとして真琴の憧れでもある存在だ。
一樹からのバックパスを中盤がテンポ良く繋ぐ。MFでありキャプテンの正田にボールが渡ると、正田はSHに上がるよう声を掛けて自分でボールを運んだ。
その動きに相手中盤が素早く対応する。正田に強くプレッシャーを掛け同SHのパスコースを限定。正田は何とかそのプレッシャーを交わし逆SHにロングパスを蹴り上げた。ボールは綺麗な軌道を描き、SHの足元に向かった。
「さすがキャプテン!!」
真琴が大声をあげたのも束の間、そのボールは惜しくも相手 SBにカットされてしまった。
「クソ!!惜しい!!」
真琴は思わず手を叩いた。
ボールを受けるために走っていた右SHの2年・荻野健介は顔を強張らせ、砂埃を立ててターンし急いで守備に回る。
しかし相手SBの正確なロングパスが通り、相手右SHにボールが収まり、一気に館華はピンチとなった。 左SBの1年・安田流星がじっくりと対応し味方が自陣に戻るまで時間を稼ぐ。安田は唯一、1年でスタメンとして出ている選手で、その扱いに充分納得できる実力を持っている。
「頼むぞ、流星」
隣で真琴と同じく"ベンチ外スタメン"である1年・小林航平が呟いた。真琴も同じ思いで黙って両手を合わせ、両方の親指に顎を乗せた。
安田の我慢強いディフェンスが功を奏し、相手の苦し紛れのクロスは安田の足に防がれタッチラインを割った。真琴と航平は静かにガッツポーズをした。
とはいえ依然、試合は相手のターン。スローインから暫くヘディングでの空中戦が行われ、そのこぼれ球にいち早く反応したのは相手FWの10番。
「マズイぞ……」と真琴の顎にも親指にも力が入った。瞬間、10番からグランダーのシュートが炸裂。右コースを抉るような角度で放たれたそのシュートに、航平が「入る」と小さな声を漏らした。
_____ヤバイ。
真琴は思わず目を閉じた。
「ナイスキー!!」
突然の航平の大声に、真琴はうわっと肩をビクつかせた。試合に目を戻すと、3年GK・青山好克がボールを右手に抱えてDFに喝を飛ばしていた。シュートを止めたのだ。
「おい、今の見たか?ヨッシーさんなら止めてくれると思ってた!」
「さっきお前『入る』つってたくせに、よく言うよ」
真琴が肘でどつくと、航平はアハハと眉を八の字にして笑い首の後ろをさすった。
気前が良く、穏やかな性格の青山は後輩からもヨッシーさんと呼ばれ親しまれていた。館華の頼りになる正GKだ。
キックオフから20分。試合の四分の一が終わった。
「まだまだこれからだ」
真琴は自分に言い聞かせるように、再び試合に意識を集中させた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。
「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…
なお、スピンオフもございます。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?
すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。
お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」
その母は・・迎えにくることは無かった。
代わりに迎えに来た『父』と『兄』。
私の引き取り先は『本当の家』だった。
お父さん「鈴の家だよ?」
鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」
新しい家で始まる生活。
でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。
鈴「うぁ・・・・。」
兄「鈴!?」
倒れることが多くなっていく日々・・・。
そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。
『もう・・妹にみれない・・・。』
『お兄ちゃん・・・。』
「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」
「ーーーーっ!」
※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。
※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。
※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる