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ある少年
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夜が明けて、朝が来た。
チミアル「………ん、朝…」
輝はまだ寝ている。
いつもの制服姿ではなくパジャマ姿ですやすやと。
チミアル(起こしたら悪いかな…)
時計は6時09分。チミアルはゆっくり起き上がった。
窓の外の景色はカーテンに遮られている。
カーテンを開けると暖かい日光が入ってきた。
そして、外には亜門弘市の街並みが目に飛び込んだ。
窓を開けると蒸し暑い空気が入ってきた。
扇風機はおやすみタイマーで夜中に停止していたようだ。
そして、チミアルの耳にはこの惑星の街の音が入ってきた。
遠くで鳴り響く救急車のサイレン。右にウィンカーを出したことを知らせるダンプカー。鬱陶しいくらいの蝉の声。近くの公園でやっているラジオ体操。爆音を鳴らしながら走り去るバイク。大音量で窓を開けならがら走行する自動車。
どれも彼にとっては新鮮なものだった。
母星は既に滅び…新たな母星を探す、それがクルー達である。
チミアルは母星が滅びた後、宇宙船内で生まれた。
そこから独学で科学を学び、やっとのことで科学者になれた。
しかし、彼の発明は誰にも評価されず、そのまま追放されてしまった。
ふと、彼は思いついた。
チミアル(…この惑星でなら、もう一度…やり直せる…?)
誰にも評価されなかったが、この惑星で新たな発明をして、この惑星の人達に評価されたい。
例え、種族が違くても。
星が違くても。
あれこれ、考えていると目覚ましのアラームが鳴った。
輝が布団から手を差し伸べ、スマホのアラームを止めようとする。
輝(………?あれ、ない?)
アラームが止まった。
自分は触ってないのに止まった。
チミアル「おはようございます。輝さん。」
輝「ん…おはよう。アラーム止めてくれたの?」
チミアル「うん。」
輝「そっか。ありがとう。」
チミアル「………(ちょっと嬉しい…)」
いつものように朝ごはんを用意して、食べて、歯磨きをして、制服に着替えて、スクールバッグを持って、靴を履いた。
チミアル「どこかに行くの?」
輝「…うん、学校に…行くの…一人でも大丈夫、だよね?」
チミアル「………?うん…(ガッコー…聞いたことがあるけど…)」
輝「ごめん、そろそろ行かないと電車に遅れちゃう。いってきます。」
チミアル「い、いってらっしゃい…(なんだか行きたくない様子だったな…なにか理由が…?)」
-JL亜門弘駅-
構内アナウンス「♪~(接近メロディ)まもなく、2番線に快速、高尾行きが十両編成で参ります。危ないので、黄色い線の後ろ側までお下りください。」
聞き慣れたアナウンス。
近づくオレンジのラインが入った電車。
ガタゴトと駅のホームに入線した電車。
ドアが開いた。
私はそれに乗った。
軽快なメロディが流れる。
ドアが閉まった。
私を乗せた電車がホームから走り去って行った。
憂鬱。
今の気分を漢字にするとこれ。
皆からちょっと嫌われているだけだけど…なんだか憂鬱。
車内アナウンス「この電車は、快速、高尾行きです。This train is a rapid train bound for 高尾. 次は因保素川、因保素川です。Next is 因保素川.(JC-25)」
無機質なアナウンス。違和感のある英語の発音。
私が降りる駅はここじゃない。
もう一つ先の天野銀市。
-約25分後-
学校に着いた。
校門を通って、玄関に入る。
すると、
???「来た。」
???「今日も来たの~?」
???「死ねばいいのに…」
早速私の耳に入る小さな声の悪口。
下駄箱の中にある自分の上履きを履こうとした。
輝「いっ!」
何かが足裏に刺さった。
急いで確認すると画鋲がセロハンテープで貼り付けられていた。
白い靴下に少し赤い血が染みる。
こりゃ帰ったら絆創膏だね。なんで警戒もせずに履いちゃったんだろう。
画鋲を取り除いて上履きを再び履いた。
クスクスと笑い声が聞こえる。
教室のドアの取手に手をかける。
そのままドアを開けた。
輝「お、おはよう。」
皆「……………」
今日も無視された。
自分の机には一輪の菊の花と『死ね』や、『ウザい』、『理系ぶるな』といった悪口が書かれていた。
鉛筆で書かれているので消しゴムで消せる。
消している最中にも笑い声が聞こえた。
-昼休み-
???「ちょっと、あんたこっち来なさいよ。」
輝「え?」
???「いいからさっさと来いよ!」
輝「分かった!分かったから…!」
輝「えっと…何か…用?」
???「テメェ、先生にチクったろ?」
輝「な、何の話………?」
???「とぼけんな!!」
輝「ひっ…」
???「お前、面貸せや。」
輝「え…」
突然、胸ぐらを掴まれた。
そして、
ベシッ!
ボコッ!
輝「……………っ」
???「お前、マジでウザい。死ね。」
???「ムカつく。消えろ。」
クラスの皆は冷たい目や可哀想な目で見て見ぬ振りをしている。先生は見向きもしない。中にはこっちを見て笑っている人もいた。
………でも、あの男子だけはこっちをじっと見つめている。
誰だっけ?あの子は………『宮島』くん、だっけ?
その時、宮島くんらしき男子が近付いてきた。
すると、
男子「やめろよ。」
輝「………え?」
???「は?何よあんた。」
男子「弱い者いじめして楽しいか?」
???「うっさいな!関係ないだろ!?」
男子「関係ないけど、見るのがもう耐えられない。これ以上同級生がいじめられているのを見たくない。」
???「はぁ?」
男子「複数で個人に力を誇示するのはみっともないぞ。」
???「…チッ、行くよ!」
輝「……………」
男子「大丈夫か?」
輝「…えっと、ありがとう…私は、大丈夫。」
男子「名前は?」
輝「あ、天川 輝。」
男子「そうか。俺は『宮島 賢』。野球部所属だ。」
輝「あの…どうして、助けてくれたの?」
賢「さっきも言ったろ。もう見るのが耐えられないって。」
輝「………とにかく、ありがとう。」
賢「どういたしまして。」
その日は、もう嫌がらせは受けなかった。
その後、何事もなく家に帰った。
-続-
チミアル「………ん、朝…」
輝はまだ寝ている。
いつもの制服姿ではなくパジャマ姿ですやすやと。
チミアル(起こしたら悪いかな…)
時計は6時09分。チミアルはゆっくり起き上がった。
窓の外の景色はカーテンに遮られている。
カーテンを開けると暖かい日光が入ってきた。
そして、外には亜門弘市の街並みが目に飛び込んだ。
窓を開けると蒸し暑い空気が入ってきた。
扇風機はおやすみタイマーで夜中に停止していたようだ。
そして、チミアルの耳にはこの惑星の街の音が入ってきた。
遠くで鳴り響く救急車のサイレン。右にウィンカーを出したことを知らせるダンプカー。鬱陶しいくらいの蝉の声。近くの公園でやっているラジオ体操。爆音を鳴らしながら走り去るバイク。大音量で窓を開けならがら走行する自動車。
どれも彼にとっては新鮮なものだった。
母星は既に滅び…新たな母星を探す、それがクルー達である。
チミアルは母星が滅びた後、宇宙船内で生まれた。
そこから独学で科学を学び、やっとのことで科学者になれた。
しかし、彼の発明は誰にも評価されず、そのまま追放されてしまった。
ふと、彼は思いついた。
チミアル(…この惑星でなら、もう一度…やり直せる…?)
誰にも評価されなかったが、この惑星で新たな発明をして、この惑星の人達に評価されたい。
例え、種族が違くても。
星が違くても。
あれこれ、考えていると目覚ましのアラームが鳴った。
輝が布団から手を差し伸べ、スマホのアラームを止めようとする。
輝(………?あれ、ない?)
アラームが止まった。
自分は触ってないのに止まった。
チミアル「おはようございます。輝さん。」
輝「ん…おはよう。アラーム止めてくれたの?」
チミアル「うん。」
輝「そっか。ありがとう。」
チミアル「………(ちょっと嬉しい…)」
いつものように朝ごはんを用意して、食べて、歯磨きをして、制服に着替えて、スクールバッグを持って、靴を履いた。
チミアル「どこかに行くの?」
輝「…うん、学校に…行くの…一人でも大丈夫、だよね?」
チミアル「………?うん…(ガッコー…聞いたことがあるけど…)」
輝「ごめん、そろそろ行かないと電車に遅れちゃう。いってきます。」
チミアル「い、いってらっしゃい…(なんだか行きたくない様子だったな…なにか理由が…?)」
-JL亜門弘駅-
構内アナウンス「♪~(接近メロディ)まもなく、2番線に快速、高尾行きが十両編成で参ります。危ないので、黄色い線の後ろ側までお下りください。」
聞き慣れたアナウンス。
近づくオレンジのラインが入った電車。
ガタゴトと駅のホームに入線した電車。
ドアが開いた。
私はそれに乗った。
軽快なメロディが流れる。
ドアが閉まった。
私を乗せた電車がホームから走り去って行った。
憂鬱。
今の気分を漢字にするとこれ。
皆からちょっと嫌われているだけだけど…なんだか憂鬱。
車内アナウンス「この電車は、快速、高尾行きです。This train is a rapid train bound for 高尾. 次は因保素川、因保素川です。Next is 因保素川.(JC-25)」
無機質なアナウンス。違和感のある英語の発音。
私が降りる駅はここじゃない。
もう一つ先の天野銀市。
-約25分後-
学校に着いた。
校門を通って、玄関に入る。
すると、
???「来た。」
???「今日も来たの~?」
???「死ねばいいのに…」
早速私の耳に入る小さな声の悪口。
下駄箱の中にある自分の上履きを履こうとした。
輝「いっ!」
何かが足裏に刺さった。
急いで確認すると画鋲がセロハンテープで貼り付けられていた。
白い靴下に少し赤い血が染みる。
こりゃ帰ったら絆創膏だね。なんで警戒もせずに履いちゃったんだろう。
画鋲を取り除いて上履きを再び履いた。
クスクスと笑い声が聞こえる。
教室のドアの取手に手をかける。
そのままドアを開けた。
輝「お、おはよう。」
皆「……………」
今日も無視された。
自分の机には一輪の菊の花と『死ね』や、『ウザい』、『理系ぶるな』といった悪口が書かれていた。
鉛筆で書かれているので消しゴムで消せる。
消している最中にも笑い声が聞こえた。
-昼休み-
???「ちょっと、あんたこっち来なさいよ。」
輝「え?」
???「いいからさっさと来いよ!」
輝「分かった!分かったから…!」
輝「えっと…何か…用?」
???「テメェ、先生にチクったろ?」
輝「な、何の話………?」
???「とぼけんな!!」
輝「ひっ…」
???「お前、面貸せや。」
輝「え…」
突然、胸ぐらを掴まれた。
そして、
ベシッ!
ボコッ!
輝「……………っ」
???「お前、マジでウザい。死ね。」
???「ムカつく。消えろ。」
クラスの皆は冷たい目や可哀想な目で見て見ぬ振りをしている。先生は見向きもしない。中にはこっちを見て笑っている人もいた。
………でも、あの男子だけはこっちをじっと見つめている。
誰だっけ?あの子は………『宮島』くん、だっけ?
その時、宮島くんらしき男子が近付いてきた。
すると、
男子「やめろよ。」
輝「………え?」
???「は?何よあんた。」
男子「弱い者いじめして楽しいか?」
???「うっさいな!関係ないだろ!?」
男子「関係ないけど、見るのがもう耐えられない。これ以上同級生がいじめられているのを見たくない。」
???「はぁ?」
男子「複数で個人に力を誇示するのはみっともないぞ。」
???「…チッ、行くよ!」
輝「……………」
男子「大丈夫か?」
輝「…えっと、ありがとう…私は、大丈夫。」
男子「名前は?」
輝「あ、天川 輝。」
男子「そうか。俺は『宮島 賢』。野球部所属だ。」
輝「あの…どうして、助けてくれたの?」
賢「さっきも言ったろ。もう見るのが耐えられないって。」
輝「………とにかく、ありがとう。」
賢「どういたしまして。」
その日は、もう嫌がらせは受けなかった。
その後、何事もなく家に帰った。
-続-
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