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第5章 世界大戦
第186話 その者……
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フランチェスカがSランク冒険者になったという報が、修斗の耳に入ってきた。
自分は古代龍を配下にしたのに、なぜ氷結龍ごときで……などとは考えもせず、Sランク冒険者になった事を素直に喜んでいた。
「フランチェスカがSランクになったんだって? アタイ達の中だと、一番融通が利きやすい立ち位置になったのかねぇ?」
重鎮たちが昼食を食べながら、フランチェスカの功績をたたえていた。
9人の悪夢の騎士を除けば、重鎮の中では一番知名度が高くなるだろう。
「そうですね! 私達のように畏まられる事なく、しかもどの国に行っても大歓迎されるというのは便利ですからね!」
「それにしても、氷結龍を倒せるほどの能力は無いと思っていましたが、良く勝てた物ですね」
9人の悪夢の騎士、特に上の3人は大歓迎しているし、他の6人も功績を素直に喜んでいる。
しかし少々困った顔をしている者が居る。
「私の方が先輩になるのに、フランチェスカに抜かれちゃった」
「むぅ……ご主人様への忠誠は負けてないけど……成果が無い」
異世界から連れて来たアイカとヴァージニアだ。
同じく異世界から来た大魔王エルノヴァはというと、能力が飛びぬけており、色々な成果を出しているので平気なようだ。
「お主らが気にする事ではなかろう? 我らが主様は数回の成果だけで扱いを変えたりはせんわい。お主らとて重要な役目を任されておるのじゃ、どっしりと構えておるのじゃ」
本人たちは成果が無いと思っているようだが、2人はザナドゥ王国の重鎮とはいえ、 9人の悪夢の騎士ほど畏怖の対象ではなく、最も交渉に向いているといって良い。
アイカかヴァージニアが行く事で相手は少し安心し、思わず本心が聞けてしまうというのは、他には代えがたい。
「俺からしたらここにいる女は全員同じなんだがな。嫁は3人だが、どうせ増えるだろうし」
修斗の言葉に目を光らせる女性陣。
最有力候補は 9人の悪夢の騎士の女だが、その次は自分の番かもしれない、などと考えているのだろう。
「それはそうとシュウト様、フランチェスカは漆賢人にたどり着けると思いますか?」
レベッカ魔法兵長の言葉に、一同は修斗を見る。
大魔王エルノヴァの調べにより、漆賢人はかなり広範囲に影響力がある事が分かっていて、重鎮の仲間入りをしたばかりのフランチェスカでは荷が重いのでは? と思われている。
「大丈夫だろう。氷結龍を倒したことだって、アイツらには予想外だったはずだ。このままアイツらの予想を上回って行けば問題ない」
その予想を上回れるかどうか、当のフランチェスカはあちこちに引っ張りダコだった。
ファの国の国王や貴族と連日の面会、隣国の貴族からも面会依頼が来ていたり、早速貴族の護衛依頼が入ったり、魔物が溢れたダンジョンの調査をしてくれと言われたりしていた。
「……全然やりたい事が出来ないわ」
「しょうがないッスよ。Sランク冒険者の誕生は、ここ10年以上も無かったらしいッスから、みんな嬉しくてしょうが無いんス」
なぜか高級な宿の1室に泊っており、ベッドでうつ伏せになるフランチェスカをラグズがなだめていた。
今までの宿はSランクに相応しくない! といって国王が使うような宿の1室を使わされている。
「ねぇラグ、今晩こそはこの部屋に泊って行ってよ~」
「お断りするッス。こんな部屋じゃ落ち着かないッスから」
「あ~んも~、普通の宿の方が冒険者っぽくて好きなのにぃ~い~ぃい~」
そう、貴族としての扱いよりも、冒険者としての扱いをして欲しいのだが、どうやら世間が許さない様だ。
ベッドで足をバタ付かせて暴れている。
「じゃ、ラグは帰るッスね! また明日ッス!」
「うん、おやすみ」
敬礼をして部屋を出て行くラグズ。
ラグズは相変わらず普通の宿に寝泊まりしているようだ。
足をあげて勢いをつけて起き上がる。
鎧を脱いで寝巻のワンピースに着替えると、寝る前の紅茶を1杯入れて飲み始める。
この部屋で唯一いい事は、良い茶葉を使っている事だ。
無駄に豪華なイスに座り、テーブルに片手を置いて紅茶を1口すする。
「ふぅ、寝る前の1杯は美味しいわね。そう思わない? 窓の外の人」
窓が静かに開くと、そこには10歳ほどの少年が窓の淵に座る。
ショートヘアーでサラサラな髪質、子供っぽい笑顔とは裏腹に、どこか不気味さを感じる表情だ。
「そうだね、美味しい紅茶なら、寝る前の楽しみになるかもしれないね」
「ふふふ、意見が合って嬉しいわね。それで、あなたは誰なのかしら?」
「僕はマイルフィック。チャスパード国の『ベフラウィング』の一員さ」
「ベフラウィング? 反ザナドゥ組織の?」
その名を聞いて、フランチェスカは杖を手にする。
相手が子供だとしても、修斗の敵になるのなら容赦はしない。
「おおっと、まってよお姉さん。今日は話し合いに来たんだからさ、僕は丸腰だよ?」
「あらそう? 私には関係が無いわね」
そう言って少年マイルフィックに杖を向けて詠唱を始める。
しかしそこで動きが止まった。
フランチェスカは杖を落とし、体の力が抜けたように猫背になると、少し眠そうな声でしゃべりだす。
「あら……? 私はどうしてここに居るのかしら……?」
「何を言ってるのさフランチェスカ。僕が来るのを待ってたんだろう?」
「……ああ、そうだったわね、マイルフィックが来るのをずっと待っていたんだったわね」
「そうさ」
少年が窓の淵から降りて部屋に入ると、フランチェスカの目の前まで近づく。
「ほら、おいで」
「うん……」
フランチェスカはマイル・フィックの前で跪き、差し出されて手の甲にキスをする。
「我が愛しのマイルフィック様。永遠の忠誠を誓います」
自分は古代龍を配下にしたのに、なぜ氷結龍ごときで……などとは考えもせず、Sランク冒険者になった事を素直に喜んでいた。
「フランチェスカがSランクになったんだって? アタイ達の中だと、一番融通が利きやすい立ち位置になったのかねぇ?」
重鎮たちが昼食を食べながら、フランチェスカの功績をたたえていた。
9人の悪夢の騎士を除けば、重鎮の中では一番知名度が高くなるだろう。
「そうですね! 私達のように畏まられる事なく、しかもどの国に行っても大歓迎されるというのは便利ですからね!」
「それにしても、氷結龍を倒せるほどの能力は無いと思っていましたが、良く勝てた物ですね」
9人の悪夢の騎士、特に上の3人は大歓迎しているし、他の6人も功績を素直に喜んでいる。
しかし少々困った顔をしている者が居る。
「私の方が先輩になるのに、フランチェスカに抜かれちゃった」
「むぅ……ご主人様への忠誠は負けてないけど……成果が無い」
異世界から連れて来たアイカとヴァージニアだ。
同じく異世界から来た大魔王エルノヴァはというと、能力が飛びぬけており、色々な成果を出しているので平気なようだ。
「お主らが気にする事ではなかろう? 我らが主様は数回の成果だけで扱いを変えたりはせんわい。お主らとて重要な役目を任されておるのじゃ、どっしりと構えておるのじゃ」
本人たちは成果が無いと思っているようだが、2人はザナドゥ王国の重鎮とはいえ、 9人の悪夢の騎士ほど畏怖の対象ではなく、最も交渉に向いているといって良い。
アイカかヴァージニアが行く事で相手は少し安心し、思わず本心が聞けてしまうというのは、他には代えがたい。
「俺からしたらここにいる女は全員同じなんだがな。嫁は3人だが、どうせ増えるだろうし」
修斗の言葉に目を光らせる女性陣。
最有力候補は 9人の悪夢の騎士の女だが、その次は自分の番かもしれない、などと考えているのだろう。
「それはそうとシュウト様、フランチェスカは漆賢人にたどり着けると思いますか?」
レベッカ魔法兵長の言葉に、一同は修斗を見る。
大魔王エルノヴァの調べにより、漆賢人はかなり広範囲に影響力がある事が分かっていて、重鎮の仲間入りをしたばかりのフランチェスカでは荷が重いのでは? と思われている。
「大丈夫だろう。氷結龍を倒したことだって、アイツらには予想外だったはずだ。このままアイツらの予想を上回って行けば問題ない」
その予想を上回れるかどうか、当のフランチェスカはあちこちに引っ張りダコだった。
ファの国の国王や貴族と連日の面会、隣国の貴族からも面会依頼が来ていたり、早速貴族の護衛依頼が入ったり、魔物が溢れたダンジョンの調査をしてくれと言われたりしていた。
「……全然やりたい事が出来ないわ」
「しょうがないッスよ。Sランク冒険者の誕生は、ここ10年以上も無かったらしいッスから、みんな嬉しくてしょうが無いんス」
なぜか高級な宿の1室に泊っており、ベッドでうつ伏せになるフランチェスカをラグズがなだめていた。
今までの宿はSランクに相応しくない! といって国王が使うような宿の1室を使わされている。
「ねぇラグ、今晩こそはこの部屋に泊って行ってよ~」
「お断りするッス。こんな部屋じゃ落ち着かないッスから」
「あ~んも~、普通の宿の方が冒険者っぽくて好きなのにぃ~い~ぃい~」
そう、貴族としての扱いよりも、冒険者としての扱いをして欲しいのだが、どうやら世間が許さない様だ。
ベッドで足をバタ付かせて暴れている。
「じゃ、ラグは帰るッスね! また明日ッス!」
「うん、おやすみ」
敬礼をして部屋を出て行くラグズ。
ラグズは相変わらず普通の宿に寝泊まりしているようだ。
足をあげて勢いをつけて起き上がる。
鎧を脱いで寝巻のワンピースに着替えると、寝る前の紅茶を1杯入れて飲み始める。
この部屋で唯一いい事は、良い茶葉を使っている事だ。
無駄に豪華なイスに座り、テーブルに片手を置いて紅茶を1口すする。
「ふぅ、寝る前の1杯は美味しいわね。そう思わない? 窓の外の人」
窓が静かに開くと、そこには10歳ほどの少年が窓の淵に座る。
ショートヘアーでサラサラな髪質、子供っぽい笑顔とは裏腹に、どこか不気味さを感じる表情だ。
「そうだね、美味しい紅茶なら、寝る前の楽しみになるかもしれないね」
「ふふふ、意見が合って嬉しいわね。それで、あなたは誰なのかしら?」
「僕はマイルフィック。チャスパード国の『ベフラウィング』の一員さ」
「ベフラウィング? 反ザナドゥ組織の?」
その名を聞いて、フランチェスカは杖を手にする。
相手が子供だとしても、修斗の敵になるのなら容赦はしない。
「おおっと、まってよお姉さん。今日は話し合いに来たんだからさ、僕は丸腰だよ?」
「あらそう? 私には関係が無いわね」
そう言って少年マイルフィックに杖を向けて詠唱を始める。
しかしそこで動きが止まった。
フランチェスカは杖を落とし、体の力が抜けたように猫背になると、少し眠そうな声でしゃべりだす。
「あら……? 私はどうしてここに居るのかしら……?」
「何を言ってるのさフランチェスカ。僕が来るのを待ってたんだろう?」
「……ああ、そうだったわね、マイルフィックが来るのをずっと待っていたんだったわね」
「そうさ」
少年が窓の淵から降りて部屋に入ると、フランチェスカの目の前まで近づく。
「ほら、おいで」
「うん……」
フランチェスカはマイル・フィックの前で跪き、差し出されて手の甲にキスをする。
「我が愛しのマイルフィック様。永遠の忠誠を誓います」
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