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第6章 ダンジョンから始まる世界交流
第250話 甘い誘惑
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黒いローブの男がヤクシ達に声をかけると、3人は立ち止まって振り向く。
そこには4人の冒険者が居るのだが、なんとちぐはぐは恰好をしているのだろうか。
黒いローブの男は良いとして、ヘルメットだけが金属で豪華な革鎧の男、メガネをかけた知的な女は大きな肩当の付いた胸部だけの黒い鎧、冒険者ではなくお姫様に見えるドレスの女。
「塔の事でお聞きしたい事があるのですが、お時間よろしいですか?」
ドレス女が少し首をかしげて柔らかい笑顔を向けると、ヤクシは少し戸惑ってしまった。
ヤクシは目が見えない為、表情というモノは声や流れで判断するしかない。
しかしヤクシが感じている表情はとても不気味な物だった。
今までも自分達に欲望の目を向けられることは多々あったが、それをはるかに上回る、しかも今までとは違う欲望の塊の様なものを感じていた。
「時間だぁ? ワタシらは忙しいんだよ、諦めな」
「は、早く宿で……や、休みたいから……」
不気味な物を感じているのはヤクシだけの様で、ガッコウ・シャンディラは笑顔をそのまま受け止めているようだ。
その不気味さにヤクシは決意する。
「私は少しなら構いませんよ。塔の情報がしりたいのでしょうか」
ガッコウとシャンディラの肩に手を置き、2人の目を通して対象を確認すると……確かに笑顔なのだが、ヤクシにはいびつな笑顔に見えた。
「いいのかよ、ヤクシ」
「こ、この人達……大丈夫なんですか?」
大丈夫か、と言われれば大丈夫では無いだろう。
しかしヤクシはこの4人を放置する方が、より危険だと判断したのだろう。
「大丈夫でしょう。どこで話をしますか?」
「それではお茶でも飲みながら話をしましょう。近くに良いお店があります」
案内されて来たのは、こんな場所にしてはキレイな店だった。
食事や飲み物を提供しているが、少し高めのランチやディナーを楽しむような場所だ。
2つのテーブルを繋げて、7人が座れるようにする。
「改めまして、私はヤクシと申します」
「ガッコウ」
「しゃ、シャンディラ……です」
まず先に3人が自己紹介をするが、すでに有名人なので名前は沢山の人が知っている。
なので4人も自己紹介を始めた。まずはドレス女から。
「これはこれはご丁寧に。私はリリアータと言います」
次はヘルメット男。
「俺はジュドニってんだ」
そしてインテリ世紀末女。
「私はコレットだ」
最後に黒ローブの男。
「ジェロームという」
4人の見た目はあまりに特徴的で、パーティーを組んでいると言われなければ知り合いとは思えないだろう。
その4人が聞きたい事なのだが……。
「私達はまだAランク冒険者ですが、いち早くあの塔を攻略し、戦後の物資不足を補うために資金を寄付するつもりでいます。なので売りやすい物や直ぐお金になる物を優先的に探しています。どこかいいフロアはありませんか?」
その言葉を聞いて3人は驚いた。
そもそもドレス女のリリアータがAランク冒険者である事、そして戦後の混乱が収まりきっていない現在、確かに物資不足の地域は存在しているが、それを救おうと言った事。
本当かどうかは分からないが、最初の印象とは全く違う事を言ってきたのだ。
「お金が必要ならば、上のフロアに行けばより良いアイテムが出てきます。51階を境に質が上がった気がしますので、そこを重点的に探してはどうでしょうか」
まずはヤクシが当たり障りのない情報を提示すす。
だがイマイチ反応が良くない。
「51階か。できりゃ直接金が落ちてるかどうかを知りたいんだけど、そんな宝箱はないのか?」
「そうですね、宝箱の中身で金貨が入っていた事はありますが、恐らく宝箱の中身は無作為に入っていると思います。1度あけた箱を別の時に開けたら中身が違っていましたから」
ヘルメット男ジュドニのぶしつけな質問にも、顔色一つ変えずに答えるヤクシ。
しかし寄付するというのなら、直接金を見つけた方が早いというのも理解できる。
ガッコウとシャンディラはどうにも4人が苦手なようで、あまり話には乗ってこない。
「そうかランダムなのか。なら上のフロアの方が入ってる金額は高くなるのか?」
「そうですね、今日は120階まで行きましたが、一番高かったのは金貨が15枚でした」
「へぇ! 15Gもあったのかい!」
インテリ世紀末女はさらにストレートな聞き方をしてきた。
それを顔色一つ変えずに答えるヤクシ。ガッコウとシャンディラは会話には入らず、店員が持ってきたお茶とお菓子を食べている。
「お二人はお菓子が好きなのか? ならワシの故郷のお菓子を上げるぞ。甘いから舐めてごらん。ヤクシさんも」
黒ローブ男ジェロームが懐から飴の様な包みを3つだし、3人に渡す。
そして自分達の分も取り出して、順番に舐めて行く。
それを見てヤクシ達も包みを開けて、口の中に放り込むのだった。
そこには4人の冒険者が居るのだが、なんとちぐはぐは恰好をしているのだろうか。
黒いローブの男は良いとして、ヘルメットだけが金属で豪華な革鎧の男、メガネをかけた知的な女は大きな肩当の付いた胸部だけの黒い鎧、冒険者ではなくお姫様に見えるドレスの女。
「塔の事でお聞きしたい事があるのですが、お時間よろしいですか?」
ドレス女が少し首をかしげて柔らかい笑顔を向けると、ヤクシは少し戸惑ってしまった。
ヤクシは目が見えない為、表情というモノは声や流れで判断するしかない。
しかしヤクシが感じている表情はとても不気味な物だった。
今までも自分達に欲望の目を向けられることは多々あったが、それをはるかに上回る、しかも今までとは違う欲望の塊の様なものを感じていた。
「時間だぁ? ワタシらは忙しいんだよ、諦めな」
「は、早く宿で……や、休みたいから……」
不気味な物を感じているのはヤクシだけの様で、ガッコウ・シャンディラは笑顔をそのまま受け止めているようだ。
その不気味さにヤクシは決意する。
「私は少しなら構いませんよ。塔の情報がしりたいのでしょうか」
ガッコウとシャンディラの肩に手を置き、2人の目を通して対象を確認すると……確かに笑顔なのだが、ヤクシにはいびつな笑顔に見えた。
「いいのかよ、ヤクシ」
「こ、この人達……大丈夫なんですか?」
大丈夫か、と言われれば大丈夫では無いだろう。
しかしヤクシはこの4人を放置する方が、より危険だと判断したのだろう。
「大丈夫でしょう。どこで話をしますか?」
「それではお茶でも飲みながら話をしましょう。近くに良いお店があります」
案内されて来たのは、こんな場所にしてはキレイな店だった。
食事や飲み物を提供しているが、少し高めのランチやディナーを楽しむような場所だ。
2つのテーブルを繋げて、7人が座れるようにする。
「改めまして、私はヤクシと申します」
「ガッコウ」
「しゃ、シャンディラ……です」
まず先に3人が自己紹介をするが、すでに有名人なので名前は沢山の人が知っている。
なので4人も自己紹介を始めた。まずはドレス女から。
「これはこれはご丁寧に。私はリリアータと言います」
次はヘルメット男。
「俺はジュドニってんだ」
そしてインテリ世紀末女。
「私はコレットだ」
最後に黒ローブの男。
「ジェロームという」
4人の見た目はあまりに特徴的で、パーティーを組んでいると言われなければ知り合いとは思えないだろう。
その4人が聞きたい事なのだが……。
「私達はまだAランク冒険者ですが、いち早くあの塔を攻略し、戦後の物資不足を補うために資金を寄付するつもりでいます。なので売りやすい物や直ぐお金になる物を優先的に探しています。どこかいいフロアはありませんか?」
その言葉を聞いて3人は驚いた。
そもそもドレス女のリリアータがAランク冒険者である事、そして戦後の混乱が収まりきっていない現在、確かに物資不足の地域は存在しているが、それを救おうと言った事。
本当かどうかは分からないが、最初の印象とは全く違う事を言ってきたのだ。
「お金が必要ならば、上のフロアに行けばより良いアイテムが出てきます。51階を境に質が上がった気がしますので、そこを重点的に探してはどうでしょうか」
まずはヤクシが当たり障りのない情報を提示すす。
だがイマイチ反応が良くない。
「51階か。できりゃ直接金が落ちてるかどうかを知りたいんだけど、そんな宝箱はないのか?」
「そうですね、宝箱の中身で金貨が入っていた事はありますが、恐らく宝箱の中身は無作為に入っていると思います。1度あけた箱を別の時に開けたら中身が違っていましたから」
ヘルメット男ジュドニのぶしつけな質問にも、顔色一つ変えずに答えるヤクシ。
しかし寄付するというのなら、直接金を見つけた方が早いというのも理解できる。
ガッコウとシャンディラはどうにも4人が苦手なようで、あまり話には乗ってこない。
「そうかランダムなのか。なら上のフロアの方が入ってる金額は高くなるのか?」
「そうですね、今日は120階まで行きましたが、一番高かったのは金貨が15枚でした」
「へぇ! 15Gもあったのかい!」
インテリ世紀末女はさらにストレートな聞き方をしてきた。
それを顔色一つ変えずに答えるヤクシ。ガッコウとシャンディラは会話には入らず、店員が持ってきたお茶とお菓子を食べている。
「お二人はお菓子が好きなのか? ならワシの故郷のお菓子を上げるぞ。甘いから舐めてごらん。ヤクシさんも」
黒ローブ男ジェロームが懐から飴の様な包みを3つだし、3人に渡す。
そして自分達の分も取り出して、順番に舐めて行く。
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