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40 鬼がいます

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「私が今日からこの屋敷の女主人。メイド長、この屋敷の荒れた姿は貴女の怠慢です。今日から厳しく致しますので、覚悟してちょうだい」

「し、しかしお屋敷が荒れてなどおりません。私達はきちんと心を込めてお屋敷やお嬢様のお世話をしております。何も知らない方に言われたくはございません」

 バチバチ、と女性たちの間に花火は上がらなかった。

「なるほどわかりました、貴女はクビです。明日には出て行ってもらいます」

「な、なんですって!?長年このレイクリフ家に勤めた私を、ク、クビ!?どういう事ですかっ旦那様っこの横暴を許すというのですか!!」

「良いのですよ、今すぐ出て行っても。明日まで荷物をまとめる時間を上げようと思いましたが、要らぬという事ですね。リエリ、メイド長の部屋行って荷造りをして差し上げなさい。もし隠し帳簿や横領の証拠があれば全部押さえて来て」

「畏まりました、奥様」

 リエリと呼ばれたメイドは綺麗なお辞儀をすると「この手の作りは一階の割といい場所にあるのよね、メイド長の部屋って」と一度も来たことがないはずなのにスルスルとメイド長の部屋にたどり着いていた。

「メイドが女主人に逆らう意味を分からないはずがないわね?そう言う事よ。さあ、旦那様達は執務室へ行ってくださいな。邪魔ですので。フレジットもそっちへ、邪魔ですので」

「あ、ああ……アイーダ、家の事は頼むよ。さあ、レイクリフ公色々聞きたい事もございます。執務室へ参りましょう」

「え?あ、わかった……そなたの細君は……」

「アイーダは凄腕ですよ……家の中で逆らってはいけません。鬼教官とナザールの令嬢達の間では有名でしたから」

「お、鬼……」

 鬼の前では人間は無力とばかりに男性陣はそそくさと執務室へ逃げ込ん。

「さあ、使えないメイドは切りますよ。不正をしていた者は今日中に提出する事。今日であれば懲罰だけで許します。明日からはクビですよ」

 ピシャリと言い切るアイーダは「やーん!レン可愛いわぁーーー!」と孫馬鹿になっていた顔は何処へやら、泣く子も躾ける鬼教官に変わっていた。アイリーンの母であり、ハイランド家の女主人であった女性はやはりとても強いのだ。

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