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58 幼児と茄子

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「でぃえちゅ!」

「おー!アレッシュ様が喋ったー!」

「ぼく、でぃえちゅすきー!」

「うわーありがとう!俺も好きだよー!」

「きゃーい!」

 中々片付かない問題が増えてきて、煮詰まってしまい俺は正妃宮に遊びに来ていた。
 そこでラムとソレイユ様の嫡男アレッシュ君2歳と遊んでいたのだ。アレッシュ君は中々お喋りも上手だし、将来名君になりそう!

「アレッシュ様が皇帝になれば、きっと俺はスローライフに戻れる!ふふふ」

「でぃえちゅ、すろー?すき?」

「うんうん!スローライフ好き」

「ぶーー!でぃえちゅ!すろーだめぇ!」

 なんだとー?!

「でぃえちゅは、ぼくとけっこん!」

 なん、だと……?!

「むふー!でぃえちゅ、ぼくのそくひ!」

 まじかー!誰だ!アレッシュ君にそんな事教えたの?!

「でもアレッシュ様、俺はもうラムの側妃だよ。2人と結婚は出来ないよ?」

「らむ、ちちうえ?」

「そうだね」

「ちちうえはないない!でぃえちゅはぼくと!」

「うわー!アレッシュ様、血の気が多い!」

「むふー!」

 王位略奪宣言かー!これは本当に大物になりそうな予感!!

「あらあら、怖い事。なら強くなる為にいっぱいご飯を食べなくてはなりませんね、お昼にしましょう。ディエス様も召し上がっていかれますよね?」

「でぃえちゅ!いっしょ、わーい!」

「じゃあ、いただきます」

 ラムは立派な大人なんだから、俺が居なくても一人で飯食えるよな?俺は図々しくお昼をご馳走になることにした。

「うぇ、コレぇ……やー」

「茄子?」

 柔らかく煮て皮もないぺろりんとした野菜。きっと茄子だな。俺のご飯にも焼き茄子っぽい物がついてるもん。

「うぇ、すててぇ」

「あらあらアレッシュ様。好き嫌いはディエス様に嫌われますよ?」

 乳母さんがこっちをみてパチンとウィンクしてくる。ははぁ、俺をだしに食べられる野菜を増やそうと言う魂胆か。オッケー乗るぜ!

「そうですねー、俺は好き嫌いない人の方が好きですねー。アレッシュ殿下のお父上様のラムシェーブル陛下も野菜は良くお召し上がりになりますしー。俺は野菜好きだなーあー美味しそーもぐもぐ、美味い!」

 ひょいっと茄子を食べる。美味しいなぁ、秋茄子は嫁に食わすなだっけ。俺も嫁の一種だから食わせて貰えないのか??いや、食うけど。

「うー!うーうー!ぼく、たべゆ……」

 涙目になりながらアレッシュ様は茄子をちびちびと口に運ぶ。

「……やっつけた!」

「ご立派ですよ」

 完食したので手を叩いて大袈裟に喜ぶ。乳母さんやメイド達も任務成功とばかりに笑顔だ。

 いやぁ~良かった良かった。茄子は嫌われ野菜だもんなー、でも時期なら美味いよね、やっぱり炭火で炙った焼き茄子を秋の秋刀魚と……。

「茄子?秋、茄子……?」

 俺はふと、何かを思い出しかける。誰だっけ茄子を食って、秋……そう、今はまだ初夏と言った所。で、秋茄子……

「ニノミヤーーーン!!」

 思い出せた!俺、偉い!!俺は茄子のお皿を持ってソレイユ様のところに走って行った。

「ソレイユ様、秋茄子ーーー!」

「落ち着いて、ディエス様。意味が分からないわ」

 それでも話を聞いてくれるソレイユ様、マジイケてる上司!



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