【完結】廃棄王子、側妃として売られる。社畜はスローライフに戻りたいが離して貰えません!

鏑木 うりこ

文字の大きさ
123 / 139
番外編

1 利口者には花束を(セイリオス&クロード

しおりを挟む
 その男は男性なのに、一番最初から花の名前がつけられていた。

白百合、氷で出来た百合、と。

 人の噂に疎いクロードでもその目立つ容姿と名前を知っている。それ程今年の一年生の中で、セイリオス・リンツは目立つ生徒だった。

 セイリオスが現れるまで、リンツ家は目立った人物を排出する家ではなかったが、兎角セイリオスの優秀さは群を抜いていて、いずれは王の側近……いや、宰相を賜るだろうと言われていた。

「住む世界が違う」

 と、交流を持とうと思わなかったが、それはセイリオスも同じでクロードもとても目立つ存在だった。

 クロード・ラグデール。負け知らずの黒い狼犬。学生時代から騎士団入りが確定しているほどの使い手であり、しっかりした体躯は大きくも俊敏でとにかく強い。

そして、二人とも人目を引く美しい顔立ちをしているーーー。

 目立つ存在故に孤独に陥り易い。互いが互いを認識し、同じような悩みを持つ事を知れば仲良くなるのはすぐだった。

「クロード!」

「セリー」

「その呼び方は止めろと言っている。女性のようだから」

「すまない、私の弟がセイルと言う物でな」

 区別したいと眉毛をへにょりと下げるクロードをため息混じりに許す。

「もし誰かが呼んだら一緒に否定してくれよ?」

「分かった」

「じゃあ私も違う名前で呼ぼうかな?そうだなぁ、クロードだから……ケリー?」

「女性名だな?意趣返しか」

 そうして二人で笑い合う。

「ほう!クロードのくせに難しい言葉を知っている!」

「最近誰かの影響のせいで図書館は昼寝以外に使える事を知ったんだよ」

「良い事だ」

 そうやって特別な相性で呼び合う二人が「出来ている」と噂され、更に周りから気を使われて二人っきりにされている事は気が付かなかった。

 付き合うなんてつもりは全く無かった、とても馬の合う良い友だと思っていた。
 ただ、学園の野外実習で運動神経が死滅しているセイリオスが迷子の上に怪我をして更に悪天候も相まう事件が起こる。
 1番に捜索に手をあげ、崖下に蹲るセイリオスを見つけたクロードだったが、落ちた崖は怪我をした足では登れず、悪天候から他の生徒を安全に逃す為に2人で山小屋に避難する事件が起こった。

「……」

「……」

 二日後にやっと天候が回復し、救助がやって来た時に、二人の間にとても微妙な空気が流れていたので大半の人間は何も言わなかったけれど気がついた。

あ、くっ付いたな、と。

 まあ雨で濡れた衣服を脱いで狭い山小屋の中で乾かした。その間に暖を取るのにくっ付いているだろうし、学生と言う血気盛んで多感な時期で……不安な一夜と言うのは心情的にも互いに頼り合う……色々な事が重なって、二人がより親密になってしまった、そう言う事なのだ。

「セイ……セリー……私は……」

「ケリー……お前も私も王宮勤めが決まった。今までのように毎日顔を合わせる事もないかもしれないが、同じ建物の中で働けるなんて、嬉しい事だよ」

 やはり学園の記念卒業旅行と言うものはセイリオスとクロードは二人で行ったし、風光明媚と言う宿に泊まったのに、外に出かけず室内で過ごしていたと言う。

「……こうして触れ合う事も、もうない」

「互いに家の名前を背負う身。女性を娶り、跡継ぎの子をもうけなければいけない……」

「分かっている、これで最後。気楽な学生はこれで最後だ」

 二人とも名家の出であり、将来を期待される身。これが最後とお利口に線を引き、これが最後の思い出と二人の特別な関係に終止符を打ったのだ。



しおりを挟む
感想 264

あなたにおすすめの小説

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

婚約者の王子様に愛人がいるらしいが、ペットを探すのに忙しいので放っておいてくれ。

フジミサヤ
BL
「君を愛することはできない」  可愛らしい平民の愛人を膝の上に抱え上げたこの国の第二王子サミュエルに宣言され、王子の婚約者だった公爵令息ノア・オルコットは、傷心のあまり学園を飛び出してしまった……というのが学園の生徒たちの認識である。  だがノアの本当の目的は、行方不明の自分のペット(魔王の側近だったらしい)の捜索だった。通りすがりの魔族に道を尋ねて目的地へ向かう途中、ノアは完璧な変装をしていたにも関わらず、何故かノアを追ってきたらしい王子サミュエルに捕まってしまう。 ◇拙作「僕が勇者に殺された件。」に出てきたノアの話ですが、一応単体でも読めます。 ◇テキトー設定。細かいツッコミはご容赦ください。見切り発車なので不定期更新となります。

超絶美形な悪役として生まれ変わりました

みるきぃ
BL
転生したのは人気アニメの序盤で消える超絶美形の悪役でした。

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

そばかす糸目はのんびりしたい

楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。 母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。 ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。 ユージンは、のんびりするのが好きだった。 いつでも、のんびりしたいと思っている。 でも何故か忙しい。 ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。 いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。 果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。 懐かれ体質が好きな方向けです。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

過労死転生した公務員、魔力がないだけで辺境に追放されたので、忠犬騎士と知識チートでざまぁしながら領地経営はじめます

水凪しおん
BL
過労死した元公務員の俺が転生したのは、魔法と剣が存在する異世界の、どうしようもない貧乏貴族の三男だった。 家族からは能無しと蔑まれ、与えられたのは「ゴミ捨て場」と揶揄される荒れ果てた辺境の領地。これは、事実上の追放だ。 絶望的な状況の中、俺に付き従ったのは、無口で無骨だが、その瞳に確かな忠誠を宿す一人の護衛騎士だけだった。 「大丈夫だ。俺がいる」 彼の言葉を胸に、俺は決意する。公務員として培った知識と経験、そして持ち前のしぶとさで、この最悪な領地を最高の楽園に変えてみせると。 これは、不遇な貴族と忠実な騎士が織りなす、絶望の淵から始まる領地改革ファンタジー。そして、固い絆で結ばれた二人が、やがて王国を揺るがす運命に立ち向かう物語。 無能と罵った家族に、見て見ぬふりをした者たちに、最高の「ざまぁ」をお見舞いしてやろうじゃないか!

嫌われ魔術師の俺は元夫への恋心を消去する

SKYTRICK
BL
旧題:恋愛感情抹消魔法で元夫への恋を消去する ☆11/28完結しました。 ☆第11回BL小説大賞奨励賞受賞しました。ありがとうございます! 冷酷大元帥×元娼夫の忘れられた夫 ——「また俺を好きになるって言ったのに、嘘つき」 元娼夫で現魔術師であるエディことサラは五年ぶりに祖国・ファルンに帰国した。しかし暫しの帰郷を味わう間も無く、直後、ファルン王国軍の大元帥であるロイ・オークランスの使者が元帥命令を掲げてサラの元へやってくる。 ロイ・オークランスの名を知らぬ者は世界でもそうそういない。魔族の血を引くロイは人間から畏怖を大いに集めながらも、大将として国防戦争に打ち勝ち、たった二十九歳で大元帥として全軍のトップに立っている。 その元帥命令の内容というのは、五年前に最愛の妻を亡くしたロイを、魔族への本能的な恐怖を感じないサラが慰めろというものだった。 ロイは妻であるリネ・オークランスを亡くし、悲しみに苛まれている。あまりの辛さで『奥様』に関する記憶すら忘却してしまったらしい。半ば強引にロイの元へ連れていかれるサラは、彼に己を『サラ』と名乗る。だが、 ——「失せろ。お前のような娼夫など必要としていない」 噂通り冷酷なロイの口からは罵詈雑言が放たれた。ロイは穢らわしい娼夫を睨みつけ去ってしまう。使者らは最愛の妻を亡くしたロイを憐れむばかりで、まるでサラの様子を気にしていない。 誰も、サラこそが五年前に亡くなった『奥様』であり、最愛のその人であるとは気付いていないようだった。 しかし、最大の問題は元夫に存在を忘れられていることではない。 サラが未だにロイを愛しているという事実だ。 仕方なく、『恋愛感情抹消魔法』を己にかけることにするサラだが——…… ☆お読みくださりありがとうございます。良ければ感想などいただけるとパワーになります!

処理中です...