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3 使用人は味方、父は敵
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私が予定外の帰宅をしたので、執事のフィリッツは慌てて走って来ます。
「お嬢様!如何なさいました!?」
「マルセル殿下に婚約破棄されたわ。次の婚約者はリルファにするようよ」
フィリッツはほんの少しだけ頬を緩ませて、静かに礼をします。
「分かりました。全て手配致します」
「ええ、頼んだわ。それ以上の事はこれからお父様の返答次第ね」
「委細承知にて」
私は自らの部屋へ戻ります。私の部屋は物が少ない、と言うより何もない、全部妹のリルファが持っていってしまうからです。
「まあ!素敵な髪飾り。いいな……お姉様は……」
そして何故か泣くのです。するとお義母様がすっ飛んできて
「私の可愛いリルファ!どうしたの?またアンゼリカさんに……」
「違うの、違うのよ、お母様……私は誰からも何もいただけないのに、お姉様はあんなに素敵な髪飾りを……」
「まあ!可哀想なリルファ!」
するとお父様がすっ飛んで来ます。息の合っている事。お体には沢山の脂肪がついているのに、こう言う時だけは素早いのよね。
「アンゼリカ!またリルファを虐めたな!髪飾りくらい妹に譲れば良いでは無いか!」
「しかし、お父様。これはマルセル殿下からいただいた……」
「ええい!うるさい!よこせ!」
そうやって何もかも取り上げるのです。ドレスも靴もネックレスも。ハンカチやしおりに至るまで、全て。
リボンや挙句の果てにはパジャマまで欲しがるから病気だと思います。あの子は私からものを奪う事が生き甲斐であったようでした。
「もっと……もっと何かあるはず!」
「……この部屋を見たら分かるでしょう?何も無いわ」
ぶつぶつ言いながら、私の部屋を物色するリルファは気持ち悪い。こうなる事が分かっていたから、お母様の遺品は全部お祖父様の館で管理して頂いています。そして親しい者には
「私に高価な贈り物はしないで下さい。全部妹に奪われますので」
と、伝え、贈り物は現金か証券、株券で頂いていました。妹は金融関係には疎いし、流石に
「お金をちょうだい!」
なんてゆすりみたいな事は言わなかった。これ幸いに私はお金を増やし、本当に価値のあるものはお祖父様にお願いし、管理して貰っている。だから私の部屋にあるものは本当に最低限のドレスと程度の低い宝飾品類くらいなのである。
それなのにリルファはその中からですら、
「まあ、その指輪…私にはそんな素敵な物……」
「(傷だらけの色付き水晶……ルーアン公爵令息が妹に盗られるか実験で、買って寄越した500ゴールドの物ですのに)これは私の友人が……」
(1ゴールド1円程度よ!)
「どうしたの?!リルファ、またアンゼリカさん!」
「アンゼリカ!リルファに譲って上げなさい!」
「お父様!お母様!いいの……良いのです、私にはあのような高価な物をプレゼントして下さる人は誰一人として……」
泣き真似をしながらお義母様の胸に飛び込んでいくリルファ。毎回の事に飽き飽きなのですが
「まあ、可哀想なリルファ!」
「よしよし、リルファにはお父様が指輪でもドレスでも買って上げよう」
と、3人仲良く出て行ってくれます。しかもあの指輪をしっかり握りしめて。火事場泥棒より手慣れてません?
「……お嬢様」
「大丈夫よ、リサ」
お母様がご存命の時からいてくれるメイドのリサが心配そうにこちらを見ていました。
「それよりも、お父様がリルファに買い与えた物のリストの更新をお願いね、然るべき時に使います」
「お任せください、お嬢様」
さて、私も書類を片付けておかなければ。
煩い奴らがいなくなったので、次の投資先を見極める作業がありますから。
「お嬢様!如何なさいました!?」
「マルセル殿下に婚約破棄されたわ。次の婚約者はリルファにするようよ」
フィリッツはほんの少しだけ頬を緩ませて、静かに礼をします。
「分かりました。全て手配致します」
「ええ、頼んだわ。それ以上の事はこれからお父様の返答次第ね」
「委細承知にて」
私は自らの部屋へ戻ります。私の部屋は物が少ない、と言うより何もない、全部妹のリルファが持っていってしまうからです。
「まあ!素敵な髪飾り。いいな……お姉様は……」
そして何故か泣くのです。するとお義母様がすっ飛んできて
「私の可愛いリルファ!どうしたの?またアンゼリカさんに……」
「違うの、違うのよ、お母様……私は誰からも何もいただけないのに、お姉様はあんなに素敵な髪飾りを……」
「まあ!可哀想なリルファ!」
するとお父様がすっ飛んで来ます。息の合っている事。お体には沢山の脂肪がついているのに、こう言う時だけは素早いのよね。
「アンゼリカ!またリルファを虐めたな!髪飾りくらい妹に譲れば良いでは無いか!」
「しかし、お父様。これはマルセル殿下からいただいた……」
「ええい!うるさい!よこせ!」
そうやって何もかも取り上げるのです。ドレスも靴もネックレスも。ハンカチやしおりに至るまで、全て。
リボンや挙句の果てにはパジャマまで欲しがるから病気だと思います。あの子は私からものを奪う事が生き甲斐であったようでした。
「もっと……もっと何かあるはず!」
「……この部屋を見たら分かるでしょう?何も無いわ」
ぶつぶつ言いながら、私の部屋を物色するリルファは気持ち悪い。こうなる事が分かっていたから、お母様の遺品は全部お祖父様の館で管理して頂いています。そして親しい者には
「私に高価な贈り物はしないで下さい。全部妹に奪われますので」
と、伝え、贈り物は現金か証券、株券で頂いていました。妹は金融関係には疎いし、流石に
「お金をちょうだい!」
なんてゆすりみたいな事は言わなかった。これ幸いに私はお金を増やし、本当に価値のあるものはお祖父様にお願いし、管理して貰っている。だから私の部屋にあるものは本当に最低限のドレスと程度の低い宝飾品類くらいなのである。
それなのにリルファはその中からですら、
「まあ、その指輪…私にはそんな素敵な物……」
「(傷だらけの色付き水晶……ルーアン公爵令息が妹に盗られるか実験で、買って寄越した500ゴールドの物ですのに)これは私の友人が……」
(1ゴールド1円程度よ!)
「どうしたの?!リルファ、またアンゼリカさん!」
「アンゼリカ!リルファに譲って上げなさい!」
「お父様!お母様!いいの……良いのです、私にはあのような高価な物をプレゼントして下さる人は誰一人として……」
泣き真似をしながらお義母様の胸に飛び込んでいくリルファ。毎回の事に飽き飽きなのですが
「まあ、可哀想なリルファ!」
「よしよし、リルファにはお父様が指輪でもドレスでも買って上げよう」
と、3人仲良く出て行ってくれます。しかもあの指輪をしっかり握りしめて。火事場泥棒より手慣れてません?
「……お嬢様」
「大丈夫よ、リサ」
お母様がご存命の時からいてくれるメイドのリサが心配そうにこちらを見ていました。
「それよりも、お父様がリルファに買い与えた物のリストの更新をお願いね、然るべき時に使います」
「お任せください、お嬢様」
さて、私も書類を片付けておかなければ。
煩い奴らがいなくなったので、次の投資先を見極める作業がありますから。
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