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28 またもやリンカがやってくれた
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「デフィタ公爵」
「フラウ公爵ではありませんか。お久しぶりです」
壮年の男性が手を上げ、にこやかに近づいてくる。デュライド・フラウ……王政派の重鎮であった男だ。だが、聖女が現れたことにより、自身の娘、ナディティアが王太子の婚約者の認を解かれたため、伏して情勢を見守っていた男。それが大きな声で私に近づいてきた……これは我らが陣営に手に貸すということ。
「此度のこと、なんと礼をいって良いか」
「ああ、毒の沼地のことですか」
「ははっ! もう大保養地ですよ、公爵! これもみな、公爵の計らいとか」
「たまたまです」
本当にたまたまだった。
「アリアンッッ」
「キャウンッ!」
「その汚いなりで家に入れると思うなっ!」
「ひぃーーん!」
イライラが頂点まで達すると、アリアンはどこかで暴れてくる。大抵は魔獣なんかを虐殺しているらしいが、とにかく戻ってきた時が血塗れだわおかしな臭いはするわでとにかく汚い。
「どこかで洗って来いっ」
「川は冷たいよぉ」
「温泉でも入ればよかろうっ」
「遠いよぉ」
「では地面でも掘って出せば良いっ」
「分かった!」
なんと本当にアリアンはやらかした。あの焼き切った元毒の沼地の下から温泉が湧き出したのだ。そしてあの土地を買い取ったのはなんとこのフラウ公爵の娘、ナディティアだった。
「お強き方」
「んあ?」
直湧きした温泉で体を洗っていたアリアンに声をかけたらしい。普通なら話も聞かず塵芥にされる所だが、ぎゅん! とアリアンの体が縮んだらしい。
「きゃあーーっ! ナディちゃんだー! 私の二番目の推しィ!」
「きゃあっ!」
青年の体が少年になった……リンカが気合いで表に出たらしい。
「ナディちゃん、美人! ナディちゃん可愛い!ナディちゃん、ふつくしーーっ」
「ひゃ、あ、あの、あ、ありがとう、ございます……?」
王太子の婚約者の座を追われ、今までの努力を水泡にされ傷ついているナディティアの心情を本人より強く重く受け止めていたリンカはこの地を保養地にすることを提案した。
「3年後くらいにここにエリーゼが保養地を建てるんだけど、取っちゃおっ」
「……はあ」
「源泉に生え変わったアリアンの爪でも入れとけば良い出汁取れるしさ!」
「ダシ、ですか?」
「スパリゾートだよ! スパリゾート! 私もスパで遊びたいし、絶対儲けて聖女と王太子をギャフンって言わせよっ」
「よくわかりませんが……ギャフンといわせたいですわ」
「きーまりっ」
そうして、大きな温浴設備が稼働し始め、好評なのだ。あそこはこれからどんどん儲かっていくだろう。
「庶民とはいえ大きな商家も参入してきましてな。ナディティアの嫁ぎ先の件も片付きそうですぞ」
「ほう、なんという商家で?」
「まだ若造なのですが、ナディティアにぞっこんなのですよ、確かウィルレッドとかいいましたかな?」
「レッド商会の代表ですね。彼はやり手と聞き及んでいます」
リンカ情報だ。ウィルレッドは成功間違いなしの商人だから、仲良くしておけと呟いていた。
「ウィルレッドもイケメンだよー、まっルシ様の爪の先にも及ばないけどねっ」
「ありがとう、リンカ」
「うっ!心臓が爆発しそうっ嬉苦しいっ」
新しい苦しみを開発していた。
「アリアン様にはご贔屓にして頂き」
「うちの馬鹿がお手間をかけているようで」
「いえ、黒竜の湯は大人気ですよ!」
ダシが出るとリンカはいっていたが、あれだけ力に溢れたアリアンが浸かった湯はなにやら効能があるらしく、怪我が早く治るとかいわれているようだ。それが本当なら、我が家の風呂でほぼ毎日一緒に風呂に入っている私はどうなるというのだ……。
「フラウ家はこれから宰相を支援いたします。つきましては今後の相談など」
「ええ、喜んで」
これは大きな味方を引き入れることができそうだ。やはりアリアンの機嫌を損ねても夜会には出なければいけないな。
「フラウ公爵ではありませんか。お久しぶりです」
壮年の男性が手を上げ、にこやかに近づいてくる。デュライド・フラウ……王政派の重鎮であった男だ。だが、聖女が現れたことにより、自身の娘、ナディティアが王太子の婚約者の認を解かれたため、伏して情勢を見守っていた男。それが大きな声で私に近づいてきた……これは我らが陣営に手に貸すということ。
「此度のこと、なんと礼をいって良いか」
「ああ、毒の沼地のことですか」
「ははっ! もう大保養地ですよ、公爵! これもみな、公爵の計らいとか」
「たまたまです」
本当にたまたまだった。
「アリアンッッ」
「キャウンッ!」
「その汚いなりで家に入れると思うなっ!」
「ひぃーーん!」
イライラが頂点まで達すると、アリアンはどこかで暴れてくる。大抵は魔獣なんかを虐殺しているらしいが、とにかく戻ってきた時が血塗れだわおかしな臭いはするわでとにかく汚い。
「どこかで洗って来いっ」
「川は冷たいよぉ」
「温泉でも入ればよかろうっ」
「遠いよぉ」
「では地面でも掘って出せば良いっ」
「分かった!」
なんと本当にアリアンはやらかした。あの焼き切った元毒の沼地の下から温泉が湧き出したのだ。そしてあの土地を買い取ったのはなんとこのフラウ公爵の娘、ナディティアだった。
「お強き方」
「んあ?」
直湧きした温泉で体を洗っていたアリアンに声をかけたらしい。普通なら話も聞かず塵芥にされる所だが、ぎゅん! とアリアンの体が縮んだらしい。
「きゃあーーっ! ナディちゃんだー! 私の二番目の推しィ!」
「きゃあっ!」
青年の体が少年になった……リンカが気合いで表に出たらしい。
「ナディちゃん、美人! ナディちゃん可愛い!ナディちゃん、ふつくしーーっ」
「ひゃ、あ、あの、あ、ありがとう、ございます……?」
王太子の婚約者の座を追われ、今までの努力を水泡にされ傷ついているナディティアの心情を本人より強く重く受け止めていたリンカはこの地を保養地にすることを提案した。
「3年後くらいにここにエリーゼが保養地を建てるんだけど、取っちゃおっ」
「……はあ」
「源泉に生え変わったアリアンの爪でも入れとけば良い出汁取れるしさ!」
「ダシ、ですか?」
「スパリゾートだよ! スパリゾート! 私もスパで遊びたいし、絶対儲けて聖女と王太子をギャフンって言わせよっ」
「よくわかりませんが……ギャフンといわせたいですわ」
「きーまりっ」
そうして、大きな温浴設備が稼働し始め、好評なのだ。あそこはこれからどんどん儲かっていくだろう。
「庶民とはいえ大きな商家も参入してきましてな。ナディティアの嫁ぎ先の件も片付きそうですぞ」
「ほう、なんという商家で?」
「まだ若造なのですが、ナディティアにぞっこんなのですよ、確かウィルレッドとかいいましたかな?」
「レッド商会の代表ですね。彼はやり手と聞き及んでいます」
リンカ情報だ。ウィルレッドは成功間違いなしの商人だから、仲良くしておけと呟いていた。
「ウィルレッドもイケメンだよー、まっルシ様の爪の先にも及ばないけどねっ」
「ありがとう、リンカ」
「うっ!心臓が爆発しそうっ嬉苦しいっ」
新しい苦しみを開発していた。
「アリアン様にはご贔屓にして頂き」
「うちの馬鹿がお手間をかけているようで」
「いえ、黒竜の湯は大人気ですよ!」
ダシが出るとリンカはいっていたが、あれだけ力に溢れたアリアンが浸かった湯はなにやら効能があるらしく、怪我が早く治るとかいわれているようだ。それが本当なら、我が家の風呂でほぼ毎日一緒に風呂に入っている私はどうなるというのだ……。
「フラウ家はこれから宰相を支援いたします。つきましては今後の相談など」
「ええ、喜んで」
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