66 / 83
66 人間性が汚い。
しおりを挟む
「み、魅了……禁術ではないか、エリーゼ、まさか、そなたそのような悪事に手を染めているのか……?」
「そ、そんなわけないじゃない、わ、私はそんなことしてないわ」
しかし聖女エリーゼの目は不自然に動き、白くなった顔色、しどろもどろの口調からどう見ても怪しんでくれといわれているようにしか見えない。
リンカが言っていた、リンカの読んだ小説の中で聖女エリーゼは自分が魅了の魔法を使えることに気が付いてはいなかったようだ、と。しかし、ここにいるエリーゼはリンカと同じく「小説の読者」がエリーゼとしてこの世界にやって来たようだと。つまり、このエリーゼは自分に魅了の力があると知った上で人々を上手に使っていたのだ。
「そういうところも更に気に入らないです!」
声高にリンカがエリーゼを嫌う意味もよく分かる。人間性が薄汚い。
「しかし! そ、そういわれてみれば皆エリーゼのことを特別扱いして」
「それは……私が聖女だからでしょう?!」
「それにしても皆、盲目的に……」
「そんなことない! そうよね? チャールズ! チャールズ?」
エリーゼは味方が欲しくて必死なのだろう、騎士団長の名を呼ぶ。しかしそれに我々はため息をつくしかない。
「元騎士団長チャールズならば降格し先月から辺境で働いております。いくら呼ぼうとも王城に現れることはもうあるますまい」
「えっ?! そ、そんなの私、聞いてないわ! 先月ってもう10日以上過ぎてるじゃない、なんでよ」
エリーゼがチャールズの不在に気が付かないのは我々の責任ではない。
「それになんでチャールズが騎士団長を辞めてるの? チャールズはエンディング後もちゃんと騎士団長としてやっていってるはずでしょ!」
「……勤務態度が良くなかった。全騎士の手本になるべき団長が、夜中に出掛けたり、会議中に居眠りを繰り返したり、訓練中に席を外し戻って来ぬ……そんなことをしておれば騎士達からの信頼を失っても致し方ないことだ」
「えっ……」
アスガン宰相の糾弾する視線を真正面からぶつけられ、エリーゼはニ、三歩後退る。誰もが気が付いていた、チャールズ団長はエリーゼのわがままに付き合わされ、生活に破綻を切らしていたのだ。
しかし、誰もエリーゼを止めなかった。いや、止められなかった、彼女のいうことは絶対だから……無理矢理付き合わされ、勤務にも健康的にも限界が来たチャールズは王都から離れざるを得なかった。
エリーゼが来る前は、実直で責任感のある良い騎士団長であったのに。
「そういえば最近見てないと思ったら……そんなぁ~私の逆ハー要員がー!」
呟きにしては大きな声が聞こえてくる。私はリンカから聞いて知っている……結婚の約束をする訳でもなく、自分をちやほやしてくれるだけの男性を侍らせて楽しむ趣向を逆ハーレムと呼ぶのだそうだ。なるほど、その要員か……チャールズの今後を考えると王都とエリーゼから離れて正解だっただろう。そう考えるとリンカはチャールズの将来を救ったとも言えるな。流石リンカだ。
「そ、そんなわけないじゃない、わ、私はそんなことしてないわ」
しかし聖女エリーゼの目は不自然に動き、白くなった顔色、しどろもどろの口調からどう見ても怪しんでくれといわれているようにしか見えない。
リンカが言っていた、リンカの読んだ小説の中で聖女エリーゼは自分が魅了の魔法を使えることに気が付いてはいなかったようだ、と。しかし、ここにいるエリーゼはリンカと同じく「小説の読者」がエリーゼとしてこの世界にやって来たようだと。つまり、このエリーゼは自分に魅了の力があると知った上で人々を上手に使っていたのだ。
「そういうところも更に気に入らないです!」
声高にリンカがエリーゼを嫌う意味もよく分かる。人間性が薄汚い。
「しかし! そ、そういわれてみれば皆エリーゼのことを特別扱いして」
「それは……私が聖女だからでしょう?!」
「それにしても皆、盲目的に……」
「そんなことない! そうよね? チャールズ! チャールズ?」
エリーゼは味方が欲しくて必死なのだろう、騎士団長の名を呼ぶ。しかしそれに我々はため息をつくしかない。
「元騎士団長チャールズならば降格し先月から辺境で働いております。いくら呼ぼうとも王城に現れることはもうあるますまい」
「えっ?! そ、そんなの私、聞いてないわ! 先月ってもう10日以上過ぎてるじゃない、なんでよ」
エリーゼがチャールズの不在に気が付かないのは我々の責任ではない。
「それになんでチャールズが騎士団長を辞めてるの? チャールズはエンディング後もちゃんと騎士団長としてやっていってるはずでしょ!」
「……勤務態度が良くなかった。全騎士の手本になるべき団長が、夜中に出掛けたり、会議中に居眠りを繰り返したり、訓練中に席を外し戻って来ぬ……そんなことをしておれば騎士達からの信頼を失っても致し方ないことだ」
「えっ……」
アスガン宰相の糾弾する視線を真正面からぶつけられ、エリーゼはニ、三歩後退る。誰もが気が付いていた、チャールズ団長はエリーゼのわがままに付き合わされ、生活に破綻を切らしていたのだ。
しかし、誰もエリーゼを止めなかった。いや、止められなかった、彼女のいうことは絶対だから……無理矢理付き合わされ、勤務にも健康的にも限界が来たチャールズは王都から離れざるを得なかった。
エリーゼが来る前は、実直で責任感のある良い騎士団長であったのに。
「そういえば最近見てないと思ったら……そんなぁ~私の逆ハー要員がー!」
呟きにしては大きな声が聞こえてくる。私はリンカから聞いて知っている……結婚の約束をする訳でもなく、自分をちやほやしてくれるだけの男性を侍らせて楽しむ趣向を逆ハーレムと呼ぶのだそうだ。なるほど、その要員か……チャールズの今後を考えると王都とエリーゼから離れて正解だっただろう。そう考えるとリンカはチャールズの将来を救ったとも言えるな。流石リンカだ。
425
あなたにおすすめの小説
公爵子息だったけど勘違いが恥ずかしいので逃走します
市之川めい
BL
魔王を倒した英雄によって建国されたグレンロシェ王国。その後は現在までに二人、王家の血を引く者から英雄が現れている。
四大公爵家嫡男、容姿端麗、成績優秀と全てにおいて恵まれているジルベールは、いつか自分も英雄になると思い、周りには貴公子然とした態度で接しながらも裏では使用人の息子、レオンに対して傲慢に振る舞い性的な関係まで強要していた。
だが、魔王の襲来時に平民であるはずのレオンが英雄になった。
自分とレオンの出生の秘密を知ったジルベールは恥ずかしくなって逃走することにしたが、レオンが迎えに来て……。
※性描写あり。他サイトにも掲載しています。
[離婚宣告]平凡オメガは結婚式当日にアルファから離婚されたのに反撃できません
月歌(ツキウタ)
BL
結婚式の当日に平凡オメガはアルファから離婚を切り出された。お色直しの衣装係がアルファの運命の番だったから、離婚してくれって酷くない?
☆表紙絵
AIピカソとAIイラストメーカーで作成しました。
転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした
リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。
仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!
原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!
だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。
「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」
死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?
原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に!
見どころ
・転生
・主従
・推しである原作悪役に溺愛される
・前世の経験と知識を活かす
・政治的な駆け引きとバトル要素(少し)
・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程)
・黒猫もふもふ
番外編では。
・もふもふ獣人化
・切ない裏側
・少年時代
などなど
最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。
【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
* ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。
BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)
本編完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
きーちゃんと皆の動画をつくりました!
もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
Youtube @BL小説動画
プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら!
本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
巣ごもりオメガは後宮にひそむ【続編完結】
晦リリ@9/10『死に戻りの神子~』発売
BL
後宮で幼馴染でもあるラナ姫の護衛をしているミシュアルは、つがいがいないのに、すでに契約がすんでいる体であるという判定を受けたオメガ。
発情期はあるものの、つがいが誰なのか、いつつがいの契約がなされたのかは本人もわからない。
そんななか、気になる匂いの落とし物を後宮で拾うようになる。
第9回BL小説大賞にて奨励賞受賞→書籍化しました。ありがとうございます。
【完結】伯爵家当主になりますので、お飾りの婚約者の僕は早く捨てて下さいね?
MEIKO
BL
【完結】伯爵家次男のマリンは、公爵家嫡男のミシェルの婚約者として一緒に過ごしているが実際はお飾りの存在だ。そんなマリンは池に落ちたショックで前世は日本人の男子で今この世界が小説の中なんだと気付いた。マズい!このままだとミシェルから婚約破棄されて路頭に迷う未来しか見えない!
僕はそこから前世の特技を活かしてお金を貯め、ミシェルに愛する人が現れるその日に備えだす。2年後、万全の備えと新たな朗報を得た僕は、もう婚約破棄してもらっていいんですけど?ってミシェルに告げる。なのに対象外のはずの僕に未練たらたらなのどうして?
※R対象話には『*』マーク付けます。
すべてを奪われた英雄は、
さいはて旅行社
BL
アスア王国の英雄ザット・ノーレンは仲間たちにすべてを奪われた。
隣国の神聖国グルシアの魔物大量発生でダンジョンに潜りラスボスの魔物も討伐できたが、そこで仲間に裏切られ黒い短剣で刺されてしまう。
それでも生き延びてダンジョンから生還したザット・ノーレンは神聖国グルシアで、王子と呼ばれる少年とその世話役のヴィンセントに出会う。
すべてを奪われた英雄が、自分や仲間だった者、これから出会う人々に向き合っていく物語。
燃え尽きた貴族が10年後療養してたら元婚約者に娶られてしまいまして
おげんや豆腐
BL
月の獅子に愛されし国アスランにおいて、建国から仕える公爵家には必ず二人の男子が生まれた。
兄弟はそれぞれ違った成長をする。
兄には替えの効かない無二の力を、弟は治癒とそれに通ずる才覚に恵まれると伝えられている
そしてアスランにおいて王族が二度と癒えぬ病魔に侵された際には、公爵家の長男はその力を行使し必ず王族を護ることを、初代国王と契約を結んだ。
治療魔術の名門に生まれ、学園卒業間近の平凡な長男ニッキー
優秀な弟であるリアンからは来損ないと蔑まれて、時にぞんざいな扱いをされながらもそんな弟が可愛いなと思いながらのんびり過ごし、騎士になった逞しい婚約者とたまに会いながらマイペースに学園生活をおくっていたのだが、突如至急帰って来てほしいと父からの手紙が届いた事により緩やかな生活は終わりを迎える
終わりへと向かい、終わりからはじまる、主人公が幸せへとのんびりと一歩一歩進むお話
ハッピーエンドです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる