【短編完結】妹は私から全てを奪ってゆくのです

鏑木 うりこ

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1 私のものを何でも欲しがる妹

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「お姉様、ねえ私に頂戴?」

 まただわ。私は読んでいた詩集から渋々と顔を上げます。そこには私の一つ下の妹・ロクサーヌがまるでお人形のような可愛らしくにっこり笑って立っていました。
 金色の真っ直ぐ伸びたサラサラの髪に、水色の瞳。真っ白い肌に薄く色づいた頬と、唇。完璧な美少女のロクサーヌはその唇を動かしてとんでもない事を言いました。

「お姉様の婚約者、デイビッド様を私にちょうだい? 良いでしょう?」

 私の物をなんでも欲しがる妹ですが、まさか婚約者まで欲しいというなんて。なんて非常識な妹なのでしょうか?

「ロクサーヌ、何を言っているのですか?デイビット様は物でないのですよ、貴方が簡単に持っていける私の私物とは違うのです。それにデイビット様との婚約は家と家の結びつきを考えて……」

 このミシディア公爵家と第二王子デイビット様との婚約は、デイビット様が王位を放棄し、家柄のバランスを取る為にも必要な婚約であり、結婚です。それは私とデイビッド様が生まれた時から交わされていた約束であり、自分達の一存で決められるものではないのです。

 それなのに妹のロクサーヌはその大きな目にいっぱい涙を浮かべてこう言うのです。

「お姉様のいじわる! どうしてそんな酷い事言うの?! 酷いっ!」

 わっと両手で顔を覆って走り去ります。私はため息をつくしかありません。

 そしてしばらくすると、お父様とお母様がやってくるのです。

「レティシア、お前という奴は! お前は姉なんだから、妹に譲らねばならないのだ!」

「そうよ、あなたが爵位を継ぐのだから他はロクサーヌに譲って上げなさい!」

 私はまた両親に責められます。いつもの事ですが、私もいつも言われるままではいられません。

「しかし、お父様お母様!デイビット様は……」
「黙れ!」
「きゃっ!」

 ぱしん!私はお父様に頬を叩かれて、倒れてしまいます。

「お前は私たちの言う事を聞いていれば良いのだ!」
「……はい」

 お父様とお母様がお帰りになった後、私は涙が溢れます。叩かれて痛かったのもありますが、なぜ私が叩かれなくてはならないのでしょうか。
 私は何か間違った事をしたのでしょうか?

「お嬢様……タオルでお顔を冷やしましょう?」

 私の味方のメイドのルルが冷たいタオルを差し出してくれます。

「ありがとう、ルル。ルルだけね、この家で私を気にかけてくれるのは」

 ルルは小さく笑顔を作ってくれます。

「メイドはみんなレティシアお嬢様の味方ですよ」

 そうでした。メイド達はみんな私を気遣ってくれます。そのおかげで、この針の筵のような家でもなんとか暮らして来れたのでした。
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